12月号
輝く女性Ⅱ Vol.7 フェリシモ チョコレートバイヤー みり さん
インタビュアー・三好 万記子
人気料理サロン「ターブルドール」代表の三好万記子さんがホスト役となって、輝いている阪神間在住の女性にお話を伺うシリーズ。
おもてなし上手な三好さんとの対談から、どんなオイシイお話が飛び出すことでしょう。
今回、お話を伺ったのは…
フェリシモ チョコレートバイヤー みり さん
味や形、いろいろな表現があっていい。
多様性を受け入れることがチョコの世界を成長させていくと思います。
NHKドキュメンタリー番組への出演や雑誌取材、講演会とひっぱりだこ。チョコレートといえば、この人と言われるほど、超有名人となったフェリシモのチョコレートバイヤーみりさん。通販会社フェリシモでチョコ企画を担当して22年目。これまで484ブランド約2,400種類のチョコを輸入販売した実績を持ち、日本に初上陸させたチョコは244ブランド以上とか。
…みりさんとは、フェリシモのおうちレッスン『ミニツク』のプログラム「おうちでおまつり気分 世界のごはんプログラム」が初仕事。その後、「もーっとチョコレートライフ!一年中チョコを楽しむプログラム」と続き、約2年間、2ヶ月に1回はお目にかかっていましたね。
超レアな世界の家庭料理やチョコデザートを自宅で再現するレッスンプログラムで、三好先生には毎月のテーマとなる国のイメージに合わせて「ブータンのバター茶」「アルメニアのラマジュン」「ハイジのチョコレート」など、日本の食材で簡単に作れるレシピを監修いただきました。チョコの買い付けで色々な国に出向いていた私は出る幕なし(笑)、素晴らしく完成度の高い楽しいお仕事でした。
…チョコのプログラムは、冬のイメージがあるチョコを夏場も含め一年間どっぷり楽しもうという、チョコ愛が半端ない、みりさんらしい企画ですね。
世の中に色々な食べ物があるなか、チョコほど老若男女みんなが好きで、楽しめるものってないと思います。今、世界中でチョコブームが沸き起こっています。ここ数年はカカオが主役のビーントゥバーがトレンド。スーパーフードのローチョコや乳酸菌入りオーガニックチョコも話題を集めています。そんななか、私が次に来ると注目するのはミルクチョコ。世界的にビター人気ですが、良質なナッツミルクを加えたチョコは本当に美味しいんですよ。
…カカオだけだと、口当たりがボソボソして万人ウケは難しいんですよ。
チョコは美味しく♪幸せになれるものでないと!今は世界のトレンドが入手できる情報社会となりましたが、私が1999年にフェリシモでチョコの仕事を始めた頃は本もなく、インターネットの環境もまだ整っておらず大変でした。お手本もない世界で、“チョコを先生”に突き進んできました。今では食べるだけで生産国がわかる“利きチョコ”も得意技となりました。
…“利きチョコ(笑)”ってすごいですね。多くのチョコと接するなか、フェリシモで紹介するチョコの基準は?
