2018年
12月号

「面白い」をビジネスに hitorigoto株式会社、始動!

カテゴリ:お洒落・ファッション, 神戸, 経済人

対談
株式会社フェリシモ 代表取締役社長 矢崎 和彦 さん
株式会社パティシエ エス コヤマ 代表取締役 小山 進 さん

通販大手のフェリシモ・矢崎さんと、パティシエ エス コヤマ・小山進さん。お二人はプライベートでもよく食事をする仲だとか。そんなお二人の会話から新たな会社が誕生することに。その名も「hitorigoto株式会社」。お二人のこれまでのノウハウをフル稼働して、あらゆるジャンルで人気店づくりをめざす。

兵庫県を何とかしたい

─新しく会社を設立すると聞きましたが…。

小山 以前から矢崎さんと食事をご一緒させていただく機会が多く、そのたびに僕が独り言を言う訳ですよ(笑)。矢崎さんは聴いてくださるのでついついスイッチが入ってしまい、「面白い」と言われるとどんどん調子に乗って、普段意識していないことまで出てくるんですね。僕の方が後輩なのに、矢崎さんはそれを手帳にメモしてくれて、次に会うときにそれが具体的なプランになっている。矢崎さんは僕とは違った目線で、これは仕事になるとか、これは誰を巻き込んだら面白いとか、僕の独り言を形にしてくれるんですよ。最近矢崎さんは、いろいろな会社を創るのにハマっているんですよね?
矢崎 趣味は会社創りです(笑)。フェリシモを50何年やってきて、会社が同じ事を何度も繰り返してやってきては駄目だと感じているんです。変われ変われとは言っても、現業をみな持っているので、それを捨ててまでは変われない。そういうときにこそ無理矢理でも突然変異を起こさなければならないと思っていて、一番わかりやすいのは身内だけでやるのではなく、外の人たちと何かを起こしていくことが面白いと思うようになって、面白いと思う人に何か一緒にやりませんかと言っているんです。小山さんもその一人です。何か一緒にやったら面白いものが生まれるという予感が出発点なんですよ。
小山 その根本は兵庫県を何とかしようという思いです。京都生まれの僕にとって神戸は憧れの街ではあるんですけれど、世界が日本に注目しているいま「舶来」ばかりを売りにしている場合なのだろうか?「洋菓子の街」っていうのは本当なのだろうか?ほかにもいろいろな疑問を抱きながら三田で商売してきました。矢崎さんとも神戸~三田~篠山など、兵庫県を繋ぐことができないかと話をしますが、特にこれから先の兵庫県を心配しています。
矢崎 そうですよね。実は今朝、横浜から帰ってきたんですけれど、あの街は面白い。非日常性もありますが、街に活気があるんです。神戸だけ見ていたのでは駄目ですし、みんな至る所に行き尽くしているから、違った視点が必要なんです。小山さんが紹介してくれるお店はめっちゃ面白いし、美味しいし、そういう情報があるので、小山さんが兵庫に来る人たちのおもてなしをプロデュースするとしたら全然違うんです。
小山 でもいま矢崎さんがおっしゃって「行ってみたい」というだけでは何もはじまりません。「行きましょうか?」となってはじめて約束になるんです。それって一つの仕事ですよね。言い出しっぺがいて、それを紹介する人がいて。

上質な体験をデザイン

小山 三田に「山獲」っていうジビエのお店があるんですが、僕は年間2~3百人友達の予約を取ってあげるんですよ。例えば16名集めて僕のところでお菓子教室したあと「山獲」へ行くというようなことが多いんです。ロールケーキもジビエも世の中にいろいろありますよね。でもそれまで自分たちが味わってきた一定の基準があって、それを少し超えるだけでその人の1位を記録するんです。そうなるとわざわざ三田に来なくてはいけない理由になる。それってひとつの観光ではないですか。いまは知り合いだけでやっていますが、それを一般の人たちに紹介することでビジネスになるのではないかと思うんです。
矢崎 神戸のレストランでもプロデュースできそうですよね。
小山 神戸の一品料理食べ歩き会というのを企画したことがあるんですよ。僕の思う「ここの店のこれが美味しい」という各お店のスペシャリテだけを食べに、次から次へと店を巡るんです。22時半ぐらいの遅い時間になればコースの時間が終わる頃なので、知り合いの普段コース料理しかやっていないお店のシェフたちに「〇時に〇人で行くから、1品だけ用意できない?」と無理のない範囲でお願いをして、東京から来られた友人たちをもてなしたことがありました。全部で12軒くらい回ったんです。
矢崎 めっちゃ面白いでしょ?
小山 それに参加したホリエモンがいま全国で同じことをやっていますよ。もちろん、それぞれの地域にナビゲートする人を見つけて。
矢崎 その話を聞いたときに、ミシュランとはまた違う楽しさがある。街全体を一つのコース料理のように回るのも違った感覚で面白いですよ。
小山 いろいろなジャンルでこういう企画が可能だと思いますが、常にお店の情報をもっていないといけません。
矢崎 そういう体験は一生忘れないでしょうね。東京でそれをやろうと思うと街が大きすぎますが、神戸はぴったり。しかも料理だけでなく、例えば美しくなりたい人を満足させるなど、いろいろなジャンルでできそうです。上質な体験をデザインする会社を目指したいですね。

視点を変えて創造的に

─会社の名前は考えていますか。

小山 hitorigoto株式会社です。もうひとつ候補があったのですけれど。「月光仮面」という。
矢崎 「月光仮面」は登録商標でした。絶対忘れない名前ですけどね。
小山 どんなことでも頭の中で考えて、言うか言わないかじゃないですか。僕らの創作は言うところからはじまり、リアクションをみて商品になったりしていくんです。この会社も最初は僕の独り言を聴いてくださる方がいて、面白いと言ってくれて、次にはちゃんとした形にまとまってくるというプロセスです。それってとっても大事で、ちゃんとコンセプトがしっかりしている社名だと思います。

