5月号
神戸で始まって 神戸で終る ⑯
王子動物園と道路を挟んだ所に兵庫県立近代美術館があった。日本で最初の近代美術館は神奈川県立近代美術館で、次いで二番目が兵庫県立近代美術館であった。この美術館の設計は、日本建築学会会長を務めた村野藤吾による歴史的建造物でもある。
しかし近年、各地に美術館建造ラッシュが起こり、兵庫県にももっと大きい美術館が必要になって、海岸に面した中央区脇浜海岸通に安藤忠雄デザインによる新美術館、兵庫県立美術館が設立されることになった。この美術館がオープンしたのは2002年で、現在は神戸の新名所のひとつになっている。
1997年に兵庫県立近代美術館での個展のあと、全国各地での美術館での個展が目白押しに集中し始めたが、2008年に再び神戸で2度目の個展が開催されることになった。新しく出来た兵庫県立美術館での個展「冒険王」の開催である。この「冒険王」展は、世田谷美術館の酒井忠康館長の発案で、以前酒井館長が神奈川県立近代美術館長時代に行われた僕の個展時に、次は「冒険」を主題にしたもっと本格的な個展をしたいとおっしゃっていたが、世田谷美術館に移られて、ここで、その計画が実現したのである。酒井館長の長年の構想により兵庫県立美術館への巡回が決まった。「冒険王」展というネーミングは酒井館長の命名で、僕の少年時代の「血湧き肉躍る」冒険心をいやが上にも掻き立てられた。
美術家 横尾 忠則
プロフィール
よこおただのり 美術家。 1936年兵庫県生まれ。ニューヨーク近代美術館、パリのカルティエ財団現代美術館など世界各国で個展を開催。旭日小綬章、朝日賞、高松宮殿下記念世界文化賞、小説「ぶるうらんど」で泉鏡花文学賞、「言葉を離れる」で講談社エッセイ賞受賞。横尾忠則現代美術館にて「Curators in Panic ~横尾忠則展 学芸員危機一髪」開催中。8月22日まで。
http://www.tadanoriyokoo.com