2012年
7月号
学習・研究活動をサポートする快適な環境が整った神戸外大キャンパス

楽しく子どもの英語教育を

カテゴリ:教育・スポーツ

神戸市外国語大学 教授 
横田 玲子さん

小学校で始まった英語教育。どんな授業で何を目指すのかなど、神戸市外国語大学の横田先生にお聞きした。

―小学校5年と6年で英語の授業が始まって1年が過ぎましたが、現場にはまだ戸惑いはありますか。
横田 子どもたちはとても楽しんでいますよ。むしろ、戸惑っておられるのは保護者の方。そして、現場の先生方は研修の時間が少なく負担に思われている場面があるようです。1年がたち今は、テキスト〝Hi、friends〟に沿って進めている状況のようです。
―私たちの時代の英語教育とは全く違うのでしょうね。
横田 昔の〝This is a pen〟とは違いますよ(笑)。これが「ペン」って、見れば分かりますよね。そうではなく、子どもたちが本当のことを話せるということを大切にしています。「聞きたい」「伝えたい」ことを見つける仕掛けを作るのが先生の役目であり、楽しみでもあり、また戸惑いの理由でもあるかもしれませんね。ですが、楽しいテキストですし、電子教材もついています。理科や社会などたくさんの引き出しを持っておられる小学校の先生方ですから、いろいろ工夫をされておられると思います。
―先生対象の講演では、どのように指導されているのですか。
横田 多くの先生方は「自分の発音でいいのだろうか?」と、不安を持っておられます。そこで、小学校の英語教育の目標「コミュニケーション能力の素地を育てる」をきちんと捉えていただこうと努めています。先生方に英語でのコミュニケーションを実践していだくと、発音が大事なのではなく、相手に伝えたり相手から情報を得ることが大事なのだと、自分の経験からわかっていただけます。
―暗記する英語とは全く違うのですね。
横田 知りたいことややりたいことがないのに、暗記してもテスト以外には役に立ちません。しかし、サッカーが好きで探究していくうちに日本語の世界だけでは足りなくなり、外国語が必要になってくる。その時初めて、言葉が意味を持ってきます。
―中学の英語にどうつながるのでしょうか。
横田 小学校では人とコミュニケーションを取るために、「文法ルールを守る英語」より、「まちがっていてもいいから使ってみる英語」だったわけですが、そこには規則があることを中学に行って学んで欲しい。その規則を使って話せば誰にでも通じて、書いても分かってもらえるということを、理解していけるようになればいいなと思っています。
―先生がアメリカで学ばれた「ホール・ランゲージ」とは?
横田 言語を意味あるものとして使う中でこそ言語習得は効果的に行われると考える理論です。覚えた単語を組み合わせるのではなく、伝えたい自分がいて伝えたい内容があって、初めて言葉が必要になるという方向で言語習得を考えます。子どもの英語教育に限らず、大人対象でも、また人と人のつながりを作っていくという社会の色々な場面で応用できる理論だと思います。
―先生は神戸外大でどのような授業を担当しておられるのですか。
横田 学部でも大学院でも児童英語教育関係の科目を担当しています。学部の「児童英語教育」は全学基礎科目ですので、将来外大を卒業したお父さん、お母さんの子どもへの教養として役立てて欲しいと思っています。また、最終段階として、3、4人のグループで教材を工夫して児童館を訪問し、小学校低学年の子どもたち対象に「英語で遊ぶ」活動を実践しています。次に履修できる「小学校英語教育論」では、近くの小学校6年生の英語の授業の時間に合わせて出かけて行き、外国人の先生の代わりをするなど年間通じて授業サポートをしています。経験的に学ぶことが大切だと、神戸外大の学生たちは真摯に受け止め、真面目に取り組んでいます。大学院は現職教員が対象なので、ホール・ランゲージの原書講読とその実践についての講座と修士論文指導を担当しています。
―国際都市・神戸という環境は英語教育の利点になりますか。
横田 学生たちには、神戸外大に在学している間に神戸の特色を楽しむようにアドバイスしています。特に「食」。若い時に色々なものを食べてみると、将来、外国に行った時にその国の食文化をより楽しめると思います。よく言われるのですが、「神戸には外国人がたくさんいるので、英語で話しかけて練習できる」。この発想はちょっと違うと思います。特に学校教育では取り入れるべきではないでしょうね。むしろ、英語だけではなく世界の色々な言葉があることを知るには神戸は良い環境だと思います。
―地域とのつながりについては?
横田 近隣の2つの小学校から6年生がやって来て、先生や学生たちに英語でインタビューします。その日は、中国語の先生も、英語の先生も、経済学の先生も…、学生たちももちろん皆、小学生たちを受け入れ、英語で答えてくれます。これは外大だからできるキラキラ輝く地域貢献です。このプロジェクトには、市内3~4校の先生方が外大にやって来る大人版もあります。でも、今のところはその程度。私はもっと、神戸に外大があるという環境をどんどん利用してくれればいいと思っています。
―もっとPRして神戸外大の存在を知ってもらって実践できればいいですね。応援しています。

学習・研究活動をサポートする快適な環境が整った神戸外大キャンパス


小学校外国語活動支援の様子


子どもたちに熱心に英語を教える外大生


研究室でインタビューをする小学生たち


小学生を迎え入れ、質問に答える船山学長



神戸市外国語大学
教授 
横田 玲子さん

横田 玲子

神戸市外国語大学
教授 
東京都出身。公立小学校教諭9年勤務の後、渡米。ウェスタンミシガン大学にて修士号、アリゾナ大学にて博士号を取得後帰国。小学校の英語イマージョンプログラム教員を経て、2004年4月より神戸市外国語大学に勤務。児童英語教育、小学校英語教育論等を担当。また神戸市教育委員会と連携して小学校教員のための外国語活動研修を企画・実践している。

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