竹中大工道具館 叡智の彼方へ｜第九回｜自然の造形を活かす

建築, 文化・芸術・音楽

大徳寺玉林院蓑庵（さあん）構造模型

神社や寺院を扱う堂宮（どうみや）大工は巨大な木材で重厚な建物をつくりあげますが、反対に細い木材を用いて茶室などの軽やかな建物をつくる大工を数寄屋（すきや）大工といいます。
竹中大工道具館の地下２階には数寄屋大工の仕事を紹介すべく京都大徳寺の名茶室・蓑庵（さあん）を写した実物大スケルトン模型を展示しています。
この模型で注目してほしい箇所が二つあります。一つは細い柱でも風雪や地震に耐えられるよう壁の中に貫（ぬき）と呼ばれる構造材を縦横に通していること。場所によっては板のパネルを差し込んでおり、ガッチリと固められています。この木組みはそのままでは無骨ですが、仕上げに土壁を塗ってしまうと隠れてしまいます。
もう一つは自然のままの形を残した杉丸太を用いていること。丸太を用いることで山奥の草庵にいるような雰囲気が醸し出せます。しかしそのかわりに丸太の接合部で複雑な曲線が噛み合わさることになります。数寄屋大工は口引（くちひき）とよぶコンパス状の道具を使って曲線を写し取り、丸鑿（のみ）で削り取って隙間なく合わせてしまいます。他にも一本一本太さや節間の長さが異なる竹を用いたり、葭（よし）や真菰（まこも）など水辺に生える草を天井に張ったりと自然の雰囲気が味わえるよう様々な天然素材を用いています。
この茶室模型は靴を脱いで座敷に上がることができますので、ぜひ間近で自然素材を使いこなす数寄屋大工の知恵と工夫をご覧ください。
（主任学芸員・坂本忠規）

丸太が三方向から組み合う
捻組（ねじぐみ）

杉丸太の接合部を丸鑿で刻む

常設展「和の伝統美」コーナーの茶室構造模型

竹中大工道具館
TAKENAKA CARPENTRY TOOLS MUSEUM

神戸市中央区熊内町7-5-1
Tel.078-242-0216
休館日：月曜日（祝日の場合は翌日）
開館時間：9：30～16：30（入館は16:00まで）
https://www.dougukan.jp/