9月号
[海船港(ウミ フネ ミナト)]観覧車リニューアルで一新した神戸ハーバーランド
文・写真 上川庄二郎
【新装なったMOSAICの観覧車】
この観覧車は、阪神大震災の復興を願って地権者である三菱倉庫が造ったもので、夜のイルミネーションは、モザイクのシンボル的存在だった。ところが最近は、NHKの夜6・45の番組で流されるテロップでは、老化が進みネオン電球が切れて歯抜けになった観覧車の醜態を晒していた。
長引く消費不況の煽りでハーバーランドも客足が遠のき、如何にしてその人を呼び戻すかが当面の大きな課題。そんな折、ハーバーランド運営協議会の皆さんが危機感を持って、「緊急まちづくり行動計画検討委員会」を設置された。この委員会にビター(辛口の)アドバイザーとして私にも声をかけてくださり、幾つかの提案をさせていただいた(それは後述することに…)。
そしてまず取り掛かられた大きなプロジェクトが、この観覧車の改修である。12万個の発光ダイオード(LED)を使って、動画やニューステロップを流すなど、以前の4倍・60種類と多彩な表現ができるようになり、明るさも一段と鮮やかになった。しかも、LEDだから電力消費量は80%減と環境にもきわめて優しい。
これが去る8月5日、恒例のみなと神戸海上花火大会の前日に点灯するというタイミングの良さはなかなかのもの。
私もハーバーランドの日(8月8日)に早速駆けつけ、夜の神戸港の美しい風景の復活に心を弾ませた。こんな素晴らしい神戸港の夜景に市民の皆さんはもっともっと関心を持ってほしいし、神戸市民以外の方々にもPRしてほしい。ハーバーランド運営協議会の皆さんもこれを契機にもっと幅広く頑張っていただきたいもの。
【ハーバーランドに期待するもの】
以前にも指摘したことがあるが、大阪キタの再開発は目を見張るものがある。このままでは、神戸は埋没しかねない。これに立ち向かうには、一に神戸にしかないウオーターフロントを最大限に活用することが肝要であり、その核となるのが、ハーバーランドに他ならない。ところが残念なことに、そのハーバーランドを含め、このウオーターフロント一帯が磨かれざる金剛石といった状態のままである。
ここで、私がビターアドバイザーとして提言したことを踏まえ少し述べてみよう。
そもそも神戸の都心(中心市街地)は、三宮・神戸間の浜側であり、その前面のウオーターフロントは、野球場に例えれば、プレイグランドそのもの。このように考えてみれば、ハーバーランドはまさにネット裏の最前席。ところがそのハーバーランドのコンセプトは、残念なことにマイカー中心の郊外型ショッピングセンターに近く、凡そウォーターフロントの魅力を活かし切っているとは言えそうにない。ここはやはり磯の香りのする賑わいの場にしたいもの。そのためには、思い切って一階部分の駐車場をフィッシャーマンズワーフにするくらいの改造を考えてもらいたいところ。
また、マイカー中心でなく公共交通中心のまちづくりを進め、みなと、元町、旧居留地、三宮との回遊性を高めることだ。LRTの導入も視野に入れ、先ずはループバスのルート変更も含め、現在の一方通行から双方向運行にするなど訪れる人たちが利用しやすい乗り物にすることが先決だ。
さらに欲を言えば、通年神戸港に入港する多くの華麗なクルーズ船や日本丸・海王丸といった神戸でしか見たり体験したりすることのできないただの観光資源をもっとうまく活用し、さまざまなイベントも企画してもらいたいもの。
【行政・商店街・文化団体・市民団体が協働して】
これは、ハーバーランド運営協議会の皆さんだけに注文してもできない相談かもしれないが、行政は当然のこととして、元町、三宮などの商店街の皆さんや文化団体など市民グループとも協働してもっと前向きに取り組む姿勢を示してほしい。
来年は、NHK大河ドラマで平清盛が取り上げられるが、彼が神戸に残してくれた最大の遺産が大輪田の泊であることを考えると、神戸の原点は、ここ港にあることは明明白白。このことを肝に銘じて取り組んでほしいものです。
かみかわ しょうじろう
1935年生まれ。
神戸大学卒。神戸市に入り、消防局長を最後に定年退職。その後、関西学院大学、大阪産業大学非常勤講師を経て、現在、フリーライター。