7月号
神戸松蔭の香りマリンフローラル
神戸松蔭女子学院大学
学長 郡司 隆男さん
阪急六甲の山手文教地区にキャンパスを置く神戸松蔭女子学院大学は、学びに最適な環境にある。昨年120周年を迎えた伝統的な学びと新しい学びについて郡司学長にお話しいただいた。
―とてもきれいなキャンパスですね。
郡司 建物は30年経って一部に古さを感じさせるようになってきていますが、こまめに補修をしながら、きちんと清掃も心がけ、この状態を維持しています。
―学ぶのには最適な環境ですね。
郡司 回りに遊ぶところが何もなく、学内にも娯楽的なスペースが何もないですから、一旦学校へ来たら学ぶことしかできないという環境です。学内に留まる学生たちは、空いた時間には図書館やコンピュータールームなどを利用して勉強しているようです。
―最寄の阪急六甲駅周辺もいい環境ですね。
郡司 落ち着いた住宅街ですが、一方で飲食店も少なく、遊びに行くならJR六甲道や三宮あたりへ出ていくようです。私は個人的に、静かで厳かな雰囲気の六甲八幡神社の環境は好きです。
―神戸松蔭の香りとは。
郡司 マリンフローラルの香りの小粒を小分けにして、主にオープンキャンパスで配布しています。在学生用には入試・広報課に置いています。
―マリンフローラルに決定した経緯は。
郡司 本校人間科学部生活学科都市生活専攻の坂井信之先生が3種類の香りを提案し、一昨年のオープンキャンパスで高校生にアンケートを取りました。その結果と、その他色々な条件を加えて検討してマリンフローラルに決定しました。
―どんなイメージの香りですか。
郡司 さわやかな花を感じさせるイメージですが、おとなしい香りですから、初めはちょっと物足りない感じがあるかもしれませんね。電車の中などでプンプン匂う香りは違和感がありますから、カバンの中などに入れておくとほのかに香ります。ブックカバーにこの香りを付けて配布したことがありますが、今ならスマホカバーがいいかも知れませんね、今後はどのように使うかをさらに工夫していこうと思っています。
―さて、学部に目を向けると新しい領域の人間科学部ですが、その中でもユニークなのは。
郡司 生活学科都市生活専攻でしょうか。例えば心理学的な研究は、臨床心理士などの専門職に結び付く本学の伝統的な心理学科とは違って、消費者の心理など幾分実践的なものです。マーケティングに関しても、若い女性目線でのユニークなものです。
―「鹿児島カレッジ」もその一つですか。
郡司 その前段階に熊本県人吉市でのゼミ活動があり、JR西日本でも紹介されました。規模が拡大されたのが「鹿児島カレッジ」です。昨年9月の6大学合同合宿で、本校は指宿を担当しました。それを基に9月から10月にかけてプランを練り、発表会でJR西日本や鹿児島の地元の人たちに意見を聞き、今年2月ごろから日本旅行、近畿日本ツーリスト、JTB、各旅行社さんに商品化していただきました。神戸松蔭のプランは、女子大生らしく良い意味ではじけているユニークなプランだったのでしょうか、各社のパンフレットでかなり大きく取り上げていただいています。
―神戸市灘区で30年が経ちますが、地域貢献はどのように。
郡司 人間科学部子ども発達学科の実習用保育室に「まつぼっくり」という施設を設け、神戸市と提携して保育士さんに来ていただき、親子で参加ですが、子供さんを無料でお預かりしています。年に何回かはイベントも開催しています。また、長年続けているチャペルでのコンサートは、地域の皆さんにもとても喜んでいただいています。休憩時間には学生のボランティアがコーヒーを販売し、その収益を近所の児童施設に寄付しています。2012年、ライプツィヒ・バッハ・メダルを日本人で初受賞した鈴木雅明さんがチャペルコンサートでバッハカンタータ全53曲演奏の偉業を成し遂げ、CDがリリースされました。
―灘区との連携は。
郡司 本校では毎年11月最終木曜日に学内のもみの木にクリスマスツリーを電飾します。一昨年からは学外にも小さなツリーを飾っています。地域の皆さんにも見ていただこうというものですが、残念ながら学外のツリーはかなり小さい(笑)。またちょっと活気がない摩耶山の観光の役に立てないかと、本校のテニスコートにハート型のイルミネーションを飾りました。摩耶山頂から探すと見つかるというのが狙いですが、なかなか好評で、今年夏にも何かできないかと考えています。今までに何度か、チャペルでの結婚式を公募していますが、その際には、厳かな式が終わってからは学生たちが楽しいイベントを企画しています。また、昨年は本学の聖歌隊が東灘区の小磯記念美術館ロビーでコンサートを開催し、予想以上にたくさんのお客さんに来ていただきました。
―松蔭は文科系のイメージですが、体育系も盛んなんですか。
郡司 薙刀は全国優勝、ソフトテニス部は関西で71回の優勝、卓球は実業団チームに混じって健闘しています。
―松蔭気質とは。
郡司 120年前、イギリス人が和裁と英語教育という対極にある2つのものをもって開学しました。実用的なものと教養的なものを身に付けようという当初からの気質を保っているのはどちらかといえば文学部でしょうか。専攻内容が直接仕事に結びつくというわけではないですが、そのため、就職先も多彩です。一方、人間科学部の中でも特に子ども発達学科と生活学科食物栄養専攻は資格を取り、卒業後は仕事に就くことが目的です。この人間科学部の学生数比率が高くなっているのが現状です。
―これからの神戸松蔭について。
郡司 神戸という地域性を前面に出し、地域貢献を灘区・神戸市から更に、兵庫県へと広げていきたいと思っています。また、鹿児島カレッジなどでご縁のできた九州との関係も更に深めていきたいですね。また神戸松蔭は女子大学です。女子が社会的に弱い存在として始まった女子教育ですが、日本ではまだまだ男女平等とはいえません。社会に出て冷たい風にさらされても負けない女子を育てなくてはいけません。その点で女子大にはメリットがあります。共学の場合、何故か男子がリーダーになり女子は補佐役になりがちです。女子が自分で自分を縛ってしまう傾向にありますが、全員女子ならば能力や素質がある人がリーダーになります。男女関係なく人間としての力関係を経験して、自分が人間としてどういう資質を持っているのかを学ぶことができます。共学化する女子大も多いようですが、神戸松蔭女子学院大学はこの姿勢を貫いていきたいと思います。
―社会で役立つ女性の育成にこれからも期待していす。本日はありがとうございました。
郡司 隆男(ぐんじ たかお)
神戸松蔭女子学院大学 学長
1951年東京生まれ。1974年、東京大学理学部物理学科卒業。大阪大学言語文化部言語工学部門助教授、同大学大学院言語文化研究科助教授を経て、同大学言語文化部言語工学部門教授。1999年、神戸松蔭女子学院大学文学部教授。2000年から2008年まで、同大学大学院文学研究科科長。2008年4月、学長に就任。現在に至る。著書多数。