4月号
安藤忠雄と直島
瀬戸内の島々を舞台に、国内外の現代アーティストたちの作品が集まる「瀬戸内芸術祭2013」。この、海とアートの祭典でも重要な舞台となる直島に、安藤忠雄のミュージアムが開館した。
有るものを生かして、無いものを創る
ベネッセホールディングス会長・福武總一郎の発案による、直島の再生プロジェクトがスタートしたのは、1988年。福武は建築家・安藤忠雄を呼び寄せ、島の自然の中に美術館と現代アートを点在させた「ベネッセアートサイト直島」を展開する。
島内に数々の美術館を建築してきた安藤忠雄の、直島プロジェクトの最新作である「ANODO MUSEUM」が3月9日オープンした。ミュージアムは直島本村地区、築100年の古民家に造られた。歴史が刻み込まれた古い民家の門をくぐると、安藤の世界が広がる。自然光のみで照らされた内部には、光の教会(大阪)、地中美術館(直島)など安藤がこれまで手掛けてきた建築の資料や、直島プロジェクトの概要等を展示。
「小さな空間に大きなメッセージを込めている」と安藤は話す。地中に埋め込まれたコンクリートのシリンダーにはまるで、瞑想するための空間のように冷やかな空気が満ちている。ミュージアム周辺は既存の古い建物にアートを融合させた「家プロジェクト」が展開する地区。そこには「あるものを生かして、ないものを創る」という一貫したテーマが込められている。
福武が直島プロジェクトに際し提唱したのは「文明に対するレジスタンス」である。過度な都市化に対し、地方から世界に発信する大きなメッセージ。
プロジェクトスタートから25年、年間40万人が訪れる「文化の島」となった直島。過疎等によって活力を失っていた島は活気づき、また島民たちはアートにふれ、自分たちでも民宿やレストランなどを営み、人々を迎え入れるようになった。
「かつてシーボルトが桃源郷と絶賛した、美しい瀬戸内の海。地方都市に新しい文化があると、世界に発信することができる」と、福武とともにプロジェクトを行ってきた安藤は話す。
直島へは、岡山県・宇野港からフェリーで約20分。島内には「ベネッセアートサイト直島」「家プロジェクト」等をめぐる循環バスが運行し、アートを歩いてめぐる人や、自転車でめぐる人も。ゆったりした島の時間が流れている。
ANODO MUSEUM
■開館時間 10:00~16:30 ※入館は16:00まで
■休館日 月曜日 (祝日の場合は開館、翌日休館)
■鑑賞料 500円 15歳以下無料
■お問い合わせ TEL.087-892-3754
香川県香川郡直島736-2
公益財団法人福武財団
地中美術館
クロード・モネ、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレルの作品を、地中に造られた安藤忠雄設計の建築の中で鑑賞する。
■開館時間 10:00~18:00(10月~2月は17:00まで)※入館は各1時間前まで
■休館日 月曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)
■鑑賞料 大人2,000円 15歳以下無料
ベネッセハウス ミュージアム
美術館とホテルが一体となった施設。「ミュージアム」、「オーバル」「パーク」「ビーチ」の4棟からなる。美術館部分にあたる「ミュージアム」には収蔵作品に加え、アーティストたちが自ら場所を選び、制作した作品等がある。
■開館時間 8:00~21:00 ※入館は1時間前まで
■休館日 年中無休
■鑑賞料 大人1,000円 15歳以下無料
(「ミュージアム」棟以外は入場無料)
李禹煥美術館
自然石と鉄板による作品を主とする李禹煥。周囲の自然や建築と響き合う李の作品と対話する。
■開館時間 10:00~18:00(10月~2月は17:00まで)
※入館は各30分前まで
■休館日 月曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)
■鑑賞料 大人1,000円 15歳以下無料