3月号
対談/個性を育む私立中学の教育 第6回 親和中学校
日能研関西 代表 小松原 健裕
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親和中学校 女子高等学校 校長 竹内 弘明
副校長 井坂 かおる
女性らしく、たくましく、社会を生き抜く力を付ける
名門私立中学校の多くの塾生を合格させている日能研関西代表の小松原健裕さんと
関西名門校トップとの対談第2弾。第6回目は、親和中学校 女子高等学校 校長の竹内弘明さん
副校長の井坂かおるさんにご登場いただきました。
校祖・友國晴子先生の志
小松原 高台にある親和は海が見渡せて、6年間通うにはとてもいい環境ですね。
竹内 生徒たちは毎日、険しい坂を登らなくてはいけませんが、その分、素晴らしい眺めを手に入れることができます。この先、試練に出会ったとき、坂道と窓から眺める神戸の街並みを思い出し、輝かしい未来が待っていると考えてもらえれば嬉しいですね。
小松原 神戸で最も古い女子校ですが、校祖・友國晴子先生は女子教育に高い志を持っておられたのでしょうね。
竹内 親和女学校が開校したのは1887年ですから明治20年、「女子に教育は不要」といわれた時代です。自立して社会に貢献する女性を育てるという志を持って始めたものの一旦閉校になり、5年後に再興します。苦労をされたのでしょうね。友國先生の「同心同行」つまり、子どもたちに寄り添い育てるという思いは、今でもずっと親和の教師の心の中に生き続け、「和み」「親しむ」という温かい校風につながっています。
小松原 女子教育の先駆け的存在ですね。そこから大きく発展してきたのですね。
竹内 次第に女子教育の必要性がいわれ始め、当初から取り組んできていた本校が時代のニーズに応える形で発展してきたのだと思います。
リーダーは女子が当たり前。行事は支え合って作り上げる
小松原 生徒さんの様子を見ていると元気で活発。学校行事でも、みんな生き生きしていますね。
井坂 行事ごとにリーダーになる生徒が変わります。体育祭なら運動が得意な生徒が中心となり、音楽会なら指揮者や伴奏者がオーディションで決まります。文化祭も教師の安全面での指導の下、模擬店やステージを生徒たちが中心になり計画・実行しています。最後は頑張ってきた生徒たちと応援してきた仲間が一緒にマイム・マイム(ダンス)を踊って、とても盛り上がります。
竹内 達成感は大きいでしょうね。一体感を持って何かを成し遂げることができる、とてもいい雰囲気です。
井坂 130周年を機に改定した制服も生徒たちから要望を聞き、試着して改善点を出してもらいながら完成したものです。意見をはっきりと言ってくれますからね。
小松原 女子校だから思い切って何でも言えるし、行動もできるのかもしれませんね。
竹内 男女共学が社会の縮図といってもまだまだ女性が進出しにくいのが日本の社会です。学校でも活躍する場が必ずしも多いとは言えず、控え目になる傾向があるようです。女子校では自ずと女子がリーダーになり、支える仲間ができます。自立する力を付けるために良い環境だと思います。
世界に目を向け、活躍の場を広げよう
小松原 グローバル教育に力を入れておられますが、やはり友國先生以来の伝統ですか。
井坂 友國先生が教師になりたてのころ、溌剌として自分の意見をはっきりと主張する外国人女性に対して、卑屈なまでに控えめな日本人女性の様子を目にする機会があり、「何とかしなくては」と思うようになったと聞いています。
竹内 明治時代、既に女性が活躍する場として世界を意識していたのですからすごいことです。その精神を今に受け継ぎ、中高6年間を通じてたくさんの国際交流プログラムを実施しています。18年前から実施している高校2年生のイギリスオックスフォード大学での2週間の語学研修、12年前から高校1年生でのオーストラリアメルボルンのマックロバートソン女子高との短期交換留学、Sコースの生徒を中心に中学3年生で春休みにニュージーランドへ3週間のホームステイ研修など、参加した生徒たちはモチベーションが高まり、さらに勉強に力が入るようです。