─兵庫ヤクルト社長の阿部泰久さんも加わるそうですが、3人の役割分担はどうなりますか。

矢崎 3つ本部がありまして、小山さんは企画本部長、阿部さんは営業本部長、僕はその他本部長です。
小山 僕はとにかく思いついたことを言うだけ(笑)。僕は業種を問わず、お店を流行らせることには絶対自信があります。
矢崎 そこが重要で、この会社はグルメツアーの会社じゃなくて流行らせる会社、クリエイティブな側面の強いコンサルティング会社です。小山さんの魔法をかけるコンサルティングなので、職種は問いません。
小山 流行らせるためには、まず違和感ですよね。その人たちが持っている常識に対して、僕がどんな違和感を感じるか。「これはおかしいのでは?」と思うことがどんなお店にもあるじゃないですか。でもその人たちは気づいていない。だから外からの眼で弱点を指摘するんです。どこが弱点か気づいてそれを直すことを僕は「事の新製品」と呼んでいますが、手直しするだけでその業種ではかなりオリジナリティのある磨き方ができると思うんですよ。いまから独立する人は不安で仕方がないし、いままで学んでいたところの常識が常識だと思っているんです。でもその中で自分がこうしたいというのは持っているんです。確かにしたいことを持つことは悪いことではないけれど、しなければいけないことを持つことの方が有効で、それを本人がわかっているかどうかです。
矢崎 「事の新製品」って面白いキーワードですよね。見る角度を変えるだけでいろいろなことが変わるんだけど、そこにずっといると何も浮かび上がってこないんです。そういう意味でも外の目が入るというのは良いんでしょうね。何を以てクリエイティブなのかわかりませんが、創造的じゃない状態を変えることですよ。普段の状態は創造的ではないですよね。それを変えるためにはまず見方を変える、動き方を変えることだと思います。

死語から脱却し具体性を

矢崎 神戸が世界一やりたいことをやっている人間が集まる街になったとしたら、絶対面白くなるでしょうね。
小山 それってハイカラのイメージとマッチするじゃないですか。でも、打ち出すキャッチフレーズがちょっと間違っていて、みんながどうしたらよいかわからないでいると思うんですよ。「港町」…だからどうなんですかね?死語がいまも使われていて、具体性がないんです。「洋菓子の街」というフレーズにしても、視点を変えてそうじゃないよねと考えるお客様がいたときに、そんな気がすると思うプロが反省して修正していくことですよ。でも神戸にはいっぱい魅力的なものがある。それを繋げて神戸らしさとして発表できていないんですよね。

─会社は何名でスタートするのですか。

矢崎 現状は7名ですが、それぞれ仕事を持っているので、専従の人を採用したいと思っています。我々のまわりにはいっぱい面白い人がいる訳です。その人たちは普段簡単には仕事を受けないけれど、僕たちから頼まれたら考えてくれるでしょう。それは結構強みです。そういうところから化学反応が起こると面白いですね。小山さんのところの庭師の松下裕崇さんもメンバーです。
小山 彼は庭師としても大物ですが、何でもできるんですよ。バカボンのパパは庭師でしょ?バカボンのパパはアホなふりしているけれど、いろいろな家庭にどっぷり入り込める。それが庭師の本来の仕事なんですよ。彼と15年前はじめて会ったときに「庭の仕事じゃなくてもいいから、何でも頼んでください」って言うんです。カカオを見に行くときにも、今度パリのサロンドショコラにも連れて行きますが※、自分でしかできないことを見つけて仕事するんですね。例えば植物学的な観点からカカオをみて、生産農家へアドバイスまでするんですよ。
※10月23日の取材時点

─いろいろなことができそうですね。

小山 とにかく兵庫県を面白くしたいというのが目的ですから。新幹線では行けないような兵庫県の旅、いままで紹介できていないようなスポットをレンタカーでめぐる兵庫県の旅も提案していきたいですね。
矢崎 もう少ししたら車も自動運転になるし、そうなれば旅のスタイルも変わるでしょう。
小山 お店のリニューアルも需要があるのではないかと思います。店の歴史や守るべき伝統など良いところも、僕らだから思いつくことがある。「こんなことをしたいんですけれど」とおっしゃっていただければ、誰がお客様なのかというところから考えればやるべきことは浮かび上がってきます。うちには面白いアイデアを持っている人がいっぱいいますので、ぜひお気軽にご相談ください!
矢崎 お店を創る・変える、商品を創る、どうやって売るなど、幅広い業務になっていくと思います。『神戸っ子』もクライアントになりますか?(笑)



小山進のあたらしい会社が誕生します。その名は hitorigoto株式会社。es koyamaの創業者として世界を舞台に活躍する小山進が、独自の経営哲学と美意識を余すところなく駆使し、さまざまな領域の事業に関するコンサルテーションを行います。
会社は、es koyama代表の小山進、フェリシモ代表の矢崎和彦、兵庫ヤクルト代表の阿部泰久の三人が共同で設立しました。この度、スタートを記念し、2018年12月11日(火)にトークセッションを開催いたします。詳細は下記のとおりです。参加お申込みは、弊社「facebookページ」の予約ボタン、もしくは「EventRegist」からお願いいたします。

《日 時》2018年12月11日
《場 所》デザインクリエイティブ
センター KIITO
2階Stage Felissimo
《参加費》1,000円
《QRコード》

月刊 神戸っ子は当サイト内またはAmazonでお求めいただけます。

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