4月号
縁の下の力持ち 第21回 神戸大学医学部附属病院 リウマチセンター
最新の知識を持って最善の医療を
完治は難しいといわれる関節リウマチ。「リウマチセンター」では、内科、整形外科、リハビリの先生方が専門知識を出し合い、相談しながら患者さんの「寛解(かんかい)」を目指して治療しています。
―リウマチセンターとは。
自己免疫疾患である膠原病リウマチの患者さんの中で最も多いのが関節リウマチです。進行すると関節が変形し日常生活にも支障を来すようになります。そこで内科的治療と並行して、整形外科の診察、治療とリハビリができるように院内でブースを並べているのが「リウマチセンター」です。内科医は膠原病リウマチ内科外来と両方で診察しています。
―自己免疫疾患とは。
免疫が正常に機能すると、体内に入った細菌やウイルスを排除しようとします。ところが、細菌やウイルスが入ってきていないのに免疫が方向を間違って、自分自身の臓器に向かって攻撃してしまう。理由はよく分かっていないのですが、この自己免疫を原因としている病気です。
―関節リウマチとはどんな病気ですか。
主に手指、その他全身あちこちの関節が自己免疫の攻撃を受け炎症が起きます。全国に約70万人の患者さんがおられ、女性の罹患率が高く、高齢化社会に伴い60代から70代の患者さんが占める割合が増えてきています。同じような症状で、加齢により起きる変形性関節症も非常に多いのですが炎症は伴いません。
―なぜ、どんなときに発症するのでしょうか。診断は。
多くの遺伝的な要素と喫煙やストレスなどの環境的な要素が組み合わさって発症すると考えられていますが、理由を特定することは難しいのが現状です。血液検査で認められるリウマチに特異的な反応と炎症反応、関節所見などを参考にしながら診断します。X線検査でもわかるようになると病気が進行している状態です。
―症状は。
関節の痛みと腫れが最も大きな症状で、左右対称に出やすいのが特徴です。朝起きた時に手がこわばり、動かしにくいのも特徴です。それらに起因して、疲れやすく、うつ状態に陥ったり、労働意欲をなくしたりして、家庭生活や社会生活にまで影響を及ぼします。
―内科的治療とは。
主に薬を使う治療です。痛み止めやステロイドで症状を緩和する対症療法しかなかったのですが、メトトレキサートという抗リウマチ薬を使えるようになり、さらに2000年ごろから生物学的製剤という新しい薬が開発されてから飛躍的に進歩しました。皮下注射や点滴による治療で、日本でも2003年に承認されました。以来、患者さんの症状が大きく改善され、多くの患者さんが、痛みや腫れがほとんどなくなり元の生活が送れるようになる、寛解といわれる状態に至っています。現在はおそらく5~6割の患者さんが寛解に至っていると考えられます。
残念ながら病気自体が完治するのは患者さん全体の1割に満たず、早く診断を受け、治療を始めることでQOL低下を最小限に留めることが大切です。
―リウマチセンターでの整形外科とリハビリの先生方との連携は。
私たち内科医は全ての関節疾患についての専門ではありません。そこでリウマチ以外の理由で関節が痛い患者さんの診断や、変形してしまった関節の手術の時期などを整形外科の先生に相談します。逆に整形外科の先生からは、他の臓器に疾患を持つ患者さんの治療法などの相談を受けます。リハビリの先生はリハビリの他に、例えば足の指が変形して歩きにくい患者さんの靴のインソールの調整など、患者さんが楽に生活できるようにサポートしています。
―森信先生はなぜ、膠原病リウマチを専門に?
内科医を希望して心臓や肺などいくつかの専門を回ったのですが、膠原病は体全体に関わってきます。内科医としてはやりがいのある専門分野だと思い選択しました。
―ストレスを感じるとき、やりがいを感じるときは。
ストレスですか?感じることはないですね。私が膠原病を専門にした当初は患者さんの痛みを軽減してあげることしかできませんでした。今は元気に元の生活を送っておられる様子を見るのがやりがいを感じるとき。薬の開発は進歩しましたが、患者さんの状態に合わせてどう治療していくかが課題。まだまだやることがいっぱいあります。