小松原 大学入試でも英語は読む、聞く、書くに加え、話す力か試されます。話すことが得意な女子ですから、学校内でもモチベーションを高め合えるのでしょうね。
社会を生き抜く力と、女性としての「徳」を養う
小松原 日能研から毎年たくさんの子どもたちが進学する親和ですが、勉強だけでなく実践力を養う教育をされているのが特徴的ですね。
竹内 将来の目標を持った子どもさんはSコース、いろいろなことに挑戦しながら目標を定めようという子どもさんは総合進学コースを選択して入ってきてくれていますね。変化が激しく、先行き不透明な社会では学力だけでは難しく、たくましく生き抜く力が求められます。そこで中学1年生から高校2年生まで週1時間、探究の授業を取り入れています。自分たちで課題を見つけて研究し、議論してまとめ、そして発表しそこでは質問にも答える。調べ、考え、協働する実践力を付けます。
小松原 女性らしさを生かすキャリア教育にも力を入れておられるのですか。
井坂 大学生の先輩から学問のこと、多方面で活躍する先輩からは仕事のことなど講演会でお話ししていただき、さらに女性として大切な結婚や子育て、家庭生活のこともアドバイスをいただいています。
小松原 社会で活躍したくても女性には家庭や子育てとの両立という問題もありますから、経験があり、お母さんより年齢が近い先輩の話を聞けるのはとてもいいことですね。
井坂 本当にたくさんの先輩が活躍していますので、お話を聞ける機会を増やしていきたいと思っています。女性らしさということでは卒業生の先生に来ていただき、中学1年生から全員が年に数回、茶道の時間を持ちます。お話を聞いたりお作法を教えてもらったり、新鮮でとてもいい経験になっているようです。
多様な選抜方法と学習方法で、個性に応え得意を生かす
小松原 入試では特徴や得意な分野を評価して幅広く受け入れていただき、個性的で自分の進む道を探したいという子どもにとって良い環境が整った学校ですね。また勉強のやり方も多様化していますが、いろいろな方法を取り入れて、子ども一人一人の個性に応えていただいていると思います。
竹内 まだまだ英語教育を強化しなくてはいけませんし、現在はSコースのみの探究学習を総合進学コースにも広げ全校で取り組む予定です。電子黒板はすでに全教室に導入していますが、一人一台のタブレットも全学年で導入し多様な使い方を取り入れます。社会の動向を見極めながら対応していこうと考えていますので、今後ともよろしくお願いいたします。
小松原 期待しております。こちらこそよろしくお願いいたします。
竹内 弘明(たけうち ひろあき)
親和中学校 女子高等学校 校長
公立中学校教諭、県立高等学校教諭を経て1996年から県教育委員会に勤務。高校教育課、教職員課、県立須磨友ヶ丘高校の校長職から再び県教育委員会勤務。高校教育課長を経て、教育次長として県の教育行政を指導。県立神戸高校校長を勤めた後、2018年より現職
井坂 かおる(いさか かおる)
副校長
親和中学校、親和女子高等学校卒業。神戸大学教育学部中学数学科卒業後、神戸市立中学校勤務を経て母校で教壇に立つ。中高6年間継続した担任業務を5回繰り返した後、教務部長、教頭職を経て2018年より現職
小松原 健裕(こまつばら たけひろ)
株式会社 日能研関西 代表
甲陽学院高校、慶応義塾大学と中高大を私学で学ぶ。同大学法学部卒業後、日本IBMに入社。主に金融機関システムの提案に携わる。事業承継のため日能研関西に入社。授業担当科目は算数。京都本部長、副代表を経て、代表に就任。日能研関西本部業務全般に加え、日能研グループとの連携、私学教育の振興にも携わる