2021年
12月号
兵庫県医師会広報委員 やすお神経内科クリニック院長 安尾 健作 先生

兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第126回

カテゴリ:医療関係, 神戸

明石市民フォーラム「どうする?あなたの看取り PART5」について

─明石市民フォーラムは今年で23回目を迎えたそうですね。
安尾 昨年はコロナ禍の影響で開催できませんでしたが、今年は2年ぶりに10月2日、明石市民会館で開催しました。このような状況にもかかわらず多くの方々にご来場頂き感謝申し上げるとともに、市民のみなさまの関心の高さを感じました。

─どのようなテーマでしたか。
安尾 「どうする?あなたの看取りPART5」と題し、前回に続き看取りについて考えていきました。特に今回は「延命処置しますか?」というサブタイトルで、ACPとDNARに焦点を当てました。

─ACPとは何ですか。
安尾 Advance Care Planningの略で、厚生労働省では「人生会議」という呼び名を提唱しています。もしものときにどうするか、人生の最終段階で自身が望む医療やケアについて前もって家族や医療・介護担当者と繰り返し話し合って、その希望を共有することです。

─DNARとは何ですか。
安尾 Do Not Attempt Resuscitationの略で、助からない状態の時に、自身や家族の意思決定をうけて心肺蘇生などの延命措置をおこなわないことをいいます。

─フォーラムはどのようなプログラムでしたか。
安尾 まず第1部で須磨寺副住職の小池陽人さんに基調講演として「死を考えることは、生を考えること」と題してお話し頂きました。第2部では明石市医師会広報委員会制作の紙芝居により具体的な事例を紹介し、それを受けて第3部でシンポジウムをおこないました。

─第1部の基調講演はどのような内容でしたか。
安尾 生活の場から死が遠ざかっているのではという指摘からお話がスタートし、終活を考える際に「迷惑をかけたくない」と考えることが多いが、そこには「自分で何でも決めたい」という一種のエゴが含まれるのではないか?と疑問を呈した上で、人生会議のように密な話し合いが一番大事な終活であると語られました。「諸法無我」、つまりそれ単体で存在しているものは何一つなく、自分の命も自分だけのものではない。また、迷惑をかけないことは美徳ではなく、迷惑をかけるものだと悟ることが大事である。ゆえに、子や孫に頼ることは決して迷惑ではなく、何でも話してみることが重要だという意見は、私もハッとさせられましたね。また、死とは本来、明確な線引きがなく曖昧なもので、死に幅を持たせ、看病の時間や中陰・供養の時間は関係性を深める大切な時間ととらえるべきではという視点もなるほどと思いました。ほかにも「人生は手遅れの繰り返し」や「役に立つにとらわれない」など、心に響くことばがありました。

─第2部の紙芝居ではどのような事例が示されましたか。
安尾 事例①はDNARを主題に、本人と息子で自宅で看取るとDNARを決めていたが、そのことを知らない甥がたまたま倒れているところに遭遇し119番通報。救急隊が心肺蘇生に着手したが、かかりつけ医が来て本人の意志に沿った対応になったという例です。事例②はACPの例として、一人暮らしの母の状態が急変し、近所の人の通報で病院に搬送されて2ヶ月間人工呼吸で延命し、娘はつきっきりで看病して母との貴重な最期の時間を過ごすことができたが、亡くなったあと遺品整理で「延命しない」と書かれたノートが出てきたというストーリーでした。

─第3部はシンポジウムでしたね。
安尾 明石市医師会広報委員会委員長の石田義裕先生が座長で、基調講演をおこなった小池さん、在宅医療の立場から明石市医師会副会長の鈴木光太郎先生、介護の立場から地域総合支援センター所長の赤松みどりさん、救急の立場から明石市消防局の岡松伸一さんに登壇いただきました。まずは石田先生から会場のみなさまに延命治療希望を訊ねたところゼロ、終末の意思表示をきっちりしているかという質問には半数近くの方が挙手されました。第2部の事例①に関して、岡松さんによると明石市でもDNARの情報共有ができていない例が年間15件くらいあり、心肺蘇生後に判明するケースがほとんどだそうです。また、救急隊は通報があれば蘇生・搬送が原則だが、原則か意思尊重かで葛藤があると吐露していました。医師の指示書が心肺蘇生中止の唯一の方法で、指示書を冷蔵庫など目立つ場所に貼っておくと対応しやすいとのことです。

─赤松さんや鈴木先生はどのようなお話でしたか。
安尾 赤松さんからは事例②に関し、医療や介護が必要となってからでなく、比較的元気なときに本人の思いをきちんと家族に伝えて話し合っておくことが理想であり、そのタイミングは難しいが、生活の転機である入院や施設への入居時が確認しやすいというアドバイスがありました。また、明石市では看取り支援をおこなっており、「あなたの思いをお聞かせください」というシートを用意しているので活用してほしいとのことでした。鈴木先生はコロナの流行で、入院すると亡くなるまで面会できなくなったことから、自宅で看取りをする人が増えたと報告。また、日本ではACPが受け入れられにくいが、人間は必ず死に、看取りは深刻ではないので、死を忌むものと考えず元気なうちに自分の意見をとよびかけました。

─小池さんはどのようなお話をされましたか。
安尾 「人間は死に続けている」、つまり同じ自分は一時もなく、その真理を見つめることで生が浮き上がってくるので、最終的には「いまをどう生きていくか」に尽きると締めていただきました。なお、今回のフォーラムの動画は明石市医師会のホームページで公開します。動画では小池さんの講演をノーカットで視聴でき、パネリストのみなさんの「自身の最期はどうありたいか」というお話も聴けます。ぜひご覧ください。

「死を考えることは、生を考えること」と題して
基調講演をおこなった、須磨寺副住職の小池陽人さん

第2部では、DNARの具体例を紙芝居で紹介

第3部のシンポジウムでは、明石市医師会広報委員会委員長の石田義裕先生、基調講演をおこなった小池さん、明石市医師会副会長の鈴木光太郎先生、地域総合支援センター所長の赤松みどりさん、明石市消防局の岡松伸一さんが登壇

兵庫県医師会広報委員
やすお脳神経外科クリニック院長
安尾 健作 先生

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