2013年
7月号
国際コミュニケーションコースでの船山学長による授業風景

世界とコミュニケーションを

カテゴリ:教育・スポーツ

公立学校法人 神戸市外国語大学
理事長・学長  船山 仲他さん

戸市外国語大学は、昨年度に第1期中期計画が終了し、今年度から大学の新たな行動計画となる第2期中期計画の取り組みを始めた。2016年には創立70周年を迎え、これから目指す方向を船山学長にお聞きした。

―第1期の計画は予定通り進みましたか。
船山 第1期中期計画は学部を中心に語学授業の少人数化をはじめとしたカリキュラムの改定や国際コミュニケーションコースの新設など、ほぼ計画を達成しました。
―新設された国際コミュニケーションコースとは。
船山 本学に入学してくる英語を得意とする学生たちが、実際に英語を使ったコミュニケーションをやっていこうというものです。複数の学科から希望者を募り1学年20人を選抜しています。昨年の春に第1期の卒業生を社会へ送り出しました。
―第2期中期計画の柱となるのは。
船山 第2期の柱は、「国際的に通用する人材の育成」、「高度な学術研究の推進」、「地域貢献」、「国際交流」、「柔軟で機動的な大学運営」の5つです。人材育成、授業と留学の結びつきという2つを考え方の基本として、第2期では大学院に重点を置き改革を進める予定です。また、2016年の創立70周年に向けて、学生支援環境を充実していきます。
―計画の中にある、学生支援環境の充実とは。
船山 大学の中で、図書館の自習室は静かな環境、食べながらおしゃべりできる学生食堂は賑やかな環境です。その中間的な環境、例えば、学生が人に薦めたい本をプレゼンテーションで競い合うビブリオバトル。そういった企画は言葉を発するわけですから、静かな図書館とは一線を画す空間を必要とします。ほかにも、学生たちがテーブルを囲んで自由に話し合い授業の準備をする空間など、従来とは少し異なる新しい使い方ができる空間を学内につくろうという計画です。
―学生たちが積極的に交流する場ですね。
船山 グローバルな人材育成には、発表する、特に外国語大学ですから外国語で発表できるある程度のスペースが必要だと考えています。
―新たな建物など造るのですか。
船山 今のところ、既存の第2学舎を拡張して設ける予定です。更に、現在手狭なキャリアサポートセンターを移転し、広い空間で学生にセンターをより有効に利用してもらうことを計画しています。
―授業と留学のむすびつきとは。
船山 世間では、留学さえすれば語学力が身につくと言われているようですが、実際は準備もなく行くだけでは身につく力にも限界があります。そこで、学内の授業の中でしっかりとした下地をつくり、それに磨きをかけるために留学するという位置づけをしようというものです。
―歴史や文化など背景を知ってからということですか。
船山 それもあります。背景を何も知らない国へ行って、全てを短時間で吸収しようというのは無理な話です。ある程度知ってから行くと、吸収する力が全く違ってきます。
―最近の若者は内向きだと言われていますが、どうでしょうか。
船山 本学の学生は以前同様、留学に強い関心を持っていますから、本学に限っては内向きということは当てはまりませんね。留学希望者が多くいます。できる限り、費用面、また内容の充実のための支援に努めていきたいと考えています。

神戸市との連携と地域貢献

―どのような地域貢献を行っていますか。
船山 神戸市教育委員会と協定を締結し、「連携協力に関するアクションプラン」に基づいて様々な協力をしています。小学校での英語活動支援の実施をはじめ、キャンパスに市立学校の先生が研修に来られたり、小中学生や高校生がやって来ることもあります。そのほかにも、地域貢献として、市民講座やオープン・セミナーなどの開催や講師派遣など出前で外へ出かけるケースもあります。
―近辺の大学等との連携は。
船山 学園都市の5大学1高専で運営する大学共同施設ユニティや各大学で、単位互換授業を実施しています。ユニティでは公開講座もあり地域の皆さんにも聴講いただいています。
―神戸市の医療産業都市構想との関連は。
船山 先端医療の分野では今後、医療通訳のニーズが高まります。現在、看護の知識と外国語の知識を融合できるかという研究を神戸市看護大学と共同で行っているところです。
―全国の外国語大学との交流は。
船山 東京外国語大学とは、特に大学院の研究者レベルで交流があります。また私立を含む全国7つの外国語大学とは全国外大学長会議で交流の場を持っています。

学生同士が影響し合って成長する

―神戸にある大学のメリットは。
船山 神戸市外大へは全国から学生がやってきます。歴史的な港町でもあり、現在でも国際港湾都市です。また、地理的にも西日本の中心になり得る土地柄です。神戸ブランドというイメージ的なものも作用するでしょうし、外国語大学としての立地には適していると思います。
―実際、学生たちにとってのメリットは。
船山 国際港がすぐそこにあるというのは学生たちにとっては良い環境でしょうね。繁華街から離れているこの学園都市という環境は不便なようですが、意外と保護者、特に女子学生の保護者にとっては安心材料になっているようです。
―神戸市外大の学生気質は。
船山 まじめですね。中でも英語に関しては高校生の頃からコツコツとまじめに勉強してきています。
本学の語学の授業は厳しいですし、クラスのメンバーがずっと同じで、出席しなくてはいけない雰囲気があり、それが他の授業にも広がっていくようです。まじめさを認めた上で、どう積極的に行動してもらうかというのが私たちにとっての課題でもあります。
―どのように心がけているのですか。
船山 外に向けて発信できるように私たちが仕向けていくことですが、それ以上に学生同士が影響し合う力は大きいですね。例えばボランティアでは、小規模な大学ですから組織的にはあまり動けないときでも、学生が自分たちで動き始めるんですね。学内でそれが次第に広がっていきます。社会に対する関わり方が自然な形で培われていくようです。
―それに適した規模と学生数なのですね。
船山 本学は1学年500人程度の単科大学です。大勢の学生がいる総合大学にはその規模に伴う良さがあります。一方、本学の良さは小規模で家族的な雰囲気です。お互いに顔と名前も良く分かります。学生たちもそれを感じながら4年間を過ごし、卒業していくようです。
―今後も、まじめで発信力のある人材育成に期待しています。

国際コミュニケーションコースでの船山学長による授業風景



人に薦めたい本をプレゼンテーションで競い合うビブリオバトル


東京外国語大学とは、大学院の研究者レベルでの交流を行う


船山 仲他(ふなやま ちゅうた)

公立学校法人 神戸市外国語大学 理事長・学長
1950年大阪府生まれ。大阪外国語大学外国語学部ロシア語学科卒業。京都大学大学院文学研究科言語学専攻博士課程単位取得満期退学。京都工芸繊維大学助教授、大阪府立大学教授、神戸市外国語大学教授などを経て、2011年に学長に就任。専門は言語学、通訳理論で、2010年10月より日本通訳翻訳学会の会長を務める。

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