1月号
新春インタビュー | 市民や団体、企業、行政が連携し、 地域協働でつくり上げる持続可能なまち・神戸
未来に向けてどんどん動き始めた神戸のまち。中心部と郊外のあちらこちらにその姿が見えてきました。2024年、新たにどんなことが始まるのでしょうか。久元喜造神戸市長にお話を伺いました。
―2023年を振り返って、感想をお聞かせください。
良い一年だったと思います。5月8日にコロナが2類から5類感染症に移行して、まちが賑やかになりました。スポーツでも盛り上がり、明るい一年になりましたね。阪神タイガースとオリックス・バファローズ、ヴィッセル神戸の優勝がありました。年末にはコベルコ神戸スティーラーズの選手の皆さんが訪ねて来てくださり「来年は必ず優勝します」と力強い言葉を聞かせていただきました。
―市内各地でさまざまなプロジェクトが進行していますね。
神戸は中心部にタワーマンションが林立し、他の地域は寂れていくようなまちになってはいけません。三宮駅前の新たな中・長距離バスターミナル、三宮クロススクエア、市役所本庁舎2号館、ウォーターフロントなどの整備を進め、中心部はたくさんの方に来ていただきグルメやショッピング、芸術・文化を楽しんでいただけるエリアにします。今後は神戸、新神戸、新長田、郊外では垂水、西神中央、名谷、鈴蘭台、岡場など各駅周辺もどんどん変わっていきます。「中心部と郊外がバランスよく発展し、全体が持続可能なまちへと発展していく」という一貫したまちづくりの基本方針が具現化し始めています。
―神戸ルミナリエの4年ぶり、初の1月開催から2024年は始まりますね。
震災犠牲者への鎮魂の思いが込められている神戸ルミナリエは1月に実施するのが本来の姿だと思います。メリケンパークに予約制で有料ゾーンを設け、観覧者の集中を抑制し、師走の時期に旧居留地・元町周辺の商業施設に与える影響をできるだけ軽減します。結果を検証して、震災30年を迎える2025年ルミナリエ実施計画に反映させようとしています。
―中央区ではポートタワーがいよいよリニューアルオープン。北野工房のまちも新しくなるのですか。
ポートタワーが開業した1963年11月、神戸の風景が大きく変わり新しい時代の到来を感じたことを私も記憶しています。以来60年、神戸のシンボルとしての役目を果たしてきましたがかなり施設の老朽化が進み、耐震対策を強化してリニューアルに至りました。昭和レトロな懐かしい雰囲気があるとはいえ、より多くの方に来て楽しんでいただくには時代遅れの感も否めませんでした。そこで展望台、飲食、物販施設すべての運営を民間企業に任せて、クリエイティブな発想で趣向を凝らしたリニューアルオープンを予定しています。どんなものが出現するのか?楽しみです。
北野工房のまちもより多くの方々に楽しんでいただくためには新しい発想が必要ではないかと運営する民間企業を公募しました。観光の方だけではなく地元の方にも楽しんでいただける施設として雰囲気を一新します。
―5月には須磨区の総合運動公園ユニバー記念競技場で世界パラ陸上開催もありますね。
国内はもちろん、東アジア初の開催です。約100の国と地域から約1300人のパラアスリートが集まります。東京パラリンピックが無観客でしたからこの大会は間近に競技を見られる良い機会です。特に子どもたちが観戦して、パラスポーツの魅力を感じてもらえたらいいですね。
―続いて6月には「神戸須磨シーワールド」がオープンするなど、須磨はますます賑わいそうですね。
市役所前から市街地を抜ける神戸マラソンの大きな魅力の一つが、神戸の魅力を代表する須磨や垂水の海岸沿いのコースです。須磨海浜公園は既にリニューアルされ、レストランもオープンして多くのお客さんで賑わっているようですね。老朽化した水族館は民間企業による運営で「神戸須磨シーワールド」としてオープンします。神戸の新たな人気スポットになりそうです。
―インバウンドのお客さんに神戸のまちも楽しんでいただくためには?
神戸市民が普段着で楽しんでいるライフスタイルをそのまま提供してありのままの神戸を楽しんでいただくのが神戸観光だと私は考えています。気持ちよく滞在できるようにWi-Fi環境や歩道の整備、ナイトタイムの観光や楽しみ方を地道に整えていき、「宿泊してゆっくり時間を過ごしたい」と思っていただけるまちにしたいと思っています。
―昨年10月、マイクロソフト社の拠点が神戸に開設されたのは大きなニュースになりましたね。
世界で6カ所目、上海に次ぐアジアの拠点として神戸に開設されたMicrosoft AI Co-Innovation Labです。神戸市シリコンバレーオフィスの職員が現地で活動する中で情報をキャッチし、一方、神戸を代表する企業である川崎重工さんのマイクロソフト社との連携を強めていく意向もあり、産官連携で実現しました。マイクロソフト社のさまざまなテクノロジーを活用して新たなサービスやアプリを開発する拠点です。大企業やスタートアップの皆さん、ものづくり企業など経済界をはじめ学界からも大きな期待が寄せられています。
―神戸市が注力する水素エネルギー事業の進捗状況をご紹介ください。
海外や国内で作られた水素エネルギーを貯蔵、運搬、消費する一連のサイクルにはさまざまな機器や部品などが必要です。中小企業を含めた神戸のものづくり企業が参入するチャンスであり、水素分野への参入を目指す企業グループや研究開発プロジェクトが立ち上げられています。神戸市もこの動きを支援し、ビジネスマッチングなどにつなげる取り組みを進めていきます。また港湾で使われている化石燃料を再生可能エネルギーや水素エネルギーへと移行していきます。タイヤ式門型クレーンといった港湾荷役機械の動力源についても、燃料電池といった、水素を使えるものへと移行する準備を進めています。さらに、港に停泊する船舶に向けて送電する陸電供給を本格的に開始しています。
―2024年、特に力を入れようとしている取り組みをお聞かせください。
神戸市は非常に幅広い行政を進めています。地域の課題を解決し、街を活性化させるには、NPOや地域団体、大学、企業などの方々の参画が必要です。市民一人一人の参画はもちろんですが、市民が参加して地域のために活動する団体が連携しながら、まちづくりや経済活性化、行政に参画する「地域協働」の推進により一層力を入れていきたいと考えています。