5月号
神戸のカクシボタン 第二十九回「まねきのえきそば」〜老若男女に愛される姫路市民のソウルフード〜
写真/文 岡 力
春先になると祖父の出生地である姫路へ日帰り旅行をするのがルーティンとなっている。
せっかくなので毎回、様々な「旅の目的」を掲げるようにしている。昨年は、「おばけ寿司」と呼ばれるご当地チェーン店を訪問。駅と店舗をタクシーで往復するだけであったが有意義な旅となった。今年は、更なる効率化を目指し「駅だけで楽しむ」をモットーに西へと向かった。
明治21年創業の「まねき食品株式会社」は、日本で初めて幕の内駅弁を販売した播州を代表する老舗企業である。終戦後、政府から放出された小麦粉でうどんの製造にのりだす。しかし、腐敗が激しく保存に困難を極める。結果、こんにゃく粉とそば粉をまぜた代替品を考案する事にした。試行錯誤の末、黄色いそばに和風出汁という異例のスタイルが誕生。それを「えきそば」と命名した。昭和29年10月19日、姫路駅で瀬戸物容器に入れ50円で立ち売り販売を開始する。これまでにない食べ物は、瞬く間に乗客の間で話題となりホーム上での売店に発展、一日あたり6000杯売れる日もあった。
店舗販売部 中杉 理さんにお話を伺った。「えきそばを提供するお店は、全部で6店舗あります。初めての方は、姫路駅在来線上り、下り店で天ぷらえきそばの注文をおススメします。また長期保存を可能にした商品は、手土産にも最適です」。発祥の地で背筋を伸ばし心温まる姫路の味を堪能。空いた器に「また来るよ」と別れを告げる。すると店員から今春にJR元町駅西口で新店舗がオープンしたとの朗報を耳にする。わざわざ神戸までお越しいただき、おまねき頂けるなんて有り難き幸せである。
公式ホームページ http://www.maneki-co.com/
岡力(おか りき)コラムニスト
ふるさとが神戸市垂水区。著書「アホと呼ばれた’80S」「噂の内股シェフ」「関西トラウマ図鑑」連載「大阪ロマン紀行」(大阪日日新聞)出演「おちゃのこSaiSai」(J:COMチャンネル)「Oh!二度漬けラジオ」(YES-fm)