9月号
最善の医療で信頼を
医療法人社団 菫会 伊川谷病院
病院長 中尾 守次さん
7月1日、伊川谷病院が新しい建物で新しい病院長を迎えてスタートした。高齢者医療、病気予防と健康維持、救急医療という3つの機能を備え地域医療の新たな担い手をとなることを目指している。
―きれいな病院ですね。
中尾 はい、ホテルのような雰囲気でしょう。受診に来られる皆さんに居心地の良さを感じていただけると思います。神戸で働くのは初めての私をはじめ、職員みんなもこのような環境で仕事ができるのは幸せなことだと感じています。
―伊川谷病院は前の病院当時から乳がんや子宮がんの検査には定評があるようですね。
中尾 以前から婦人科検診には重点を置いていたそうです。新しい体制になってからも、乳がんの検診は医師3人が担当して早期発見に努めています。また乳房手術に関しても、乳がん学会専門医を中心に的確に対応できる体制を整えています。
―健康診断や人間ドックのコースも豊富ですが、これは地域貢献を目指すということですか。
中尾 当病院5階フロアは将来的には総合健康管理センターとして、年間2万件の検査を受け入れられるよう設計されています。とりあえずは年間7千から8千件を目標としています。乳がん検診については、受診可能な施設がこの周辺にはあまりありませんから、既に驚くほど多くの方に利用いただいてます。今後も多くの地域の方に受診していただけると思っています。
―緊急医療体制も組んでいますが、地域にとって心強いです。
中尾 地域医療を担っていく病院には高齢者医療に対応できること、予防医学に対応できる健診施設があること、そしてもう一つ、救急医療が必須項目です。当院も9月から神戸市第2次救急輪番制に参画して西区と垂水区を受け持つことになりました。第2次救急は入院を必要とする救急ですから、対応できるベッド数とある程度広い領域での医師を必要とします。西区には第2次救急を受け入れる病院としては西神戸医療センターがありますが、もう手いっぱいという状態とも聞き及んでおります。そこで、当院の理事長の専門である整形外科を中心にして受け入れを始めようとしています。
―同じく菫会に属する他の病院との連携はあるのですか。
中尾 菫会には、須磨区に北須磨病院、垂水区に名谷病院、中央区に北野坂病院、そして西区に伊川谷病院の4病院があります。同じような規模で、距離も近いですからお互いに医師等の救援体制をとり、助け合っています。特に病院移転の際には施設間で密に連携をとり非常にスムーズに入院患者さんの移送をすることができました。また、入院ベッドの稼働状況や患者さんの住居の関係では便宜が図れるように連携を取っています。救急患者の手術に対応できない場合は他病院にお願いし、術後は戻ってくるという場合もあります。
―菫会が持つ高齢者施設との連携もあるのですか。
中尾 医療施設と介護施設との連携は、これから非常に大切なことだと思っています。入所者さんが夜間などに急に具合が悪くなっても、大病院ではなかなか受け入れてもらえないとうケースがあります。そういう場合、連携している病院があれば安心して毎日の生活を送っていただけるというメリットがあります。
―市立病院長の経歴をお持ちの中尾先生ですが、私立病院長になるにあたってはどのようにお考えですか。
中尾 私は大学卒業後ずっと公的病院で勤めてきました。この度は私立の病院で前任地と同じく病院長という立場で仕事をするにあたり、公・民病院間の違いに大変興味を持っています。患者さんに対する医療については、公立、私立での違いはないでしょうが、前任地でも健全化に努めてきた経営については、私立病院となるとより一層の工夫や知恵が必要ではないかと楽しみにしています。
―先生のご専門、心臓血管外科ではいかがですか。
中尾 高齢化社会になればなるほど、大小問わず血管の疾患が多くなります。心臓や冠動脈、頸部動脈の病気も非常に多いですね。当病院で心臓手術をするわけではありませんが、今までの経験と知識を基に心臓・血管など循環器外科の対象となる症例でのオピニオン役はできると考えています。
―伊川谷病院に循環器外科はありませんね。
中尾 循環器外科は命に直結する高いリスクを伴いますから、複数の医師がいて、その上でチーム医療が必須です。今の段階ではその態勢は取れません。ただし救急で運ばれてきた場合などは、心電図、エコー、CT検査で診断した上で、対処ができる病院へ搬送するなど的確な対応をとるようにしています。
―病院長も診察はされているのですか。
中尾 総合医として、週に3つの枠を持っています。総合的に診断して、必要に応じて当病院内で適切な科へ案内したり、適切な科を持つ他の病院を紹介したりという役目です。
―チーム医療のためにもこれからは医師とともに、看護師の充実も大切ですね。
中尾 医師はもちろんですが、それ以上に看護師さんにはしっかりとしたチームを組んでもらわないことには、医療は前に進みません。ベッド数に応じた看護師数はそろっていますが、今後、救急対応も増えてくることを考えるとまだ増員が必要です。ある程度のステイタスが出来上がっている病院であれば応募も多いでしょうが、当病院はこれから作り上げていかなくていけません。病院のステイタスを高め、医療の質を上げていくために必要なことは教育です。今目指している「器に合った医療の質」を作るためにもやはり教育が重要だと考えています。
―きれいな外観に合った質の高い医療に期待しています。
中尾 守次(なかお もりつぐ)
医療法人社団 菫会 伊川谷病院
病院長
1975年鳥取大学医学部卒業。鳥取大学第二外科入局、8年間の大学研究生活後、1982年兵庫県立姫路循環器病センターにて、心臓血管外科医長として勤務。1988年加東市民病院外科部長、病院長として地域医療に従事。2012年より現職。地域住民の安全・安心そして思いやり医療を職員一同で目指す。