2014年
11月号
ドアは寄せ木のしつらえ。デザイン性が目を惹く

フランク・ロイド・ライト その思想と建築を今に Vol.5

カテゴリ:建築

装飾と意匠

 単純性-芸術家としてこの言葉を用いるとするなら-は、ある有機的全体のなかの完璧なる一部分となってはじめて達成されるものなのだ。単なるひとつの特徴、単なる一部分に過ぎなかったものが、単純性の域に達すると、調和した全体における調和した要素となる。(中略)デザインの明瞭さと、完全なる意義の表明は、ともに野に咲く百合の自然な単純性の第一の本質である。「苦労もせず、紡ぎもしない」。このイエス・キリストの言葉こそ、単純性についての至言である-
 装飾は住宅にとって欠かせない要素であり、住まいの「雰囲気」を醸す重要なファクターであることは言うまでもない。
 しかし、それが建物と調和していなければ、快適さを邪魔するだけのものに成り下がってしまう。部分ごとの要素を付け足し付け足ししていく装飾は「装飾のための装飾」であり、装飾そのものの意図から大きく逸脱してしまう。
 何よりもまず、家は居心地の良い場所でなくてはならない。住む人の使いやすさや心地良さが室内のあらゆるところに存在する。それをより魅力的かつ快適なものとするのが、装飾の本質であるとライトは言う。
 ライト建築の魅力のひとつとして、その統合的な装飾を挙げる人は多いだろう。建物と一体となった単純なパターン、ディテールにまで散りばめられた何気ないデザインは、優れた詩のように心を動かす。
 オーガニックハウスでもまた、心を動かすシーンに出会うことができる。階段の手すりに施されたスクエアのパターンや、ドアの寄せ木風のしつらえ。座り心地の良い備え付けのベンチのファブリックは、その色合いが空間の何気ないアクセントに。リビングのライトデッキは昼は陽光、夜は間接照明で光までデザインしている。ライトの愛弟子、ジョン・ラッタンバリーをはじめとする建築家たちが監修したその意匠には、野の花のような単純性と飽きのこない造形美が宿っている。
 これがないと味気ないし、これ以上だとうるさいという絶妙なバランス。そして空間との調和。良いデザインは決して色褪せることはない。だからこそ末永く、我が家を愛し続けることができるだろう。

ドアは寄せ木のしつらえ。デザイン性が目を惹く


三角形の装飾を何気なく手すりにも施す


統合的な装飾も特徴のひとつ。写真は階段


幾何学的な装飾は、ディテールにまでこだわる。写真は玄関窓



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〈2014年11月号〉
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