2012年
9月号
「超熟」シリーズは、小麦本来の味ともっちり感が楽しめる大ヒット商品

もっと知りたい西神インダストリアルパーク 第5回

カテゴリ:スイーツ・パン

食卓を変える「超熟」の味わい

「Pasco」ブランドでおなじみの敷島製パンは、国内大手で最も古い歴史を誇るパンメーカー。西神インダストリアルパークには大ヒット商品「超熟」シリーズなどを手がける神戸工場、主に業務用の冷凍生地を生産する神戸冷食プラントの2つの工場を擁している。それぞれの工場長にお話を伺った。

─敷島製パンは神戸のフロインドリーブとつながりがあるそうですね。
鈴木 大正時代、名古屋に第一次世界大戦のドイツ人捕虜の収容所がありました。創業者の盛田善平がその収容所で焼いていたパンに興味を持ち、ドイツ人の捕虜からパン作りを教わったのが敷島製パンのはじまりですが、それが後にフロインドリーブを創業する者、ハインリッヒ・フロインドリーブ氏でした。
─西神インダストリアルパークに工場をつくった経緯を教えてください。
園部 この敷地にはまず、1988年に神戸冷食プラントを設けました。それまで冷食プラントは愛知の刈谷と東京の多摩にありましたが、冷凍なので一か所で効率よく生産ができますので、神戸に集約しました。ここから全国へ商品をお届けしています。
鈴木 神戸工場ができたのは2001年です。当時、近畿地区以西には豊中市と大和郡山市の2か所しか工場がありませんでした。そこで、中国地区での営業力をより強化するために、神戸市に工場を設けることになりました。神戸工場は最も西にある工場で、近畿から中国地方へ供給しています。
─神戸工場と冷食プラント、それぞれどのような商品を作っていますか。
鈴木 神戸工場ではお客様がふだんスーパーやコンビニエンスストアなどで手にされる食パン、菓子パンなどを生産しています。
園部 神戸冷食プラントでは主に業務用の冷凍パン生地を生産しています。冷凍パン生地とは、発酵させる前の段階まで製造してマイナス28度で冷凍させたもので、街のベーカリーやホテル、レストランなどが主なお取引先様です。みなさんがよく行かれるファミリー向けベーカリーレストランや、サンドイッチのチェーン店でもここで作られた生地が使われています。納品後はそれぞれのお店で売れ行きを見ながら必要な分だけ焼くことができます。冷凍生地は一般用に「おうちパン工房」という通信販売もおこなっています。ご家庭のオーブンで簡単に作れますので、ぜひお試しください。
─生産しているアイテム数はどれくらいですか。
鈴木 神戸工場は50アイテムくらいです。当社には10工場ありますが、この工場はライン数が少ないので他工場と比べるとアイテム数も少ないですね。ここには食パン、ロールパン、イングリッシュマフィン、フレンチトーストのラインがあり、人気商品の「超熟」シリーズや、「スナックパン」シリーズ、「おいしいシューロール」などを作っています。ロングセラーの「ファボールサンド」は神戸工場だけでしか生産していません。
園部 神戸冷食プラントでは約300アイテム生産しています。生地を丸めてそのまま冷凍するだけでなく、整形してから冷凍している商品など、あらゆる種類のパン・菓子を生産しています。人気商品はミニクロワッサン、食パン生地「小麦の匠」、アップルパイなどです。
─2003年、「Pasco」「シキシマ」の2つのブランドを「Pasco」に統合しましたが、その経緯を教えてください。
鈴木 それまでは、中部や関西は「シキシマ」、関東は「Pasco」と使い分けていました。関東は進出した1969年から「Pasco」ブランドでしたが、これは高級イメージで売り出そうというのと、「シキシマ」という言葉が発音しにくいという理由です。
園部 「Pasco」は「Pan Shikishima Company」の頭文字をとったもので、「Pan」には「汎(ひろく)」という意味も込められています。より効率的な営業活動をするためにブランドを統一しました。
─「超熟」は看板商品ですね。
鈴木 「超熟」を開発したのは15年くらい前ですが、当時は食パンの売上げが落ち込んでいた頃で、これは何とかしなければと、食べ飽きない味を目指して開発しました。そこで採用したのがお湯で小麦粉をα化する湯種方式です。お湯で生地本来の甘みを引き出す製法は昔からありましたが、湯種製法をやっていた街のパン屋さんがありましたので、そのリサーチから開発ははじまりました。当時、湯種製法は手作りでは可能でしたが工場での大量生産は不可能と言われていました。それを「超熟」は可能にしたのです。「超熟」はごはんと一緒で、毎日食べても飽きません。ごはんはお湯でお米がα化されたものです。ですから生地をお湯で仕込むと、ごはんと同じようにもっちり感がでて、食べ飽きない味になるのですよ。
鈴木 配合などを試行錯誤して、1年くらいかけて商品化しました。最初は関西で限定発売し、毎月倍々で売れていきました。現在、「超熟」は売上げの3分の1くらいを占めています。その後も進化して、今は乳化剤やイーストフードを省いた安全・安心な商品をお届けしています。
園部 冷食の食パン生地「小麦の匠」も「超熟」と同じ湯種製法で作っています。
─敷島製パンはナショナルブランドですが、お客様の好みは西と東で違いはありますか。
鈴木 食パンを例に挙げますと、関東では薄めの6枚や8枚スライスがよく売れますけれど、関西では5枚スライスがよく売れます。4枚スライスも関西ではよく見かけますが、関東ではほとんど見かけません。
─鈴木工場長は発酵時間の違うパン生地を同時に発酵させるシステムを開発したそうですね。
鈴木 倉庫業で使っている棚ラック方式を発酵室に応用しました。特許も取得しています。
─最後に、今後の展望を。
園部 私たちのお客様は、もっと利便性を求めていると思うのです。今は整形冷凍しかしていませんが、将来的に設備を導入し、発酵させて8割くらいまで焼き上げ、あとはお客様のところで少し温めるだけの焼成冷凍の商品を供給したいですね。
鈴木 「超熟」や「ファボールサンド」を進化させて、より息の長い商品にしていきたいですね。そして「超熟」と並ぶ新しい商品を開発したいですね。

「超熟」シリーズは、小麦本来の味ともっちり感が楽しめる大ヒット商品


神戸工場・神戸冷食プラントをはじめ、敷島製パン全工場および関連会社4社でISO22000(食品安全マネジメントシステム)認証を取得。写真は神戸工場


(左)初代社長・盛田善平、(中央)ハインリッヒ・フロインドリーブ

パンは生き物。温度と時間の管理が何よりも重要。1分1秒の違いで、品質がまったく変わってくる。(「超熟」の製造ライン)


人気の「おいしいシューロール」シリーズ


ソフトフランスパンを使った「ファボールサンド」


冷食プラントで作られたクロワッサンにはセサミやトマトバジルなど様々な種類がある


神戸工場長 鈴木寿雄(すずき ひさお)さん

1955年生まれ。1978年、敷島製パン株式会社入社、配属先は刈谷工場設備係。入社後、設備・施設関係の要職を歴任。2005年9月生産技術部長、2010年9月神戸工場長就任、現在に至る。

神戸冷食プラント工場長 園部正行(そのべ まさゆき)さん

1958年生まれ。1976年、敷島製パン株式会社入社、配属先は刈谷工場菓子パン係。入社後、社内製パン学校を卒業、食パン、菓子パンの製造課長を歴任。2011年9月神戸冷食プラント工場長就任、現在に至る。

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