2016年
5月号
5月号
ぶらり私のKOBE散歩|須磨浦ビーチボーイズ
金指 光司
<株式会社ポトマック 代表取締役>
デザインを専攻する高等学校に通っているときに描いた一枚の絵がある。コバルトブルーの海沿いを走る、サーフィンボードをのせた黄色いワーゲン。「神戸の好きな場所の観光ポスター」との課題だった。ポスター左下には“WELCOME!SEA SIDE ROAD SUMA”とのロゴタイプ。当時サーフィンブームもあり、18歳の少年の妄想は須磨から塩屋の海沿いの道を、ハワイか、カルフォルニアに重ね合わせていたようだ。きっと頭の中では、“BEACH BOYS”の“SURFER GIRL”が流れてたんだろう。描いたポスターの車は、しっかりと右車線を走っていた。
今、ハンドルを握るうららかな昼下がり。やっぱり、須磨駅から塩屋駅へ向かう国道2号線は、僕の大好きな至福の光景である。淡路島を望む左手に瀬戸内の海原が煌めきはじめると、右手に広がる須磨浦公園。「一の谷の合戦」ゆかりの地であり、レトロなケーブルカー(世界一乗り心地が悪いと自慢している)や、芭蕉や蕪村の句碑が点在する、海と山に恵まれた広大な公園だ。
そこは、僕の“青春の光と影”であり、秘密のパワースポットなのである。
金指 光司(かなさしこうじ)
1963年、神戸市生まれ。1986年、神戸・元町のトアウエストに「トゥーストゥース」を創業。人々の欲求と好奇心をくすぐる感覚で、時代の半歩先を見据え、一つのブランドに固執せず、多彩なカフェ・レストランブランドを誕生させた。神戸・大阪・首都圏に73店舗を構える