3月号
「つながる」住まいで 新たなライフスタイルの創造を
この冬から春にかけて、三田にモデルハウスを、芦屋にモデルハウスとマンションを新たに手がける平尾工務店。その魅力について、社長の平尾博之さんと、プランニングを担当した平尾真智子さんにお話を伺った。
「つながる」をテーマに
─三田、芦屋のモデルハウスにはどのような特徴がありますか。
平尾博之(以下:平尾) 三田では「つながる」をテーマにIoTやAIスピーカーなどによる自動化を採用し、音声や照明やカーテンを操作できるだけでなく、ソフトバンクのロボット「ペッパー」も配置しています。もちろん、ゼロエネ住宅としての機能にも力を入れています。芦屋では三田のさらに先を見つめ、「つながるライフスタイル」がテーマです。例えば地下室を設けました。それにはさまざまな用途がありますが、どういうような社会とのつながり方で今までとは違う利便性を打ち出すか、それを体験できるようなスペースになれば面白いと思います。もちろん、昔からよくあるオーディオルームやちょっとしたパーティールーム、天井高があるのでゴルフの素振りもできますが、それだけではなく、今後在宅勤務が増えて、会社とつながるなど、新しいライフスタイルが当たり前になるかもしれません。
平尾真智子(以下:真智子) 今回、IoT設備はパナソニックがメインですが、メーカーも住宅のIoT化は模索している段階です。よく言えば先進的に取り組んだ建物ですが、逆に言えば建設中に設備がアップデートしていき、今後より最新の機能を装備することができます。いまは過渡期で進化のスピードが速く、どうしてもそうなってしまいますね。もちろん新しい機能を付加することや、バージョンアップすることも必要で、今がゴールではなく進化に対応していかなければいけないと思います。
平尾 一方で「つながる」にはリスクもあります。例えば、Wi-Fiなどの無線通信の安全性はあまり議論されていません。自分たちが家で使っている電波が漏れないような仕組みをつくらないと、隣や外から家の中の様子が丸見えになってしまいますよね。芦屋の新しいマンションではそのバリアを考えています。無線通信の時代において情報漏洩への対策は大きな課題ですが、その電波が漏れにくく安全性が確保された地下室で、どういうようなライフスタイル、生き方が生まれるのか興味深く思います。
実在のライト建築をモチーフに
─デザインにはどんな特徴がありますか。
平尾 建物のデザインは原点に戻って、フランク・ロイド・ライトの初期の作品、プレイリースタイルの代表作をモチーフにしています。三田はハートレイ邸、芦屋はメイ邸がモデルです。
真智子 これまでのオーガニックハウスのシリーズは、ライトの思想を採り入れて日本風にアレンジしたり、ライトの愛弟子のジョン・ラッタンバリー氏がデザインしたりと、現存するライトの作品のデザインに近いものは少なかったんですね。今回は可能な限り現存する建物の一番良いところを敢えて採用しています。そのあたりがこれまでとは少し違うスタンスです。
平尾 芦屋はまさにライトの名作、ヨドコウ迎賓館(旧山邑邸)の近くですから、外観デザインは特に心を砕きました。もちろん、周りの環境との調和を考えてプランニングしています。マンションはいま明治村で保存されている帝国ホテルがモデルで、ほぼ同じ色合いの櫛目引きタイルを使用していますので、日本の風土に合う土の肌合いを感じるでしょう。モデルハウスも櫛目のレンガを使っていますので、違和感なく受け入れてもらえるのではないでしょうか。景観の一体感という面でまちづくりに馴染むと思います。
生活提案型へシフトを
─今後、オーガニックハウスを阪神間にどのように広めていきたいですか。
平尾 日本の中でも東灘から芦屋、西宮にかけてはライトの建築に馴染みが深いエリアです。そういうところに拠点が出来たので、少しずつこの地域に浸透していきたいですね。
─どのような方にご覧いただきたいですか。
平尾 ライトのデザインがご自身の感性に響くという方に来ていただきたいですね。また、昔から「体にやさしい」をコンセプトに自然素材を多用しているので、お医者さんからも高く評価していただいています。
─お客様にはどのようなところを見ていただきたいですか。
真智子 設備的な面では、家の中でさまざまなことができるというのを体感していただきたいですね。話すことで操作ができることはご高齢の方や体が不自由な方に対するサポートにもなるでしょう。デザイン的には他のモデルハウスと合わせて、バリエーションのひとつとしてご覧いただければと思います。今回はどちらかというと男性的な外観ですが、中に入るとエレガントさがあるんですよ。ですから一歩入っていただいて、そのギャップを楽しんでいただきたいですね。三田ではインナーガレージを採用していますが、内側からも愛車が見えるプランニングです。そんな新しい提案も、お好きな方には面白いのではないでしょうか。
─平尾工務店の住まいは今後どのように変わっていくのでしょうか。
平尾 住むための箱を提供する時代から、室内の空間での暮らし方を提案する方向へとはっきり舵を切らなければいけないと思います。そのためにも家が外とどうつながるかを提案しなければいけない。家電製品やネットワーク機器は日進月歩ですし、時代のテンポそのものも速いので、難しいかもしれませんが、その流れに対応できるようにしないといけないと思います。逆に建物は、古き佳きの中に人間の原点を感じていただけるようにしたい。フォルムや室内の雰囲気を感性で「ああ、いいな」と感じていただきながら、いまの時代の生活スタイルを実現できるようなしつらえをしていかないと、これからのニーズにお応えすることができないと思うので、一歩先を見つめて住まいを提案していきます。そのためにも常に時代の流れを推測しながら、「自分ならこうしたいな」というイメージを持っていたいですね。