3月号
福を招く恒例イベント 兆楽新春寄席を開催
湯けむりに一番太鼓の音が響く。去る1月27日、有馬温泉の名門旅館、兆楽で兆楽新春寄席が開催された。この落語会は今年で34回目を迎え、初春の風物詩として親しまれている。今回も月亭八方師匠が招かれ、開場を笑いの渦に巻き込んだ。
腹の底から笑う前に、まずは兆楽自慢のお料理で腹ごしらえ。稲荷真薯のお腕や酒粕仕立てのお鍋で身も心もぽかぽかに。
そしていよいよ開演。幕が上がると八方師匠がご挨拶代わりのトーク。これまでの兆楽寄席の思い出とこれからの意気込みを語り、開場を和ませた。
続いてアップテンポの曲が流れ、登場したのは六代 桂文枝門下のマルチコメディーパフォーマーTASUKUさん。ボックスに閉じ込めた美女と入れ替わる壮大なマジックあり、開場のお子さんを舞台上に招いて皿回しをさせるほんわかな演出ありと多彩なパフォーマンスで大いに盛り上げた。
お次は八方師匠の子息にして弟子でもある月亭八光さん。大師匠にあたる月亭可朝さんのエピソードを交えたマクラは、月亭のホープらしい軽快さ。眼医者が治療のために患者の目玉を取り出したもののそれを犬に奪われるというナンセンスなストーリーの「犬の目」の熱演で大きな拍手を誘った。
そしてトリに再び八方師匠が座布団に座り、お正月に孫とカルタに興じた話のマクラから、百人一首77番「瀬をはやみ岩にせかるる滝川の」の歌にちなんだ不朽の名作「崇徳院」へきれいな流れで。若旦那が一目惚れした娘を、歌を手がかりに探す熊五郎の奮闘を描いた演目だが、タイガースネタや芸能ネタをちょいちょい盛り込んで古典落語に軽やかなアレンジを加え、時に爆笑、時にじんわりと微笑を誘い、抑揚ある笑いの世界を展開した。万雷の拍手の後はサイン会でふれあいのひとときに。
落語で心温まった観衆たちは自家泉源の金泉銀泉で体も温め、吐く息も白い有馬でひとときの安らぎを満喫。その心地よさに「末に逢はむとぞ思ふ」と再訪を決意したに違いない。