情報過多な現代ではファストファッションのように同じようなチョコがあふれています。そのため世界で一番ニッチなチョコを求め、世界のローカルへ足を運ぶようになりました。通販ゆえ日本では手に入らない、日本未上陸は絶対条件。味はもちろん、チョコをつくることが好きなショコラティエの商品を基準に選びます。掲載は“チョコで語る”見せ方を徹底します。おチョコ様(笑)の世界観をつくりあげ、つくる人、紹介する私たち、購入いただくお客様、誰一人傷つかない、皆がハッピーになるのが私のカタログづくりのモットーです。
…カタログを見れば、作り手の想いを、バイヤーのみりさんがきちんと理解していることがわかるということですね。買う私達もしっかり読み込み、世界観を理解して味わうと美味しさが倍増しそうです。
…2019年のバレンタインシーズンに向けたチョコカタログ、フェリシモの「幸福(しあわせ)のチョコレート2019」では最高にレアな海外チョコ約150点を紹介。「チョコの冒険者たちへ」というテーマで、冒険的なトライ、手つかずの地域からの初上陸が30ヶ所以上もあるとか。印象に残った発掘エピソードはありますか。
おいしいチョコを探し求めて23カ国目、初上陸のオーストラリア・タスマニア島で出会ったコールリバーファームの「ベリーココナツチョコ」は衝撃的でした。場所柄、イチゴ畑に囲まれた牧場系チョコを想像していたのですが、洗練された最先端の工房でびっくり。作っているのはベルギー人のパティシエで、数年に一度ぐらいしか会えない天才ですね。ラズベリーピューレを吸わせてキャラメライズしたココナツと自家栽培のラズベリーを混ぜ、タスマニアのミルクを使ったホワイトチョコレートのタブレットに、ローストココナツとフリーズドライのラズベリーをトッピング。まろやかなホワイトチョコと香ばしいココナツが溶けあって、ラズベリーの酸味が追いかけてくる、衝撃のおいしさです。あとオーストラリアではマヌーコの「ローズローチョコ&セサミローチョコ」もおすすめ。ヴィーガン&ローという希少なチョコで、お豆腐のように滑らかでやさしい、チョコの新ジャンル的な味わいです。
…お話を伺っているだけでどちらも食べたくなっちゃいますね。世界各国を駆け巡っておられるみりさんですが、合間をぬって臨床美術のワークショップを開いておられます。私も参加させていただきましたが、自分の新たな側面を発見できる素晴らしい時間でした。
実はチョコの仕事を始めた最初の頃は、海外との取引は意思の疎通も難しく、輸送中に溶けたり壊れたりのトラブル続きだったんですね。「辞めてしまいたい!」と何度も思っていた時、奇跡的に「臨床美術」と出会い、興味をもって資格を取りました。認知症の症状の改善を目的に医療現場で導入された「臨床美術」は絵を描くことで脳を活性化させるのですが、自分や他者を肯定、みんな違ってみんないいという考え方がベースとなっています。嘘をつかず、否定をしない、人それぞれ違っていいという考えを学び、自分のなかの悩みがスポーンと抜けきりました。お客様の声や買い付けをするショコラティエの方との関わり方に対する考え方が変わると、周りのベクトルも変わり、仕事もどんどん楽しくなっていったんです。カカオと砂糖、ミルクというシンプルな素材で構成されるチョコも、作り手個々の表現なんですね。味や形の好みは人それぞれですが、どんな表現のチョコがあってもいいんです。多様性を受け入れることがチョコの世界を成長させていくと感じて、今は大好きな仕事と向き合っています。
…チョコレートと臨床美術、一見まったく接点のない世界に思えましたが、みりさんのなかではつながっているんですね。人もチョコもそれぞれの個性を認め、素晴らしいことを発見して、伝え、それで幸せをもたらす。「幸せを見つけだす天才」のみりさんの周りにはいつもチョコのような甘いハッピーがあふれているように思います。
三好さんからの質問コーナー
Q.ハマっているグルメや気になるお店はありますか。
A.手前みそになりますが、私の企画した「チョコレートバイヤーみりオリジナルチョコ」です。
チョコ旅の旅先で出会った世界各国のオイシイものをチョコで再現しました。魚介味満載のクラムチャウダー味のチョコとか、パッケージも凝っています!
みり
フェリシモのフードバイヤー。チョコレート企画を担当して2018年で22年目。毎年世界各国のショコラティエをめぐり、美味でストーリーのあるチョコレートを見出す。2012年12月にはバイヤーとしての経験を生かし、チョコレートの基礎知識や国別チョコレートの特徴、バイヤーの仕事模様などをまとめた初の著書『世界の果てまでチョコレート』(フェリシモ出版)を出版。各地でチョコセミナーを開催、メディア出演多数。2017年8月NHKドキュメンタリー番組『海外出張オトモシマス!』、2018年7月NHKドキュメンタリー番組『世界はほしいモノにあふれてる』に出演。
三好 万記子(みよし まきこ)
株式会社ターブルドール 代表取締役
神戸女学院大学卒。パリに3年間滞在中、フランス料理を学ぶ。ル・コルドン・ブルーにて料理ディプロマ、リッツ・エスコフィエにてお菓子ディプロマを修得。帰国後、西宮市・夙川にて料理サロン「Table d’or」主宰。また出張料理人としてケータリングも展開、料理はもちろんディスプレイを含むトータルコーディネートに定評あり。企業へのメニュー開発、レシピ提供など、「食」を幅広くプロデュース。二児の母。