7月号
里親ケースワーカーの〝ちょっといい お話〟
1962(昭和37)年6月4日付の神戸新聞に、里親探しのコーナー「あなたの愛の手を」が掲載されてから、愛の手運動は今年で50年を迎えました。この間、神戸では約1200人の子どもが里親と出会い、そのうち約63%が、結果的に里親と養子縁組しています。50年間の活動ですから、里子の中には成人し、自分の子どももいる人も多数いますし、孫もできた人もいます。彼らが子どもを大事に育てている姿を見ると、「この運動を続けていてよかった」とつくづく思います。子育てをするときには、知らず知らずのうちに自分を育ててくれた親のことを思い出し、自分が親からしてもらったことを、子どもにもしているようです。
先日、ある女の子から協会に「いつもありがとう」とメッセージがついた花束が届きました。彼女は、自分を育ててくれた里親と養子縁組しましたが、成人したときに里親さんから分厚いファイルとノートを手渡されたそうです。それは自分の成長を記した日記で、学校でのエピソードや、小さな頃描いた絵、思春期にきつい言葉を投げかけてしまったことなど、さまざまなことが書かれていたとか。最初に出会ったきっかけとなった「愛の手運動」の新聞の切り抜きまで残されていたそうで、彼女は「自分がこんなにも大事に育てられたのだ」ということを、本当に実感したといいます。そして、「いろいろな人に支えられて、自分は大人になれた」ということに気づいたのだとも話してくれました。
彼女がお母さんに見せてもらったノートの中には、これまで自分が知らなかった、里親と出会う前の過去のことも書かれていました。親と暮らせず施設に入所した子にはさまざまな事情があります。かつてはそういうことを、子ども自身に告知されることはあまりありませんでした。けれども子どもは自分のルーツを知りたいと思っていますから、近年では、教えられる範囲できちんと知らせるようになっています。そういったことを知る中で、今日、自分があるのは周囲の人たちのおかげだと、子どもたちは実感していくのかもしれません。
お話/米沢普子さん
〈家庭養護促進協会 神戸事務所 ケースワーカー〉
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