2019年
3月号
3月号
名門・廣野にふさわしい 渡辺節設計のクラブハウス
大阪に設計事務所を構えていた渡辺節設計、大林組施工によって昭和7年、開場と同時にクラブハウスが完成した。幾分古典味を帯びたスパニッシュ様式で、上品かつ明るいイメージの建物だった。ロッカーをグランドフロア、バーを最も見晴らしの良いセカンドフロアに配置し、10ホールほどが松林を通して見渡せるベランダからの眺めは素晴らしいものだった。しかし昭和32年8月2日に起きた火災により、併設されていた14室のチャンバーハウスを除き、惜しくも全てが消失してしまった。責任を重く感じた乾豊彦理事長は火災後3日間、毎日焼け跡に立って会員に謝罪したという。「廣野ゴルフ倶楽部理事長に就任してからゴルフについてはいろいろ忘れられない出来事があったが、その一つがクラブハウス全焼だ」と述懐している。
悔やんでいても仕方がない。即座に再建へと動き出した。旧ハウスの設計者・渡辺氏に依頼。乾氏の熱意にほだされ、決して現場に出向いたことがなかった渡辺氏が廣野に何度か顔を見せた。乾氏と激論を交わしていたというのは、工事関係者の語り草だったという。翌年5月、竹中工務店の施工により現在のクラブハウスが完成。6月の26回目の開場記念日に新クラブハウスのお披露目を兼ねた祝賀会が賑やかに開催された。
ハウス内はロビー、レストラン、バーなど全て落ち着いた英国風のインテリアデザインが採用され、床、柱、梁、天井に至るまで贅沢に木材が使用され重厚感を醸し出している。外観は周辺の景色に映えて美しく、特に9番、18番ホールからの眺めは一幅の絵画を観るように素晴らしい。
「廣野ゴルフ倶楽部にふさわしいクラブハウスを造らなくてはならない」。信念を持って再建されたクラブハウスはプレーヤーの憩いの場、会員の親睦の場として親しまれている。