7月号
地域医療の核として
西神戸医療センター
院長 片山和明さん
平成6年、地域での高度医療、救急医療、結核医療を担う目的で開院した「西神戸医療センター」は現在、がん治療の拠点病院でもある。開院以来、医療に携わり、昨年、院長に就任した片山和明さんにお話をお伺いした。
―この18年で社会や医療は大きく変化してきたと思いますが。
片山 少子高齢化などに伴い、医療の方針や内容も変わってきました。
例えば、院外処方が徹底されてきたこと。また、平成18年から手厚い看護を実施するために7対1の看護基準が設けられ、より良質の医療を効率的に提供しようとしています。平成11年の横浜で起こった患者取り違え事件以来、医療に対する社会の見方が厳しくなり、患者さんにきちんと説明をし、同意を得るインフォームド・コンセントや情報公開が進んできました。当院でも、何か起これば直ちに院内で情報を共有する体制を取っています。神戸市の病院群でも、医療ミスなどが起きた場合は公表基準に即して公表すると決めています。また、手術をするにしても患者さんに侵襲を加える訳ですから、インフォームド・コンセントでご本人の理解を十分に得てから進めるようになってきました。
急性期病院としての役割
―昨年「兵庫県指定がん診療連携拠点病院」になりましたが、がん患者が増えているということでしょうか。
片山 高齢化が進むにつれ、がんの患者さんは増えていますが、種類によって違いはあります。肺がん、大腸がん、乳がん、前立腺がんなどは増加傾向にあり、生活習慣の変化がかなり大きく影響していると思います。逆に、原因がピロリ菌によるケースが多いと解明され、治療法も確立されてきた胃がんなどは減少傾向にあります。子宮頸がんについてもワクチンが開発されましたので今後、減っていくだろうと期待しています。
―急性期病院の役割とは。
片山 急性期医療とは、不安定な病状の時期を治療により安定した状態にする医療と捉えています。患者さんの症状がひどく、放置すれば命にかかわったり、治療が難しくなったり、また後遺症を残す場合もあります。代表的なのは救急医療です。当院では若いドクターを中心に取り組んでいます。当院の救急は各診療科のスタッフ医と研修医・専攻医がチームを組んで診察にあたっています。がんの場合は初期の段階で手術をして取り除いたり、放射線を当てたりという治療です。疾患そのものの治療が終われば退院していただき、在宅または、それぞれに適した医療機関での治療へと移行します。
他の医療機関や地域との関わり
―地域の医療機関との連携が必要ですね。
片山 そうですね。紹介を受けて当院を受診して、急性期の治療が終われば地域の病院に戻っていただきますので、地域の医療機関との連携は欠かせません。
―広域での連携もありますか。
片山 病院、診療所、介護施設など各施設、市民病院群など、色々な機関との連携がありますが、当院では地域医療室というチームを通してスムーズに進めています。
―中央市民病院との関係は深いのですか。
片山 昨年の東日本大震災でも協力して医療支援チームを組み派遣しています。患者さんの診療についても、中央市民病院は、三次救急として救急救命センターがありますし、当院で標榜していない心臓外科、形成外科などの患者さんは、紹介することで連携を取っています。
また、中央市民病院をはじめ神戸市の市民病院群5病院の幹部が定期的に集まり話し合いの場を持ち、人事交流、医療材料の共同購入などで連携を推進しています。
―地域との連携もしていますか。
片山 病院全体としても、また診療科ごとでも公開講座を実施しています。子どもさんの精神疾患、糖尿病、妊婦に対する講座などがあります。逆に、外来での患者さんの案内、障害を持つ患者さんの介助などを、病院のボランティさんがお手伝い下さっています。
診療科内、診療科や職種を越えたチーム医療
―チーム医療にはどのように取り組まれていますか。
片山 まずは、同じ診療科でのチーム医療です。以前は多くの診療科で主治医制を取っていましたが、現在では看護師も含め、一人の患者さんを全体で心温かな医療を提供しようという体制をとっています。次に、職種を横断したチーム医療です。当院では医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、検査技師などで組む7つのチームがあります。主なものは、栄養サポートチーム、緩和ケアチーム、感染防止対策チームです。診療科間でのチームワークも重要ですが、他職種間でも非常に活発な情報交換が行われスムーズに進んでいることは当院自慢の一つです。
―看護部にも力を入れているそうですね。
片山 最も力を入れているのは教育です。1から5までのステップを設けています。最初は基本的な看護を習得し、次第に後輩を指導するリーダー的な役割を習得し、最終的にはマネジメントを含め全体を見て看護できる主任や看護師長までステップアップしていきます。
職員の幸せが患者さんの幸せにつながる
―先生がご専門の産婦人科の特徴とは。
片山 一次医療から高度医療まで全て扱っています。分娩からがん治療までです。ただし、当院の小児科にNICU(新生児特定集中治療室)がありませんので、リスクが高い赤ちゃんの分娩については受け入れることができません。妊娠30週で、赤ちゃんの予想体重1500グラム以上の場合のみで、それ以外については子ども病院、中央市民病院、大学病院などに受け入れをお願いしています。治療に関しては、できるだけ患者さんの侵襲を軽減するために内視鏡を使う腹腔胸手術を取り入れています。これは技術の進歩に伴うもので、産婦人科だけでなく、当院の多くの診療科でこのような傾向になっています。
―これからの西神戸医療センターについて。
片山 職員が幸福感や達成感を得られる病院でありたいと思っています。職員が不満を抱えていれば患者さんに対しても安心で満足な対応はできません。
全国的に看護師確保が厳しい状況で続いており一人一人の看護師の負担が重くなっていますので、当院では、まずは看護師の労働環境の改善に取り組んでいます。できるだけ職員の意見を取り入れようと、昨年から提案制度を設けました。またインセンティブ制度を設け、ある程度の利益を職員の自己研さんの援助やアメニティの改善に当てています。
―それが、受診する患者にとっての快適につながるのですね。市民として、今後更に期待しています。
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西神戸医療センター 事務局総務課
http://www.nmc‐kobe.or.jp/
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片山 和明(かたやま かずあき)
西神戸医療センター 院長
1972年神戸大学医学部卒業。1994年、西神戸医療センター産婦人科医長に赴任。産婦人科部長、副院長、院長代行を経て、2011年より院長に就任。地域医療、救急医療の更なる充実や職員にとって働きやすい職場づくりを目指す。