2015年
10月号
10月号
文化の融合が、独自の邸宅文化を生んだ 『芦屋の和洋館よとわに』
福嶋 忠嗣 著
芦屋で祖父の代より建材業を営む家に生まれた福嶋忠嗣さんは、設計事務所を営む傍ら、昭和61年(1986)より芦屋洋館建築研究会を設立し、芦屋の洋館建築を記録する取り組みを行ってきた。このたび、その集大成ともいえる「芦屋の和洋館よ とわに」を上梓。貴重な図や写真を交え、全26の邸宅を詳細に紹介している。
大商業都市・大阪の公害を避けるべく、大正から昭和初期にかけて、富裕層は自然豊かな芦屋に邸宅を建てた。中でも和洋折衷の「和洋館」は、彼らのルーツがある大阪・船場の文化と、神戸の西洋文化の融合によって生まれた。やがてこの地域では、西洋文化を取り入れた生活文化様式「阪神間モダニズム」が開花。しかし、邸宅は第二次世界大戦の空襲によって洋館部分だけが残り、阪神・淡路大震災でその多くが姿を消してしまう。
全国に先立ち「住む」ために発展した街・芦屋。本書は、入念な調査と記録の上に、芦屋の邸宅文化を浮き彫りにすると同時に、地域への愛着を呼び覚ましてくれるだろう。