2019年
3月号
3月号
兵庫県のANDO建築探訪 ③ 淡路夢舞台 兵庫県淡路市 2000年完成
兵庫県の誇る“都市遺産”の一つに、明石海峡大橋があります。日本の架橋技術の結晶した、世界最長の吊り橋です。この橋を渡った先に、国と県でつくった広大な緑の公園があります。辺り一帯、元は大阪湾埋め立てのための土砂採掘跡地です。岩盤むき出しの無残な状態のまま、当初はゴルフ場がつくられる予定でした。それを「自然を取り戻して、“国生みの島”らしい未来に向けた文化拠点をつくろう」と、国を巻き込むビッグ・プロジェクトにまで引き上げた、立役者は当時の兵庫県知事、故貝原俊民さんでした。
《淡路夢舞台》は、この“公園都市”の中核施設です。会議場、ホテル、温室など、多岐にわたる機能を統合するテーマは“庭”です。建物をつなぐ余白のスペース、そこに仕込まれた水と緑の仕掛け越しに望む、淡路の風景こそが《夢舞台》の主役です。
環境再生が旨でしたから、建物より先にまず、荒れた土地に苗木を植えることからプロジェクトはスタートしました。しかし、その二年後、阪神淡路大震災がおきました。誰もが中止を覚悟する中、貝原さんはこれを“復興プロジェクト”と位置づけ、断固たる決意で継続の道を選択されました。
敷地内に活断層が走っていたため、計画変更もありました。その際、百の花壇からなる庭園を新たに設計に加えました。震災で亡くなられた人々のための、鎮魂のためのモニュメントでした。
植えた木が、施設が、期待通りに根付いていくか、その“成長”を見守っていこうと、プロジェクト関係者で《夢舞台》に集う同窓会を、完成翌年から始めました。今春で19回目、建築も緑も、より深く、豊かに繁ってきています。
by 閑野欣次
建築家
安藤 忠雄