7月号
お薬で健康づくりのお手伝い
兵庫県薬剤師会
会長 赤松 路子さん
〝町の薬局〟の薬剤師さんは私たちにとって身近な存在。その役割やこれから目指すところなど、兵庫県薬剤師会の赤松会長にお聞きした。
―会員はどんな方が何名いますか。
赤松 現在会員数6651名で、最も多いのは薬局、病院に勤めている薬剤師です。行政機関や、医薬品卸・製薬企業に勤めている、また家庭に入っている場合でも薬剤師であれば誰でも会員になれます。
―最近は白衣を着て「薬剤師○○」という名札を付けているので安心感がありますね。
赤松 以前から薬剤師は白衣を着ていたのですが、ほかの店員さんも着るようになり紛らわしいということで、平成21年から薬事法で薬剤師だけが白衣を着るように徹底されました。
―薬局とドラッグストアの違いは。
赤松 「薬局」は調剤をするところで、他の医薬品も販売できます。「調剤薬局」「処方箋薬局」などという言葉もありますが、本来薬局は処方箋に沿って調剤をするところですから、私はあまり好ましくないと思っています。一方、ドラッグストア等の「店舗販売業」ではOTC医薬品を扱い、価格設定も各店で自由です。調剤はできませんので「薬局」と名づけることはできません。
―在宅介護相談薬局とは。
赤松 平成12年、介護保険制度が導入された当時、詳細がどういうものなのかよく分からないという方も多く、薬剤師が直接相談を受けるだけでなく、介護に関してどこへ相談に行けばよいかをアドバイスしていました。介護保険が浸透してきた今では、当初ほど機能していません。現在は各地域の診療所やケアマネージャーさんからの依頼を受け、在宅介護の服薬指導などを行い、医薬連携を目指してシステムを整えつつあるところです。
かかりつけ薬局の、かかりつけ薬剤師を持とう
―薬の正しい使い方の基本は。
赤松 基本的に「薬は危ないもの」として対応していただきたいと思います。妊婦や高齢の方、子供さんなどはそれぞれに特徴ある副作用が出てきます。特に妊婦さんは「薬は飲まない」。「どうしても」という場合は必ず相談すること。また高齢の方は薬を代謝する力が落ちていますからぜひ相談して下さい。
―最近よく耳にするジェネリック医薬品とは。
赤松 最初に開発された薬の特許が切れてから作られる薬ですので価格は安くできます。厚生労働省が認可したジェネリックに関しては、効能効果は変わりません。添加物などが違う場合はそれに対するアレルギー情報等をもとに薬剤師がアドバイスします。服用する人にとっては効果が同じで安いというメリットがあり、国にとっては医療費の削減にもなるものです。
―病院で大量の薬を処方されることがありますが…。
赤松 ドクターが病気を治そうと考えて処方されているものですから、基本的に全て飲み切っていただかなくてはいけないものです。ただし、ドクターには聞きにくいということがあれば、薬剤師に相談して下さい。また複数の受診科から薬を処方され重複した場合、相互作用もありますから必ず相談して下さい。
―薬剤師会には「薬事情報センター」という窓口もありますね。
赤松 相談いただいた時に服用している薬については対応できます。でも向き合って一人ひとりの普段の生活状況などの背景を把握してもらえる、かかりつけ薬局を持って、かかりつけ薬剤師に日頃から相談できるようにしていただくのが理想的です。薬剤師会でも、地域でそれぞれの薬局が最初の相談窓口になることを目標にしています。
薬剤師に必要なのは、人に対する思いやり
―赤松会長は、伝統ある武庫川女子大学薬学部のご出身ですが、なぜ薬学部へ。
赤松 私の父は薬局をやっていました。早くに亡くなりましたので跡を継がなくてはならず、高校生の時には薬学部を受けることを決めていました。小さい時から雰囲気には慣れていましたので違和感なく入れました。
―学びの場としての武庫川女子大はどうでしたか。
赤松 私の時代は、武庫川女子大の中でも薬学部がぽつんと離れていましたので女性だけで自由な雰囲気で学べました。
―印象に残っている思い出は。
赤松 高校生みたいですが、学年そろっての修学旅行があり、北海道を10日間で回りました。楽しかった思い出です。
―これから薬剤師を目指す人に対して望むことは。
赤松 昔は薬剤師といえば、病院や薬局の中で調剤だけやっていればよかったのですが、今は人とのコミュニケーションがとても大切です。勉強ができて偏差値が高いだけでは難しく、ドクターや看護師と同じように、人に対する思いやりを持てる人でなければできない職業だと思います。
―医療の進歩に伴って新しい知識もどんどん取り入れていかなくてはいけませんね。
赤松 薬剤師はとても自分を磨こうという意識が高く、勉強熱心です。薬剤師会でも研修会を開催していますが、多くの会員が参加しています。
―薬剤師も不足しているのですか。
赤松 はい。看護師と同じく女性が多い職業ですので子育てで離れ、復帰できないケースが多いですね。復帰に際しての不安を取り除く対策が薬剤師会としても必要だと考えています。
―今後、薬剤師会が目指す方向は。
赤松 相談すればお薬のことは全て方向性を決め、健康を全般的に考えてくれる「町の薬局」という原点に戻りたいと考えています。もちろん医療の高度化に伴い専門的な薬剤師も必要になってきていますが、医療においての総合医のような役目を担う薬剤師も必要だと思っています。
―会長ご自身の健康の秘訣は。
赤松 大切なことはひとつ。いつも笑顔でニコニコ!
―サプリメントや健康食品を食べる前に、まずはニコニコですね。ありがとうございました。
赤松 路子(あかまつ みちこ)
兵庫県薬剤師会 会長
1968年、武庫川女子大学薬学部卒業。住吉赤壁薬局を経営。1978年より東灘区薬剤師会理事・会長、神戸市薬剤師会副会長・会長、兵庫県薬剤師会理事・常務理事を経て、2012年より兵庫県薬剤師会会長に就任。現在に至る。