9月号
神戸のカクシボタン 第九回
写真/文 岡 力
「動物園の昭和遺産」
先月、東京出張の際に上野動物園へ行った。広大な敷地に多くの動物が所属する動物界のジャニーズ事務所。中でも一際、異質な存在感を放っていたのがハシビロコウと呼ばれるペリカン目の鳥。全く動かず鋭い眼光でずっと観客を睨みつけている。にもかかわらず熱狂的な女性ファンが大きなカメラをぶら下げほぼ毎日通い詰めている。まあ、最も驚いた事と言えばファンの方がハシビロコウと同じような顔をしていた事だが…。
「自分だけのアイドルアニマルを探したい」そんな思いをひっさげ向かった先は、神戸市立王子動物園。早速、スカウトを開始する。塩沢とき似の白いフクロウやドジョウを追いかけまわすカワウソなどメジャーとは言えない月見草系アニマルを見て回る。目星をつけるも決定的な材料が揃わない。すると我が目を疑う一枚の看板が視界に入る。「ロボコン…」私が幼少の頃に一世風靡した石森章太郎の人気キャラクターである。1979年、テレビ放送とタイアップし園内に設置された可動式の巨大ロボコン。当時、テレビ・ラジオで活躍されていたカリスマ飼育員の亀井一成さんと共に人気を博した。20年に渡りシンボルとして君臨してきたがテレビ放送がなくなると徐々に人気が低迷。そんな時にやって来たのがアンパンマンだった。正義感溢れるスターの出現によりあえなく撤去される事となったロボコン。しかし全盛期を懐かしむ多くの方から存続の声があがり事態は急変。廃棄処分を免れモニュメントとして生まれ変わる事となった。今日も広場で老若男女問わず多くの来場者を愛くるしい顔でお出迎え。名実ともに動物園のアイドルと言える。がんばれロボコン!負けるなロボコン!
■神戸市立王子動物園
兵庫県神戸市灘区王子町3-1
休園日 水曜
JR灘駅 北へ徒歩5分
阪急王子公園駅 西へ徒歩3分
■岡力(おか りき)コラムニスト
ふるさとが神戸市垂水区。著書「アホと呼ばれた’80S」「噂の内股シェフ」「関西トラウマ図鑑」連載「大阪ロマン紀行」(大阪日日新聞)「oh!二度漬けラジオ」(YES-Fm)
出演「おちゃのこSaiSai」(J:COMチャンネル)