4月号
harmony(はーもにぃ) Vol.50 抱え込まないノーリフトケアとは?
介護施設や病院で介助者の腰痛による離職、休職、労災申請は後を絶ちません。
それは抱え込む介助する側の身体への負担は避けられないからです。なんとかこの状態を改善できないかという取り組みの一つが、「介助をされる人の移乗を介護者が抱え込まずにリフトなどの福祉用具を使うこと」です。
このリフトを使った移乗の介助方法をオーストラリアに留学中に知った看護師の保田淳子さんは日本に帰国後、2009年に神戸に「日本ノーリフト協会」を立ち上げました。
ノーリフトを導入する前にはオーストラリアのビクトリア州で110件あった腰痛の労災申請は、導入後1年で68件に減り、費用対効果は66%の削減でした。患者側にも皮膚損傷、不快感、転倒転落の危険が減り、寝たきりによる合併症の予防になると言ったメリットが報告されているそうです。
しかし、保田さんが日本で立ち上げたころはまだ福祉用具が移乗に使用されているところは少なく、ノーリフトについての理解も余りありませんでした。そこで理解を広めるために東京大学と協働でオーストラリアのプログラムを参考にして「日本版ノーリフトケアコーディネーター養成講座」を始め、腰痛予防対策を科学的に研究し、人材の育成や意識改革に取り組みました。2017年からは「腰痛予防対策指針全国セミナー」を全国47都道府県で開催。2020年には神戸で海外からも講師を招き、「ノーリフトケア2020国際シンポジウム」を開催。ノーリフトの活動は少しずつ拡がり、支部も北海道から九州まで9箇所に増えました。ノーリフトケアの理念や実践が拡がれば、腰痛による求職者や退職者が減り、人材不足の解消、働きやすい環境作りにもつながっていきます。同時にケアの質や、要介護者の自立への意識も高まり、日本のケアの文化も変わっていくことが期待されます。
■ノーリフトケアについてのお問い合わせ
一般社団法人 日本ノーリフト協会
神戸市兵庫区駅南通5-1-2 健康ライフプラザ5階
TEL.078-862-8503
FAX.078-862-8508
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