7月号
ノースウッズに魅せられて Vol.12
ベリーの季節
ブルーベリー、ラズベリー、ストロベリー、そしてジューンベリー…。7月の半ばともなると、森の至る所で様々な野生のベリーが実る。
中でもブルーベリーは収穫量も多く、パイやジャムにしたり、凍らせてヨーグルトやパンケーキに入れたりと、一年を通して楽しませてくれる、まさに自然の恵みである。
北国の夏の一日は長く、21時をすぎてもまだ明るい。太陽の光に溢れ、生命力に満ちた季節だが、人間にとって都合の良いことばかりとも限らない。ノースウッズは湿地や水辺が多い地方なので、気温が高くなってくると、蚊やブラックフライ(ブユ)などの吸血動物たちが大発生するのだ。
その数たるや信じがたいほどで、もしもテントや蚊帳を持たずに道に迷って一夜を明かすことになったら…人間を襲うと誤解されているオオカミよりもよっぽど危険である。
耳障りな音を立てながら飛び回るブラックフライ。執拗に噛み付いてきて、気がつくと額や耳たぶが赤く腫れ上がる。でもイライラするからといって、彼らがこの地上からいなくなってほしいとまでは思わない。実はハチたちに混じって、ブルーベリーの受粉を手助けしているらしいのだ。
ブラックフライを根絶してしまったら、ブルーベリーの収穫量が減る…かどうかまでは知らないが、嫌いなものは消えてしまえというのは人間の奢りに違いない。
日本でオオカミが絶滅した後、シカやサルが増えて山や里が荒れた場所もあると聞く。自然の摂理の中では、それぞれの生命に与えられた役割がきっとあるのだろう。
【写真家たちの新しい物語】
大竹英洋写真展「ノースウッズ-生命を与える大地-」
■会期 6月26日(金)~7月9日(木)
※6月28日(日)は休館、7月2日(木)は14:00まで
■開館時間 10時~19時(最終日は14時まで/入館は終了10分前)
■会場 富士フイルムフォトサロン 大阪 スペース1
■入場料 無料
■詳細は 富士フイルムフォトサロン公式ホームページ
https://www.fujifilm.co.jp/photosalon/osaka/20062601.html をご覧ください。
写真家 大竹英洋 (神戸市在住)
北米の湖水地方「ノースウッズ」をフィールドに、人と自然とのつながりを撮影。主な写真絵本に『ノースウッズの森で』(福音館書店)。『そして、ぼくは旅に出た。』(あすなろ書房)で梅棹忠夫山と探検文学賞受賞。2020年2月、これまでの撮影20年の集大成となる写真集『ノースウッズ 生命を与える大地』(クレヴィス)を刊行した。