2月号
縁の下の力持ち 第8回 神戸大学医学部附属病院 手術部
神戸大学医学部附属病院手術部
小幡 典彦さん
多種多様な手術を円滑に進めるためのマネジメント
大学病院で毎日行われている多種多様な手術が円滑に進むように医師やスタッフ、手術室、機材まで全てを調整しているのが手術部。
元気になった患者さんを陰からそっと見守る縁の下の力持ちです。
―小幡先生は麻酔科医ということですが、広い領域のなかでのご専門は。
麻酔科の領域には手術の麻酔はもちろん、集中治療室での重症患者さんの管理、複雑な痛みを専門に治療するペインクリニック、糖尿病や心臓疾患など合併症を多く持つ患者さんが手術を受けるまでの準備を進める術前外来もあります。私は痛みの基礎研究やペインクリニックに従事した時期もありましたが、神戸大学に来てからは手術部に所属して手術室で仕事をすることが多くなりました。
―手術部には、どういった先生方やスタッフが所属しておられるのですか。
麻酔科医のほかに、基本的には手術に関わる診療科の先生方で、現在は歯科口腔外科医、泌尿器科医などです。看護部からのスタッフも配属されています。手術に使う器械の準備や調整をする臨床工学技士、放射線機材を扱う放射線技師がコアメンバーとして加わり、手術部を担当する薬剤師もいます。
―神戸大学附属病院ではどういった手術がどれくらい行われているのですか。
17の手術室があり、年間約9000件の手術が行われています。それでも手術の多い診療科では患者さんが長い間手術を待っておられるケースもあります。緊急手術が毎月100件ほどあり、心臓手術や移植手術など高度な医療も数多く行われ、12時間を超える手術もほぼ毎日です。最近では小さな傷で体への負担を最小限にする低侵襲手術が進んでいますし、ロボットを使う手術もほぼ毎日あります。外科系だけではなく、循環器内科や消化器内科の先生方が手術室でカテーテル治療や内視鏡治療を行うこともあります。
―手術部の役割は。
患者さんと手術をする先生がいるだけでは手術は成り立ちません。内容に適した手術室が必要ですし、術式を理解している看護師や麻酔科医も必要です。必要な器械を滅菌した状態で不備なく揃えなくてはいけません。薬剤や医療機器の準備もあります。多職種が関わる多種多様な手術を効率よく円滑にマネジメントするのが手術部の役割です。
―具体的にはどんなふうに調整するのですか。
週1回、手術部スタッフが集まり翌週のスケジュールを調整し、事前に関係各部署と連絡を取りながら準備を進めます。中止になったり、緊急手術が入ったり、予定通りに進まない場合には再度調整が必要です。手術室を使う診療科は現在、30近くあり各診療科に1名ずつ手術部とのやり取りをする連絡員がいますので、毎月1回、連絡員を交えて手術部連絡会議を開き情報の共有に努めています。
―普段から心掛けておられることは。
手術という治療法を選択した患者さんに安全に手術を受けていただき、回復してもらうことを何より第一に考えています。そのために、休日や昼夜を問わず手術をされている各診療科の先生方やスタッフにすごくよく頑張ってもらっていますので、疲弊することなく高いパフォーマンスを維持できる環境づくりも大切にしています。時にはスタッフに無理をお願いすることもありますが、患者さん第一という部分だけはブレないようにと心掛けています。たとえ嫌われても(笑)。
―マネジメントをしながら、先生ご自身も長時間の手術や緊急手術に関わるのですから、激務ですね。
病気は時間を選んでくれないものというのは分かっていることですから、特別な激務だとか、しんどいとか思うことはないですね。
―やりがいを感じるときは。
麻酔科医の仕事は縁の下だと思います。特に手術室では、患者さんはほとんど眠っておられるわけですから(笑)。患者さんから直接感謝されることを目指して仕事をしているわけではなく、陰からそっと「よくなってるんだな」と見守るときが一番嬉しいときです。