2017年
9月号
9月号
英国と神戸 Vol.3 日本最初、重力式コンクリートダム 布引ダム
六甲山地の麓に「布引貯水池」を形成する布引ダムは、日本最初の本格的な重力式コンクリートダム。神戸が貿易港として栄えた当時、布引の水は、神戸港に寄港する外国人の船乗りたちに赤道を越えても腐らない良質でおいしい水「コウベウォーター」として評判であった。布引ダムは、「コウベウォーター」の象徴ともいえる建築物であり、今日でも、神戸市の貴重な水源であり続けている。
布引ダムは正式名称を「布引五本松堰堤」といい、明治33年(1900)、東京や大阪、広島などの大都市に次ぐ、日本で7番目の近代水道水源として建設された。設計は、イギリス人技師ウィリアム・K・バルトン。型枠用の石積をそのまま残した外壁と堤上部のテンテル(歯飾り)は、ヨーロッパの古い城壁のような情緒を漂わる。その重厚な姿は、貯水池周辺の景観の、構成要素のひとつとなっている。
平成7年の阪神・淡路大震災では、大きな被害はなかったもののダムに漏水が生じ、平成13年から平成17年にかけて、ダム本体の保全を行いながらの補強工事が行われた。平成10年には登録有形文化財に、平成17年2月には(財)ダム水源地環境整備センターによりダム湖百選に、平成18年7月には国の重要文化財に指定されている。
貯水池の周辺には、日本三大神滝として知られる布引の滝があり、森林地帯や神戸布引ハーブ園など、自然環境豊かな観光名所が随所に見られる。現在では、ハイキングコースが設定され、野鳥観察所や休憩所が設置され、美しい姿で訪れる人々の目を楽しませてくれる。