4月号
縁の下の力持ち 第10回 神戸大学医学部附属病院 腎・血液浄化センター
神戸大学医学部附属病院
腎・血液浄化センター センター長
西 愼一さん
まず健診。そして早めの生活習慣見直しを!
今月は、腎臓病の患者さんの命を支える縁の下の力持ち。
慢性腎臓病予防の啓蒙にも力を入れています。
―腎・血液浄化センターで行っている治療は。
慢性・急性腎臓病で血液を浄化する透析治療が主です。特殊なケースでは、薬剤や毒素を体の中から抜く治療や、神戸大学で行っている肝臓や腎臓の移植手術に伴って、血液型が違うケースで抗体を除去して適合させる治療もあります。
―血液透析治療とは。
体の中の尿毒素を抜いてきれいにする、尿が出なくなった患者さんの体の中にたまった余分な水分を抜くという二つの目的があります。週3回、1回4時間、を一生涯受けていただく維持透析療法が標準的です。
―大学病院では入院患者さんのみが対象ということですね。
透析治療を開始する患者さんやあらゆる診療科に入院して治療しておられる患者さん、また多臓器疾患や手術、抗がん剤などの影響で急性腎臓障害を起こした患者さんが対象です。
―根気のいる治療法ですから開始時の指導が大切ですね。
透析を始めると患者さんのライフスタイルは大きく変わります。まず透析について勉強していただき、どうしても腰が引ける患者さんもおられますから、どんな方法が最良かをご本人とご家族も含めて相談しながら方針を決めていきます。透析で体の状態も大きく変わってきますから、血圧や体重のコントロール、飲むお薬や食事の指導なども必要です。
―西先生の役割は。
腎臓病の患者さんはいろいろな合併症を持っておられます。糖尿病や心臓疾患、骨がもろくなって骨折する等々。ですからあらゆる診療科の先生方との密接な連携が必要で、そのパイプ役です。また移植手術、特に透析治療の患者さんがご家族間などでの腎移植の道を選ばれる場合には、手術に関わる先生方との連携も重要な役割です。
―慢性腎臓病は予防できるのですか。
腎臓は休むことなく24時間働き続けている臓器ですから、年齢とともに衰えていくことは避けられません。ところが機能が衰え始めるころは、ほとんどご自身で異変を感じることがないのが腎臓です。機能がかなり低下してから症状が出ますから気づいたときには進行しています。多くの場合、高度に低下した機能を回復させるお薬はありませんので、透析治療を選択せざるをえません。
―では、どうすれば!?
健診をきちんと受けてください。腎機能が60%以下になると慢性腎臓病が潜んでいると診断されます。10%以下になってしまうと透析治療を考えなくてはいけません。そこに至る前に治療を始めれば、現状維持、または進行を抑えることができます。ごく初期の段階なら機能回復が可能なケースもあります。
―腎臓の機能はどんな検査で分かるのでしょうか。
血液検査で分かります。クレアチニンの数値から腎機能が何パーセントかを算出するGFRという数値があります。尿検査で蛋白が出ているかどうかも慢性腎臓病の目安になります。
―加齢によるものは避けられないとして、どう注意すればいいのでしょうか。
高血圧や糖尿病など全ての生活習慣病が腎機能低下の引き金になるといわれています。生活習慣や食事を改善し、お薬を調節すると腎機能低下の速度を緩めることができます。
―健診と早めの治療ですね。
その一言に尽きます。しかし透析治療が必要だからといって悲観的にならないでください。夜間に受けたり、家庭で受けたり、高齢者施設に透析センターが併設されていたり、いろいろな選択肢があります。日本では今、ほぼ400人に1人の割合で透析を受け、患者さんの会もあり支え合いながら続けておられます。
―もちろん先生ご自身の腎機能は完璧ですね。
実は血圧が高いので…(笑)、塩分を取り過ぎないよう気を付けたり、ジョギングをしたりしています。高齢になったらもちろん、ぜひ若い方も生活習慣を見直してください。
家族と考える慢性腎臓病サイト~腎援隊
https://jinentai.com/ckd/tips/5_1