2月号
神戸のカクシボタン 第七十四回 夜の街に浮かぶ小舟
写真/文 岡 力
東門街に佇む一軒のBar。扉を開けると趣のある店内で寡黙にカクテルを作る一人の女性がいる。「当店では地産地消にこだわったお酒を提供しています」そう語るのはBar Le Bateauのオーナー小野玲香さん。詩に興味があったと言う学生時代、大阪芸術大学文芸学科卒業後は古書店を経て大手外食チェーンに就職した。店舗運営に携わりながらプライベートで足繁く通っていた三宮のBar。そこでマスターの人柄と作るお酒に感動しバーテンダーへの道を志した。
技術もさることながらプロとしての精神性を学び独立。居抜き店舗に手を加えながら念願だった自分の城を築いた。ちなみに店名は、フランス語で「小舟」を意味しトレードマークにもなっている。
以前からあったという年季の入った巨大な樽を背におすすめのフルーツカクテルを注文した。取り出した大粒で黄緑色した兵庫県産の蒲萄「サンヴェルデ」と淡路島産「マイヤーレモン」。それらを見事な手捌きで調合していく。自家製のシェリーシロップにもこだわる。丹波篠山の稲わらをシェリー酒に漬けた後に炒る。そうすることで香りは残しつつアルコール成分を飛ばすことができる。あとは杏のドライフルーツと一緒に漬けこむことで唯一無二の隠し味が完成する。
「海と山が近く雰囲気の良い神戸には魅力的なBarがたくさんあります。横の繋がりも大切にしながらイベントも開催しています。お店ではスコットランドにあるベン・ネヴィス蒸留所のウイスキーを豊富に取り揃えております。お気軽にお越しください。」今日もカウンター越しでお客の注文を聞き手際よく舵を切る。
■Bar Le Bateau
神戸市中央区中山手通1-16-12
東門ヴィレッジ2F
【電】078-385-0836
http://www.lebateau.net/
■岡力(おか りき)コラムニスト・放送作家
ふるさとが神戸市垂水区。関西の大衆文化をテーマとした執筆・テレビ、ラジオ番組を企画。連載・レギュラー「のぞき見雑記帳」(大阪日日新聞)「Oh!二度漬けラジオ」(YES-fm)