2019年
3月号

神戸鉄人伝 第111回 芦屋大学名誉教授・インテリアデザイナー 小宮 容一(こみや よういち)さん

カテゴリ:絵画

剪画・文
とみさわかよの

くっきりとした色合い、凹凸のある画面。躍るように配されるのは図形、時には魚や鳥だったりします。小宮容一さんは今、自己表現・自己実現としての絵画に力を注いでいます。小宮さんは高度成長期時代に、店舗やインテリアなどの様々なデザインを手掛けてきました。「そろそろデザインから離れ、絵に戻ろうと思います」とおっしゃる小宮さんにお話をうかがいました。

―最初は絵画を志しておられたのでしょうか。
高校時代は美術部所属で、美術大学へ進学して洋画を学ぶつもりでしたが、実際は工芸科デザイン専攻へ進みました。卒業後はインダストリアルデザイン事務所に勤め、前回の大阪万博ではストリートファニチュアや道路・駐車場施設などの仕事にも関わりました。高度成長期のデザイン業界は華々しく、まさに時代の最先端でしたね。どっぷりデザインの世界に浸かり、絵画からは遠ざかってしまいました。

―教員として、後進の指導にもあたられてきました。
独立してからは店舗設計の仕事が主でした。その仕事内容を『インテリア構成材』という本にまとめたところ、あちこちから講師を頼まれるようになります。もともと教育には興味があったので芦屋大学に腰を落ち着け、自分の知るノウハウを若い人たちに教えてきました。2025年に再び大阪・関西万博が開催されますが、前回の万博に関わった人間として、次の世代に仕事をつなぐことができれば嬉しいですね。

―万博が果たす役割は何なのでしょう。
次の万博は高齢化という世界的な課題、そして医療・科学の発展を表現することが使命となるでしょうね。万博では誰もが未来志向のものを作りますから、それをきっかけにあらゆる技術が発達する。前回の万博を見た子どもたちは、宇宙飛行士になりたい、斬新な建物をデザインしたい、新しい都市を創造したい…と夢を抱いたはず。万博を見てクリエイターを志し、ポートピア博覧会で夢を実践した人もいるかもしれない。実際こういったイベントを契機に人々の生活は向上し、生活空間である都市は飛躍的な発展を遂げてきたのです。

―前回万博から約50年経った神戸のまちには、何が必要だと思われますか。
神戸に育った者として、先人が造った建物やまちなみを残す必要性を感じています。ヨーロッパでは、遺跡や古い建築が観光資源になっている。神戸の近代建築もまた未来へ継承すべき資産、大切な資源です。特にこれからは、全世界的な様式より地域特有のスタイルが尊重されるでしょうから、壊してしまわないで残す方法を考えて欲しい。スクラップ・アンド・ビルドではない、新しい価値観を持ったデザイナーによる設計が待たれます。

―これから求められるデザイナーとは?
20世紀はデザインが分化していった時代。グラフィックデザイナー、ファッションデザイナー、建築デザイナーといった様々な専門家が現れた。21世紀に求められるのは、ミケランジェロのような総合デザイナー。PCというツールに任せるところは任せて、哲学を持ってトータルディレクションできる人材が必要とされるでしょう。

―ご自身は、今後は絵画に専念なさるとのことですが…。
デザインはクライアントの条件、法律の条件などの中ですばらしいものを生み出さねばならない。対してアートは自分の思い、自分の世界をそのまま表現する。そこに戻りたいですね。もちろん手慰みでなく、真摯に自己を表現する「自己実現」の人生にしたいと思っています。(2019年2月1日取材)

制作に励みながらも、自ら運営するギャラリーを若い人たちが発表の場にしてくれたらと、教育者の一面も覗かせる小宮さんでした。

「なぜイタリア人は造形力があるか?」と小宮さん。「彼らは有形無形の文化をミュージアムで見るのではなく、正にその中で生活している。街中に芸術作品があるから、感性が培われるのです」

とみさわ かよの

神戸のまちとそこに生きる人々を剪画(切り絵)で描き続けている。平成25年度神戸市文化奨励賞、平成25年度半どんの会及川記念芸術文化奨励賞受賞。神戸市出身・在住。日本剪画協会会員・認定講師、神戸芸術文化会議会員、神戸新聞文化センター講師。

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