5月号
harmony(はーもにぃ) Vol.27 誤診で生まれた子
2011年、北海道で出生前診断を巡ってある訴訟が起こされました。
41歳の母親が胎児の染色体異常を調べる羊水検査を受け、ダウン症との結果が出ていたにもかかわらず、医師から「異常なし」と伝えられ、母親は男子を出産。しかし、その子はダウン症に起因する病気のために3か月後に亡くなりました。両親は「出産するか人工妊娠中絶をするかを自己決定する機会を奪われた」として出産した医院と医師を相手取り、1000万円の損害賠償を求める訴訟を起こしたのです。このころ、新型出生前診断(NIPT)が日本で始められ、母体の血液だけでダウン症などの染色体異常を調べられるとして議論が起こっていました。命の選別を助長するとして障がい者団体などは実施について反対を表明していました。この診断が始まって以来、陽性と診断された母親の9割以上が中絶を選択しているといいます。この裁判の場合は誤診の結果、子どもがすでに生まれていることであり、その子は、肺化膿症や敗血症のため、回復することなく、生まれて3か月後に息を引き取りました。両親は訴訟を起こすために弁護士を捜しましたがなかなか引き受けてくれる弁護士は見つかりませんでした。「障がい者団体を敵に回す覚悟はあるのですか?」「生きている我が子を前に、生まれてくるべきではなかったと言えるのですか?」「子ども自身が僕は生まれてきたくなかったと言ったんですか?
どうして生んでくれたの、死にたかったと言ったんですか?」とことごとく断られたようです。ようやく弁護を引き受けてくれる弁護士に出会い、提訴に踏み切ったのです。この訴訟は日本で初めての「ロングフルライフ(Wrongful life)訴訟」と言われました。これは生まれた子どもが、生まれたこと自体が損害にあたる、という訴訟で、アメリカやフランスでは裁判で争われたことがあります。両親が訴訟に踏み切ったのには、生まれてからずっと辛い治療の繰り返しで苦痛だけしかなかった我が子の短い人生を償ってほしいという、両親の我が子に対する思いがありました。
2014年6月5日に判決が出ました。
(次回に続く)
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