4月号
兵庫津ミュージアムで贈呈式
宝塚市の藤井千代さんが
湊川に関する貴重な資料を寄贈
一昨年のオープンからわずか1年4か月で来館者10万人を達成した人気スポット、兵庫県立兵庫津ミュージアムで3月11日、湊川に関する歴史的資料の寄贈に対し感謝状の贈呈式がおこなわれた。
その資料とは明治30年代に湊川の流路変更を手がけた湊川改修株式会社の仮株券35枚で、寄贈したのは宝塚市の藤井千代さん。当日は勝海舟の書の〝サプライズ寄贈〟もあった。
式典では兵庫県地域振興課長の山北貴子さんから藤井さんに感謝状が贈呈されたが、それに先だち、兵庫津ミュージアム名誉館長の田辺眞人先生がその経緯を紹介。先生が自宅近くの高齢者施設、サンシティ宝塚で歴史講座を開講し、たまたま湊川隧道の講義をしたところ藤井さんから声をかけられ、実は曾祖父が湊川改修株式会社の初代社長の藤井一郎で、当時の株券を持っているが相続する人がいないのでどうしたら良いかと相談を受けたことが寄贈のきっかけになったという。
寄贈された仮株券は、兵庫津ミュージアムひょうごはじまり館2階企画展示室で開催しているミニ企画展「神戸・湊川改修と藤井一郎」で展示中(4月9日まで・入場無料)。湊川はかつて、現在のハーバーランドの南側で海に注いでいたが、天井川で洪水が多く、土砂で港の水深が浅くなってしまうことから、会下山の下に湊川隧道を掘って長田へと流路を変更し、旧河川跡は日本屈指の歓楽街として栄えた新開地となった。このプロジェクトを実行した湊川改修株式会社の発起人には、神戸屈指の実業家の小曽根喜一郎、藤田財閥の藤田伝三郎、大成建設や帝国ホテルなどを創業し「大倉山」の地名の由来にもなった大倉喜八郎らが名を連ねている。
なお、湊川隧道は阪神・淡路大震災で被災、新たに建設された新湊川トンネルにバトンを渡したが、田辺先生の提案により保存・活用され、現在は国の登録有形文化財にもなっている。
また、この日寄贈された書は「耕讀伝家 藤井一郎兄嘱 海舟」と書かれた明治30年前後の作と推定されるもので、藤井一郎と勝海舟の親密さをうかがわせる。
今回が兵庫津ミュージアムの寄贈第1号となったが、収蔵品充実のため今後も寄贈を受け付けるとのこと。もしご自宅などに兵庫県の歴史や文化に関する貴重な資料があれば、ぜひ寄贈を。