4月号
里親ケースワーカーの 〝ちょっといい お話〟
「映画に見る里親と子どもの人権」
神戸映画サークル協議会が主催する「市民映画劇場」で、ここ数ヶ月の間で私が見た映画の中から、とても考えさせられる作品がありましたのでご紹介します。
『少年と自転車』という作品は、2011年のベルギー・フランス・イタリア映画です。父親と暮らすことを強く望みながら、それができずに施設で暮らす子どもと、ある大人との交流を描いた作品で、これは、監督が日本に来たときに、施設で暮らす子どもが、毎日屋根の上で両親が迎えに来るのを待っていたという実話を聞いたことから作られたそうです。当協会でも、週末や夏休みなどに子どもを家に迎える「週末里親」や「季節里親」を募集しています。子どもが成長していく上で、自分に寄り添って支えてくれる存在は必要不可欠であり、それは実の親ではなくても、週末だけ交流する里親であっても本当に必要な存在なのです。多くの子どもたちが、里親との交流を通じて、さまざまなことを学び、成長しています。
『オレンジと太陽』というイギリス・オーストラリア映画は、実際に起きた問題を題材としています。1970年代まで、イギリス政府は、親と暮らせない子どもたちを大量にオーストラリアに移民させていました。中には親が死んだり、養子に迎えられると嘘を信じて海を渡った子どもたちもおり、彼らを待っていたのは、過酷な労働だったのです。映画公開時の2009年~2010年、イギリス・オーストラリアの首相がこの事実を認め、正式に謝罪しましたが、この「児童移民」の真実を明らかにした実在の女性を描いたのが、この映画です。ほんの最近までこのような政策が、福祉国家と考えられているイギリスで行われていたことにショックを受けました。
このような映画は、社会の良心ともいうべき作品だと思います。
お話/橋本 明さん
〈家庭養護促進協会 事務局長〉
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