2月号
芦屋の住環境に調和する美しい暮らし 平尾工務店「芦屋プロジェクト」完成!
近代建築の三大巨匠の1人、フランク・ロイド・ライトの名作、ヨドコウ迎賓館(旧山邑邸)の近くに、彼の思想を受け継いだ住まい、オーガニックハウスを手がける平尾工務店が新たに分譲用モデルハウスと賃貸マンションを建築し、このたびオープンした。そのこだわりと思いを社長の平尾博之さんと、プランニングを担当した平尾真智子さんに伺った。
100年前のライトの住宅思想を進化させる
─芦屋にモデルハウスと賃貸マンションが完成しましたね。
平尾 この土地はもともと芦屋山手倶楽部というフレンチレストランがあったところで、景色を眺めながら美味しい料理をいただけて、芦屋の人たちにとって印象深いところなんです。ですから「良いところに良いものができたね」と芦屋の人たちに評価されるように、芦屋に相応しいような建築をつくりたいという思いで建てました。
─ヨドコウ迎賓館の近くで、フランク・ロイド・ライトに縁のある街道沿いです。
平尾 ライトの系譜の住宅を手がけている我々からしたら最高の場所ですよ。芦屋にはもっと立派な邸宅がたくさんありますが、我々がコンセプトとしているライトの住まいを打ち出せればいいなと思います。ライトによる100年前の住宅の思想を進化させて、モデルハウスもマンションもこれまでとはちょっと違い、外観はクラシカルですが内部はこれからの時代に即した使い方を考えた住まいになったと思います。このプロジェクトにより、地元の人たちをはじめ新しい人の出会いがあれば嬉しいですね。
─設計は真智子さんが手がけたそうですね。
真智子 他のスタッフと一緒に担当しました。モデルハウスはライト初期のプレイリースタイルの代表作でもある「メイハウス」をオマージュしています。「メイハウス」は施主が宝石商だったことと華麗なデザインで「宝石箱」とも言われていて、装飾が豊かでステンドグラスも多用しています。モデルハウスも1か所に複数の装飾を組み合わせたり、天井にステンドグラスをあしらったりと手が込んでいるんです。建物は大きくないですけれど、コンパクトさの中に美の要素をギュッと詰め込んでいます。
─リビングの大きな窓も印象的ですね。
真智子 街を望み海を眺めることもできますが、西側の山も芦屋にお住まいの方々に親しまれているとのことなので、万緑や紅葉など四季移ろう山の景色を愉しめるように大きな窓を設けました。
平尾 リビングまわりは木をふんだんに使っていますが、私はこの雰囲気が好きなんですよ。木の自然な温もりが、窓の外の自然と繋がっているような感じで、ある意味ライトが提唱した「内と外の空間の連続」ではないかと思います。
自動運転のように、住まいも変化する
─地下室がありますね。
真智子 地形を利用した地下1階地上2階の構成です。阪神間は斜面地が多いですから、ただ単に基礎で水平な地盤にするのではなく、むしろ傾斜を有効に生かすのもプランのひとつだと思いますね。
平尾 自動車は自動運転やネット接続により、本来の移動手段から進化してオフィス空間など全く違う使い方になっていきますよね。住まいも食事して寝て家族団らんするだけでなく、社会と繋がりビジネスなどの場になる世の中が近い将来にやって来ると思うんです。そうなれば家の中での過ごし方も全く異なってきますし、求められる機能も変化してきますので、日常の空間と切り離されて多目的に使える地下室が有効になるでしょう。遮音性が高いのでシアタールームやゴルフの練習など趣味だけでなく、デスクを構えて仕事をしたり、会社と繋いでテレビ会議したりするのにも便利です。地下室を新しいスタイルとして提案していきたいですね。
─ほかにどんな魅力が。
真智子 オーガニックハウスは大きな住宅というイメージかもしれませんが、モデルハウスは地下を除くと40坪少しとコンパクトなんです。それでも十分にオーガニックハウスの良さを表現できますので、そこで差別化を図っていきたいですね。
平尾 建具が少なく間仕切りがないのも特徴です。ライトの家は暖炉を中心に家族が集いやすく開放的なんですが、このモデルも地下室を別としてその思想を受け継いでいます。プライベートとパブリックの程良い距離感を感じていただけるのではないかと思います。
近隣の景観に溶け込むようにデザイン
─マンションはどんなところにこだわりましたか。
真智子 注文住宅はお住まいになる方がわかっているのですが、賃貸マンションはどなたが入居してもご不便なく使いやすいようにしないといけません。また、立地的に外国人の方もお住まいになることが考えられます。ですからスケール感にこだわり、間取りや通路幅なども少し大きめの寸法で、一回りゆったりとっています。
平尾 何十年か先に自分自身が住むイメージを持ってプランニングすることで、入居していただく方に馴染んでもらえるのではないかと考えました。将来のリフォームのことも考え、改装しやすいようになっています。
─賃貸ならではの特色はありますか。
平尾 芦屋という地に相応しい方に入居していただけるようゴージャスに仕立てつつ、身軽にご利用いただけるようなしつらえにしてあり、インテリアや家電製品、生活雑貨など暮らしに必要なものもすべて揃えて、身体一つで明日からでもお住みいただけるようになっています。もちろんトータルでデザインするだけでなく、省エネや身体へのやさしさ、IoT対応も考慮しています。
─マンションを分譲ではなく賃貸にしたのはなぜですか。
平尾 会社の方針です。自社で取得した土地は自分たちのビジネスに活用し、転売してはならないと先代からの決まり事なんですよ。実は芦屋のこの土地も取得したものの、モデルハウスだけでは広すぎるので賃貸マンションを建てたんです。分譲は一切考えませんでした。
─景観への配慮も感じますね。
平尾 芦屋市はより良い住環境を目指していますので、市としてのご希望も多く伺い少しでもその思いに応えられるように心を砕きました。ヨドコウ迎賓館の目と鼻の先ですし、ライトの雰囲気と存在感を醸しつつ、近隣の景観に違和感なく溶け込むようなデザインに仕上がったと思います。我々が提供する住まいは周りの環境に即していないといけないし、どれだけ立派な建物でも周辺環境と調和していなければだめです。ぜひ見て感じていただければと思います。