1月号
来シーズンは神戸で!西宮ストークスの挑戦は続く
2023年、バスケットボールクラブ「西宮ストークス」が神戸に移転する。2025年度に神戸港で開業する1万人収容の新アリーナを本拠地に定め、来シーズン(2023−24)はワールド記念ホール(ポートアイランド)で、新たなチーム名のもとプレーを見せてくれる。目下の目標は、B1リーグへの昇格。そして2026年から始まる新リーグへの参入だ。神戸移転を前に、株式会社ストークス代表取締役 北村正揮さんと共同オーナーの1人でもある株式会社SRCホールディングス(Kiss FM KOBEなど運営)代表取締役社長 横山剛さんにお話しを伺いました。
神戸にバスケットボールチームがやって来る
横山 僕、バスケ無茶苦茶好きなんですよ。高校生の頃、球技大会だとバスケに出るくらい。素人の中ではできる方でもバスケ部相手じゃダメでしたけどね。
北村 バスケって小学校の体育の授業などでみんな経験していますよね。私はスラムダンク世代だったので特に影響を受けましたけど、プロのバスケチームが根付かなかったからかバスケが話題になることはなかったですよね。
横山 それが一昨年の東京五輪2020で、小柄な日本の女子チームが銀メダル。注目度が変わってきたのでは?
北村 変わりましたね。外からのシュートとか小柄な日本人なりの戦い方を見せてくれて、一層盛り上がってきました。私が小学校低学年の頃にサッカーのJリーグが開幕しましたが、日本人選手が海外でプレーする日が来るとは思ってもいませんでした。バスケットボールも八村塁さんとか活躍していて、これから増えていくと思うので、まずます注目されるでしょう。
横山 バスケの魅力って、何だろうって考えていて。おそらく、ルールも含めてバスケのことを知らなくても楽しめるところかなと。サッカーも「オフサイドって何?」って人まで盛り上がって、ワールドカップの視聴率とか30%以上とるでしょ。サッカーやバスケというより「我がチーム」「我が国」みたいなところで応援をしている。盛り上げるには、バリューを作れる設備や演出が必要だと思う。
北村 今、築60年の体育館なので、設備や観客席とか限度があります。私が2021年の8月に就任してから「ちょっと変わったな」って思ってもらえるような仕掛けをしたくて、一番簡単だったのがLEDビジョンの導入。テーブルオフィシャル席の前に入れて、色んな広告や企画・演出を考えましたが、なにせ予算が無くて。知り合いにお願いしてやっと用意してもらって、いざ電源を入れた途端にバチンと音がして試合直前の会場全体が停電。電気容量が足りてなかったんですね。色んな事を試行錯誤しながら、イメージ作りに頑張っていますが難しい。
横山 アリーナ全体の雰囲気って大事。まちの人が「俺たちのチーム、すげえ!」って思えてこそ「頑張っているなぁ」と共感ができて盛り上がっていく。「地元のチームだから、みんな応援してね」ではダメ。ブランドは作るものじゃなくて、結果。結果的に市民がファンになってくれる価値をどう提供するか。市民ブランドを醸成する仕組み作りって難しいんですよ。特に神戸は、娯楽に恵まれているエンターテイメントにおけるコンペチターがめちゃめちゃ多い。それを超えるマーケティングをやらなきゃいけない。サッカーやラグビーなど、神戸には結構スポーツチームがあるわりに、我が町の我がチームになりきれていない理由が分析できれば、難しいことだけど出来そうな気がする。
北村 来シーズン(2023―24)は本拠地をワールド記念ホールに移し、その翌シーズン(2024―25)には新アリーナです。ワールド記念ホールは5600人入るので、どういう空間を作っていくかが重要な要素になります。2026年から始まる新リーグに入るには、今平均900人の観客動員数を来シーズンには平均4000人に上げないといけません。30試合あるホームゲームのうち、開幕戦や最終戦、冬休み、春休みにどれだけ盛り上げられるか考えているところです。
横山 新リーグって、強くて観客がいてもアリーナがなければ入れなくて、弱くても基準を満たせば入れるって、不思議ですよね。
北村 当然議論にはなっていますが、ただ強いだけのチームが新B1で戦うのではない仕組みに可能性を感じています。設備の整ったアリーナと平均観客動員4000人、売上基準9億円の3つのクリアが条件です。私たちはアリーナがあるから、あとの2つをクリアすればいい。東京五輪やワールドカップなど、演出やエンターテイメント性のあるものがどんどんアップデートされているので、頭の中にインプットして多くの人に来てもらえる仕組みを考えています。新アリーナには、VIPラウンジもできるので、ホスピタリティの提供にも力を入れていきたい。何より天候に左右されないので、オシャレしてお酒を飲みながら観戦できるスポーツですから。
横山 パイの奪い合いにならないよう気をつけないと。サッカー好きとバスケ好きってスポーツ好きで重なるから、「スタジアムで騒ぎたい!見たい!」って人をターゲットにしたマーケットでの取り合いはしんどいだけで、費用対効果もめちゃめちゃ悪い。ということは全く興味がない層にどれだけアプローチできるかだと思う。新しい体験ができる機会をいっぱい作って、楽しみを見いだしてもらう。地域の人々が幸せとか楽しみを得る起爆剤になれればいいよね。
目指せ!B1リーグへの昇格
北村 夏くらいに新チーム名やロゴ、チームコンセプトを発表します。地域をあらわす言葉は入りますが、どのように決めていくかも含めオーナーの皆様としっかりと議論をして進めていきたいと思っています。
横山 名前は難しい。「Kiss FM KOBE」も会社名は「兵庫FM放送会社」。兵庫県の県域放送局だけど、神戸の方がブランド力あるので折衷案。でも、ロゴに神戸の文字は入れていない。神戸ブランドに頼るのではなく、神戸を引っ張らないと。「あのチームすごいよね。どこにあるの?」「神戸なんだ!」くらいに。
北村 ホームタウンは西宮から変わりますが、バスケスクールやチアスクールは継続的におこなっていきますし、社会活動もこれまでどおりです。今は、学校でも体育系に予算がさけず満足いく体育用具が提供できていない問題もあるので行政と連携して、選手を派遣したバスケ教室やボールなどの器具の寄贈を続けていきます。
まずは今シーズン、西宮ラストイヤーでB1に昇格して、神戸で日本最高峰のゲームを見せたいですね。西宮ストークスには、キャプテンをはじめ兵庫県出身の選手が5名いて結束力があります。学生時代から一緒にバスケに励んできた選手たちです。そこに東京五輪のスロベニア代表選手が加入して、みんないいものを持っているけど、全員で一緒にプレーできるようになったのが最近です。レギュラーシーズンは4月の末まで、5月がプレーオフ。これからいい試合を見せてくれるはずです。