2018年
12月号

縁の下の力持ち 第6回 神戸大学医学部附属病院 救急部

カテゴリ:医療関係, 神戸

神戸大学大学院医学研究科
外科系講座 災害・救急医学分野教授
小谷 穣治さん

救急医と全診療科が協力して救急医療を支えています

普段あまりお世話になりたくないと思われてしまう救急部。でも、一人でも多くの患者さんを治療し、命を救おうと、私たちの目には触れない〝縁の下〟で奮闘しています。

―神戸大学病院救急部ではどういった患者さんを受け入れているのですか。
救急搬送及び外来で救急部を受診する患者さん、基本的に軽症の一次救急から、二次救急、重篤な三次救急まで全て受け入れています。ただし、大学病院は重症患者さんを優先しなくてはいけません。救急隊員が軽症と判断した場合や、救急電話窓口では、軽症患者さんには他の医療機関をご紹介することもあります。

―患者さん全てを救急医の先生方が診られるわけですか。
全ての救急患者の搬送依頼は救急部に連絡が入ります。事前に疾患名がはっきりしている場合は専門医が受けますし、複合疾患で集約治療が必要なケースでは各科の先生方にも関わってもらいながら救急医が対応します。また、普段から通院されている患者さんは当該診療科が受け入れます。

―手術もされるのですか。
専門領域が明確な症例は各専門の外科医が手術を行います。一方、外傷や複合疾患を持つ重篤な症例などは、外科の専門医(資格)も持つ救急医や救急部に出向している外科系専門医で行います。
現在、私も含め3名は外科と救急のダブルライセンスを持っており、整形外科、形成外科、泌尿器科、歯科口腔外科などの外科系医師もいます。
ちなみに私は、救急・外科・消化器外科・消化器病・集中治療・外傷・栄養の7つのライセンスをもっています。術後は集中治療部が充実していますので協力をいただいています。

―なぜ医学を志し、救急医療を専門にされたのですか。
私は関西学院高等部でしたが少々遊びすぎたのか大学への推薦権をもらえず元々生物学に興味があったこと、知識と技術を身につける仕事というところが、ギターが大好きな自分には向いていると思い、先生たちには無理だと言われましたが、一念発起して医学部を目指しました。医学部卒業後は地元に戻り、神戸大学で消化器外科を専門とし、多くの手術を手掛けました。5年目、帝京大学の救急救命センターに行くことになりました。そこでは、手術が成功しても臓器障害で容態が急変して亡くなる患者さんがいるんですね。今でいう集中治療にも関わり興味を持ちました。そこで神戸に戻りそのメカニズムを研究したのですが、外科の研究に限界を感じ分子生物学の研究を始め、さらに極めるためアメリカへ渡りました。

―帰国後、神戸大学に?
いいえ、神戸大学外科の人事で神戸労災病院の外科医長を経て兵庫医大救命救急センターに15年間務めました。元々の外科15年、その後の救急15年の経験を買われたのでしょうか、今度は神戸大学医学部附属病院の救急医療体制の充実と兵庫県の医療行政もお手伝いさせていただくという使命を頂くことになってしまい(笑)、昨年9月に戻って来ました。

―1年間で改革したことは。
最近の数年、救急部は救急医のみで対応するという体制を取っていましたが、各外科専門領域の先生にもチームの一員として加わっていただき、同時に内科各専門領域の先生方も加わってチームとして総合的な診療を展開している総合内科とも当直体制やカンファレンス、病棟を共有して、一体感をもって協力連携しながら救急・総合診療のフロントを構築しました。総合内科にはさまざまな疾患をより専門的に診療しようという高い志を持ち、救急の現場にも積極的に参加する医師がそろっていますので、これをきっかけに全員の熱意に火がつき、さらに救急・総合診療部門を良い方向に向けてくれると期待しているところです。

―災害時救急医療については。
私は、阪神・淡路大震災時には神戸に住み、神戸大学で多数の傷病者の治療にあたりました。JR福知山線脱線事故時には兵庫医大で113人の救急患者受け入れの現場にいました。数え切れないほど得た教訓を生かして災害救急の体制を整えていき、また、教訓を一人でも多くの人に知ってもらえる機会を作っていきたいと思っています。

―やるべきことがまだまだある小谷先生ですが、日頃の息抜きは。
音楽が好きで、ずっとギターを弾き、曲を書いたりしていました。実は医大生のころには「プロになるか?」という時代もあったんです(笑)。今は忙し過ぎてなかなか楽しむ余裕がないですが、学生さんとバンドを組んで学園祭やライブハウスに出たりすることもあります。家には防音の音楽室を作りましたので、真夜中に大音量でギターやドラムを鳴らしています。

神戸大学大学院医学研究科
外科系講座 災害・救急医学分野教授
小谷 穣治さん

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