10月号
神戸のカクシボタン 第十回
写真/文 岡 力
「住宅地の埋蔵金スポット」
「脈絡ないねんけど」と友人から引っ越し祝いにダウジングセットを貰った。確かに日常生活で使いようのない代物だが折角なので説明書に目を通す。「ダウジングとは、簡単な器具を用いて知識や見た目ではわからないものを探し出す事の意」と書いてある。「脈絡あるやん・・・」できれば物件探しの段階で欲しかった。
ダウジングと聞いて思い出すのが埋蔵金ブーム。水曜スペシャルが終息した1990年代に今をときめくコピーライター糸井重里氏がテレビ番組の企画で徳川埋蔵金発掘プロジェクトを発足した。毎回、「とうとう見つかった!?」と番宣で煽るも騙され続けた世代でもある。ふと、気になり神戸エリアで埋蔵金の話が転がっていないか調べてみる事にした。すると古書専門店で見つけた文献に面白い記事を発見した。芦屋市にある金津山古墳には、金1000枚、黄金瓦1000枚が眠ると書かれてある。早速、現場へ向かった。阪神電鉄打出駅より歩くこと数分。目の前に全長55mを誇る大きな古墳が姿を現した。(※前方部は、中世に田んぼ造成の為、削り取られている)こんな住宅地の真ん中に埋蔵金が眠るとは驚きである。住民に気付かれないようおそるおそる接近。すると一枚の看板が視界に入る。そこには、「昔々打出の村人を愛した阿呆親王が万一の飢饉に備えて財宝をこの塚に埋めたという伝説があります」(出所・芦屋市教育委員会)と書かれてある。「しもた・・・既にバレバレや」しかも周囲は、フェンスで囲われており進入できない状態。ここで捜査は打ち切りである。念のため市の方にお話を伺うとこれまで何度も発掘調査を行ったが埴輪などが出土するだけで埋蔵金は出てきていないとの事。金網越しに覗く小高い墳丘を睨みながら唇を噛みしめる。地元では、この古墳を金塚・黄金塚と呼んでおり縁起のよいスポットとして親しまれている。
金津山古墳
芦屋市春日町3番
阪神電鉄打出駅徒歩2分
岡力(おか りき)コラムニスト
ふるさとが神戸市垂水区。著書「アホと呼ばれた’80S」「噂の内股シェフ」「関西トラウマ図鑑」連載「大阪ロマン紀行」(大阪日日新聞)
出演「おちゃのこSaiSai」(J:COMチャンネル)
「oh!二度漬けラジオ」(YES-fm)