9月号
神戸青年会議所 社会に貢献する心地よさを、心の中に浸透させる VOL.7
神戸JC「組織ブランディング委員会」では、JC運動の理念や意義を深く理解し、全力で地域社会の発展に取り組む姿勢を発信しています。
今回は、JCメンバー間でいかに理念を浸透させ共有し、質の高い事業構築ができる組織に成長させるべく「組織をより強固なものにするために」をテーマに、起業家でありKiss FM KOBEを運営するSRCグループCEOの横山剛さんから、企業理念やブランディング、組織のあり方などを伺いました。
起業家は逆境好き
藤田 横山さんは、学生時代の起業は成功の確率が低いといわれるなか起業されましたが、きっかけは何かあったんですか。
横山 きっかけ聞く?「モテたい」それだけ(笑)。低いと言われた成功の確率、変えられるんです。今日、一生懸命事業のことを考えて、必死に仕事をすれば、確率って上がりますよね。前提条件を毎日変化させていけば、成功への確率を100%に近づけることができるんです。その繰り返しなんですよ。
藤田 Kiss FM KOBE(以下、Kiss)は企業再生からでしたし、新規ビジネスにも積極的で、学生らをはじめベンチャー支援も力を入れられていますよね。
横山 「何回失敗したら気が済むねん」って、よく怒られていますよ。起業家ってね、逆境好きじゃないとできないと思うんです。
人間の能力を計るものにIQ、EQ、AQってあるんですよ。IQは頭の良さ、EQはコミュニケーション力とかね。意外と知られていないのがAQ。逆境指数といって、逆境に陥った時にどうするかの指数を5段階で表します。一番多いのが「すぐ逃げる人」。順に「なんとか生き残ろうとする人」、「逆境に対応していこうとする人」、「逆境をコントロールする人」がいて、最も少ないけど最も強い人が「逆境を力に変えられる人」。逆境に陥るほど「今がチャンスだ!」とばかりに燃える人がいるんです。こういう人でないと成功は難しいのかなと思います。意識すればできますよ。
ブランドは氷山の一角に過ぎない
藤田 Kissではどのようにブランディングを進めてこられたのですか?
横山 会社経営で大事なのは「会社は何のためにあるのか」を第一に考えること。徹底的に考えて、確固たる信念を持つ。でも、これがブレるんです。放送局の場合、有名人が「よろしくお願いします」と頭を下げて来られます。アカンですねぇ。勘違いして、謙虚な気持ちを忘れてしまうんです。最初、みんな忘れていたから「相手が頭下げたら、3倍頭下げろ」ってところからでした。
Kissの理念は「情報を通じて地域を豊かにすること」。Kissがあることによって、地域の人が楽しんでくれて幸せになったり、うちを媒体として商売がうまくいって豊かになったり、「全体の福利」という言葉をよく使うんですけど、これを上げるために存在していることを、腹の底から思い込む。絶対にブレてはいけないんです。
JCもそうですよね。基本的なベースの理念がきっちり引き継がれている組織だけど、腹の底から思い込む。唱和するだけじゃダメ。「神戸JCの役割っていったい何なのか」を徹底的に幹部が見直し、コンセンサスをとることが重要だと思います。
組織を動かすには求心力が大切です。何をもって求心力を保つか。単に「仲間ができますよ」ということだけでなく、JCに入るとすごいイノベーションを起こすことができるとか、街を変えることができるとか、そういう求心力が必要じゃないかな。ブランドというのは、氷山の上の一角にすぎなくて、JCというブランドの下に何があるのか。この部分の見直しが必要だと思います。
宗宮 そうだと思います。私たちも、JCは何のためにあるのか、何のために入ったのか、何をすべきなのか、常に話し合っています。新入会した人への共有となるとまだまだで、いろんな動機の人がいるなか、僕らの意識も含め再確認し、考え方や手法を学ぼうとしています。
横山 ここで一番陥りやすいのが、手段が目的化してしまうこと。まず理念に沿った方向性、例えば「神戸にイノベーションを起こすんだ」という話があれば、それをどうするか手法の話しになりがちだけど、方向性が欠け落ちてしまうことがよくあるんです。覚えておくといいのが、社会学者のロバート・キング・マートンがいう「官僚組織の6つの逆機能(弊害)」です。手段が目的化してしまう、言われたことだけやったらいいやという最低許容行動をとるとか、6つの弊害があります。トップが理解し意識すれば、避けられると思います。
理念を浸透させるには
藤田 神戸JCのメンバーに、理念を浸透させるため例会を開くのですが、どのように進めていくのがいいと思われますか。
横山 人間は5つの要素でしか動かないといわれています。“強制力”を働かせる。“報酬”を与える。管理組織において“正当性”を感じさせる。例えば委員長命令とかは正当性ですよね。理念を浸透させるための知識やノウハウなど“専門性・情報”でも人は動きます。一番難しいのが“準拠”といい、これは人としてのパワー、カリスマ性などが含まれます。理念を浸透させようと思ったら、この5つの要素で人は動くと知ったうえで、利害関係を一致させることです。利害って、お金のことだけじゃないですよ。仲間を作りたいとかもそうです。「社会に貢献する」という理念だとすれば、社会に貢献する心地よさを、心の中に浸透させることで、みんなの利害がプラスになるようにできればいいんです。
吉田 JCの理想的な組織像とかあり方は、どのように思われますか。
横山 組織ということでは、制約が多いと思いますが、皆さん若いので、もっとやんちゃでいいと思うんですよ。何かおとなしくまとまっていませんか。批判されるぐらい尖って欲しいな。全国のJCから「神戸JCすごいぞ」って、言われるようになったら嬉しいですよね。
これからの活動の糧に
宗宮 私、今年度がラストイヤーで副理事長をさせてもらっています。仮入会や新入会の時に、 委員長や上の人にやりたいことを話していたのを思い出しました。残り数カ月ですけど、気づかせてもらった思いを大切に、私なりにJC活動を全うしたいと思っています。
吉田 一番印象に残ったのが、AQ。逆境指数ですね。JCって逆境指数を高める組織なんじゃないかなと、自分自身に照らし思いました。理論的にいろいろ教えてもらって、全て当てはまっています。貴重な勉強をさせていただきました。
藤田 人を動かすには、知識力が大事だと感じました。人に話す時、惹きつけることができる力、今の僕に足りていない部分です。これから活動する人たちに伝えていけるよう勉強して話せるようにならないといけないですね。
横山 これからの神戸JCに期待しています。
SRCグループ CEO
Kiss FM KOBE(兵庫エフエム放送株式会社)
代表取締役社長 横山 剛 氏
大学在学中に起業し、以来リクルート広告事業などを手掛け、Kiss FM KOBEを再建すべく平成22年に兵庫エフエム放送株式会社を地元優良企業らと設立。大学などでの講師や公演活動のかたわら、自身も神戸大学大学院 経営学研究科 博士課程後期(栗木契研究室)に在学中。