2014年
7月号

兵庫県全域が教育・研究拠点 設立10周年にさらなる飛躍を ー兵庫県立大学

カテゴリ:教育・スポーツ

公立大学法人 兵庫県立大学
理事長・学長 清原 正義さん

「神戸商科大学」「姫路工業大学」「兵庫県立看護大学」の統合により設立されてから10年、公立大学法人への移行から2年目を迎えた「兵庫県立大学」は、未来を見据えた特色づくりに取り組み、着実に成果を上げている。

法人移行2年目、発展の基盤が固まる

大学のガバナンスが問われる時代です。兵庫県立大学は前身3大学が統合したという背景もあるのでしょうが、これまで学部の独立性が強かった感はいなめませんでした。公立大学法人に移行して1年が経過し、全体をマネジメントする力がつき、今後発展していくための基盤がようやく整ってきたと言えるのではないでしょうか。以前と同様に県政とは密接な関係を図っており、大学の発展に関しては、いつも井戸知事に気にかけていただいています。本学も、県政発展のためにできる限りの協力をしていきたいと思っています。
大学改革については、法人化直後に策定した中期計画に基づき、着実に取り組んでいるところです。学内で計画に基づく取組の成果が徐々に見えています。11月24日の創立10周年・創基85周年記念式典では、本学のビジョンを学外にわかりやすく発信していきたいと考えています。

高度な専門職業人の育成を目指す

全国に700以上ある大学がどう特色を出すのかについては、それぞれの大学が苦労しています。本学では、社会を支え発展させていく中核となる専門職業人を積極的に養成していきたいと考えています。例えば、看護学部は、前身が国公立初の看護系4年制単科大学である兵庫県立看護大学です。これまでも看護分野をリードしてきましたが、その伝統を引き継ぎ、高度な専門看護職を育成するという志向を持っています。また、それぞれの学部には大学院があり、特に経営学部は会計専門職大学院、経営専門職大学院を持っています。こうした強みを生かし、高い能力を持った社会に貢献できる専門職業人を養成していることをもっとアピールしていきたいと考えています。さらに、社会のニーズに応えるため、学部・研究科等の再編も、現在検討を進めています。

県内に点在する拠点を生かして

兵庫県立大学は県下に点在するキャンパスに6学部・13研究科等を設けています。県全体がキャンパスであると言っても過言ではありません。これを長所と捉え、地域貢献を大学のミッションに、文部科学省の補助事業「地(知)の拠点整備事業」の支援を得ながら、「地域資源マネジメント系」「多自然地域再生系」「産学公連携系」「ソーシャルビジネス系」「あわじ環境未来島構想系」「地域防災・減災系」という6つのプロジェクトに取り組んでいます。「日本の縮図」と言われる兵庫県に分散型のキャンパスを持つ本学ならではの特長を活かし、多彩な取り組みを推し進めています。

産学公の連携した取り組み

本学では、先端的な研究を企業活動に反映させ、企業からの問題提起を研究に取り入れるなど、地域のものづくり企業との連携を深めています。
ポートアイランドにある神戸情報科学キャンパス隣のスーパーコンピュータ「京」などとの連携を視野に、計算科学連携センターを立ち上げました。さらに、播磨理学キャンパスにある生命理学研究科では文部科学省の支援を得て、リーディング大学院を設け、理化学研究所(放射光科学総合研究センター)とも連携し、大型放射光施設であるSPring-8や大規模振動分光装置等を利用した「ピコバイオロジー」(※)に関する教育と研究に取り組んでいます。企業をはじめ大学・研究機関等の協力を得て、全国屈指の研究水準にあり、卒業生は、幅広い分野で活躍する研究リーダーに巣立ってくれると期待しています。このほかにも、水素エネルギー社会の実現に向けて、次世代水素触媒共同研究センターも新たに立ち上げるなど、産学公の連携による研究の推進に取り組んでいます。今後、他大学や研究機関とも話し合い、こうした県下の高度先端研究施設とより密接に連携が図れないか、模索していきたいと考えています。
※原子レベルの生命科学。全ての生命現象はタンパク質によって駆動される化学反応である。タンパク質の構造をピコメートルレベルで解明することにより生命現象を解明するとともに、医療、創薬、タンパク質の設計など、多様な分野で役立つ次世代を担う研究として近年注目を集めている。

防災・減災への備え

阪神・淡路大震災で被害を受けた兵庫県の大学として、その経験と教訓を生かして防災・減災分野で社会に貢献できる人材の育成にも力を入れています。看護学研究科では文部科学省の支援を得た国公私立5大学による、リーディング大学院「共同災害看護学専攻」を設けました。さらに、全学の学生が学べる科目群として、防災教育に関するユニットも設けています。震災後20年を迎える来年には防災・減災に関する国際シンポジウムを開催するなど、防災・減災に関する教育研究の拡充を図ります。

グローバル化の推進

大学にとってもグローバル化が必須な時代です。昨年度にグローバルリーダーを育成するための教育ユニットを開設しました。受講している学生のプレゼンテーション能力は非常に素晴らしいものがありました。本学の学生は一見地味なイメージがありますが、グローバルリーダーとしての大きな可能性を秘めていることがわかり、とても頼もしく思いました。

さらなる飛躍をめざして

統合後10年が経過しましたが、「兵庫県立大学がどんな大学か」というのはまだまだ知られていません。前身の神戸商科大学、姫路工業大学のネームバリューと、兵庫県立看護大学の実績を生かしながら、世の中に本学の存在をもっともっと浸透させていきたいと思います。創立10周年を期に、さらなる飛躍をめざしてまいります。

写真は兵庫県立大学本部のある神戸商科キャンパス(神戸市西区学園都市)


スーパーコンピュータ「京」に隣接する神戸情報科学キャンパス(神戸市中央区ポートアイランド)


兵庫県立大学が誇る世界最先端のピコバイオロジーの研究。放射線X線(SP ring-8/写真)、X線自由電子レーザー(SACLA)を駆使した研究が進む

清原 正義(きよはら まさよし)

1947年生まれ。1969年京都大学教育学部卒業。1974年東京大学大学院教育学研究科博士課程(教育行政専攻)進学。1998年、姫路工業大学環境人間学部教授。2004年兵庫県立大学環境人間学部長。2010年兵庫県立大学学長。2013年より理事長を兼務。

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〈2014年7月号〉
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