9月号
対談/個性を育む私立中学の教育 第3回 甲南女子中学校
日能研関西 代表 小松原 健裕
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甲南女子中学校 高等学校 学校長 岡田 明
伝統を守り、自立した女性としての未来をひらく
名門私立中学校に多くの塾生を合格させている日能研関西代表の小松原健裕さんと関西名門校トップとの対談シリーズ第2弾。第3回目は、甲南女子中学校学校長の岡田明さんにご登場いただきました。
卒業生たちが誇りに思う甲南女子中高
小松原 甲南女子中高は、生徒さんたちがのびのびしていて、おおらかな学校というイメージです。日能研から進学した子どもたちも、一生懸命勉強して難関大学に進学する子もいれば、部活でスポーツに打ち込む子もいるし、それぞれが楽しく学校生活を送っていると感じます。環境にも恵まれ、お庭や新校舎屋上からの見晴らしも素晴らしい。でも、設立はこの地ではなかったのですね。
岡田 1920年、甲南高等女学校として開学したのは、現在の本山南中学辺りです。50年前の1968年にこの場所に移転しました。当時の校舎の建物は村野藤吾の設計によるもので、庭園を造り、校庭に100本近い桜の木を植えています。新校舎にもその趣を取り入れ、老木になった桜の木は植え替えの準備も進み、春の校庭は次々咲く花でいっぱいです。
小松原 第一校歌と第二校歌があり、第二は生徒の作詞・作曲で毎年変わるというのも珍しい例ですね。
岡田 伝統の礎をつくった3代目校長で初代専任校長の表甚六が定めたものです。時代が移っても変わらない第一校歌、時代に応じて変わる第二校歌は毎年最高学年生徒の手で作ります。1927年から始まり、今年で90曲目となります。新校舎の甲南女子学園の沿革を紹介するコーナーでは本校の歴史のひとつとして、歴代の第二校歌が聴けるようになっています。
小松原 100年の伝統を守り続けているのですね。
岡田 私事ですが、妻も娘も甲南女子中高出身です。ずっと昔の妻の時代、娘のころ、そして今、変化してきたところもありながら、伝統的に一本筋が通っています。
小松原 卒業生にとっても誇りですね。
岡田 卒業生にお会いすると、「生まれ変わっても甲南女子に入りたい」とおっしゃいます。阪神間にはたくさんの卒業生がおられますが、皆さん「私は甲南女子出身です」と誇りを持っておられますね。
小松原 保護者にも卒業生が多く、子どもを進学させたいという方が多いですね。
岡田 まず、女性としての躾がきちんとできていることを知っておられるからでしょうか。いいお友達ができるということもあるでしょうね。女子高離れといわれる難しい時代ですが、入って来ていただければ、親御さんの期待に応えしっかりとした教育ができるという自信を持っています。
100周年記念事業にも生徒たちの意見を取り入れる
小松原 いよいよ再来年100周年を迎えますが、記念事業は始まっているのですか。
岡田 音楽棟などの改修には着手しています。来年にはグラウンドを全て人工芝に替えますが、これは女子高としては珍しいと思います。記念行事では式典をはじめ、関西フィルハーモニー管弦楽団をお招きし、プロの演奏をバックに生徒や卒業生も参加する音楽会を企画しています。生徒たちも「つくってみた、わたしたちの100周年。」プロジェクトを立ち上げ、どんな記念冊子を作るかなど話し合いを始めています。
小松原 100周年記念の企画にも生徒たちの意見を取り入れるのですね。生徒の自主性を重んじる校風ですね。
岡田 本校では体育大会、文化祭などの行事でも実行委員会を立ち上げます。もちろん先生方も手伝いながらですが、ほぼ全て生徒たちの手で運営しています。
進学実績で目覚しい成果を挙げている2コース制
小松原 進学実績も目覚しく伸びてきていますね。国公立大学受験を目指す女子も増えていますので日能研としても女子校の選択肢が増えてありがたいことだと思っています。
岡田 2008年から改革を始めました。それまでは甲南女子大進学を主とする標準コース、現在の「スタンダードコース」のみでしたが、次第に外部進学の希望も増えてきました。そこで、国公立大学進学に配慮したカリキュラムの「Sアドバンスコース」を新設しました。
小松原 伝統のある学校ですから改革は大変だったと思いますが、いち早く取り組まれたのが甲南女子中高です。そしてすぐにSアドコース新設の成果が出てきたのですね。
岡田 全体の生徒数が少ないにもかかわらず、最近は毎年、東大合格者を出し、京大、阪大、神大へも複数人進学しています。スタンダードコースも頑張っていますよ。今年の卒業生には、6年間ハードな部活を続けながら大阪大学世界適塾入試で合格した生徒もいます。因みに、日能研出身の生徒です。
小松原 そうですか!うれしいですね。2020年の大学入試改革を視野に入れた対策も既に始めておられるのですか。
岡田 副校長が中心になり情報収集をしながら取り組んでいます。既に決定していることへの対策はもちろんですが、なぜそういった対策が必要なのかというところまで細かく指導をしています。
甲南らしさを身につけたら、外に出ても必ず通用する
小松原 これから甲南女子中高に入学してくる生徒さんたちに望むことはありますか。
岡田 6年間で甲南らしさを身につけてほしいと思っています。基礎的な学習ができている子どもたちが入ってきてくれるのですから、甲南女子でごく普通に過ごせば、たとえ外に出てもちゃんと通用する人間に育ってくれるはずです。私共も今まで培ってきた女子教育の伝統を守りながら、進路については生徒たちの希望に応えられるよう努めていくつもりです。
小松原 私も来させていただく機会があるのですが、いつも生徒さんが明るく元気に挨拶してくれます。
岡田 ご家庭できちんと教育された子どもたちですし、学校でも先生方がどんな場面でも模範を示し指導しています。校内はもちろん、私は芦屋に住んでいますので校外でも私服の生徒に挨拶されてびっくりすることがあります。生徒たちにとっては習慣化しているのだと思いますね。
小松原 保護者にとって、甲南女子中高の情操教育はとても魅力だと思います。いろいろなことを経験できる学校生活が大学入試改革に向けても有利に働くでしょうし、既に対策にも取り組んでおられるということは心強い限りです。
岡田 ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。
小松原 こちらこそよろしくお願いいたします。
岡田 明(おかだ あきら)
甲南女子中学校 高等学校 学校長
1947年兵庫県生まれ。兵庫県立明石高等学校、高知大学教育学部を卒業、同専攻生終了後、神戸大学教育学部研究生を経て甲南女子大学に勤務。人間科学部生活環境学科教授。専門はスポーツ社会学。2013年、同大学副学長に就任。15年4月から現職
小松原 健裕(こまつばら たけひろ)
株式会社 日能研関西 代表
甲陽学院高校、慶応義塾大学と中高大を私学で学ぶ。同大学法学部卒業後、日本IBMに入社。主に金融機関システムの提案に携わる。事業承継のため日能研関西に入社。授業担当科目は算数。京都本部長、副代表を経て、代表に就任。日能研関西本部業務全般に加え、日能研グループとの連携、私学教育の振興にも携わる