2020年
8月号
8月号
神戸偉人伝外伝 ~知られざる偉業~④横溝正史後編
ミステリー界に刻みつけた横溝正史の創作魂
薬剤師、行員の経験生かし
ミステリー作品の着想の多くを、故郷・神戸や疎開先の岡山から得ていた作家、横溝正史。探偵、金田一耕助が登場するロングセラー「悪魔が来りて笛を吹く」では神戸をはじめ、淡路島など兵庫の地名が随所に登場する。
1979年、俳優の西田敏行が金田一を演じ、映画化されたときのポスターは衝撃的だった。金田一の後ろに写り込む、フルートを持った耳の大きな悪魔の姿を見て震えたのは子供たちだけではなかったはずだ。
宝石店「天銀堂」で店員10人が何者かに毒殺され、宝石が奪われる事件が起こり、容疑者の椿元子爵が姿を消す…というストーリー。
〈神戸も戦災がひどくて、須磨のあたりも大部分焼きはらわれているが、須磨寺を中心として、わずかばかり焼けのこったこのあたりのたたずまいが、折りからそぼ降る秋雨のなかに、辛うじて古風な時代の昔をたもっている…〉
これは、金田一が容疑者のアリバイを調べるために、刑事と一緒に須磨寺近くの宿に泊まったときの描写だ。
=次回は嘉納治五郎
戸津井康之