1月号
これまでの、これからのワクチン接種|~神戸大学医学部附属病院の取り組み~
神戸大学医学部附属病院 副病院長 黒田 良祐
2020年に世界に広がった新型コロナウイルス感染症のパンデミックは未だ終息がみえず、厳しい制限のあるコロナ禍の日々が続いています。私は神戸大学医学部附属病院で新型コロナワクチン接種を担当しておりますので、当院のこれまでの、そしてこれからの取り組みについて書かせていただきます。
2021年2月から医療従事者向けワクチン先行接種が始まり、当院にも3月中旬にワクチンが届きました。新型コロナウイルス感染症患者・疑い患者に頻繁に接する業務を行う病院職員及び実習のある医療系学生を対象に3月から接種を始めました。副反応の情報がまだまだ不足している中で始まるワクチン接種に医療従事者でさえ不安を感じていました。医師・看護師・薬剤師・事務職員などの多職種でワーキング・グループを結成し、ワクチン接種の安全の流れを作っていきました。この院内での取り組みは兵庫県や神戸市の大規模接種会場へ当院からスタッフを派遣するだけでなく、会場設営に関わる上でたいへん有用なものになりました。
神戸市や兵庫県の数か所の大規模接種会場へは医療従事者を派遣しました。特にノエビアスタジアム神戸の大規模接種会場は神戸市、神戸大学、神戸大学医学部附属病院、慈恵大外科、SBCメディカル、ヴィッセル神戸、楽天、楽天メディカルの8者により国内初の産学官連携の迅速かつ効率的なワクチン接種オペレーション体制を持つ大規模ワクチン接種モデルとなりました。5月31日からの接種開始に向けて連日8者のスタッフが現地に集まり協議を重ね会場設営に取り組みました。会場にはイニエスタ選手や山口蛍選手をはじめヴィッセル神戸の選手の等身大ボードが設置され、被接種者の不安を和らげていました。一日最大7000人への接種が可能となり、市民のワクチン接種率向上に大いに貢献できました。6月に入ると接種の加速化を図るため、企業や大学等において職域単位でワクチン接種を行う職域接種が始まり、神戸大学、兵庫県立大学での職域接種にも参加させていただきました。
過去最大の第5波が終わり、日本は一時的に落ち着きをみせています。しかしヨーロッパでは新たに大きな波が到来している国もあり、ワクチン2回接種後の感染、いわゆるブレークスルー感染が発生しています。このブレークスルー感染を抑えるためにも追加接種(3回目接種)が日本でも今まさに計画されています。高齢者、重症化リスクが高い方、その関係者・介助者、医療従事者などが優先となりますが、もちろん一般の方への接種も引き続き始まります。接種ワクチンは1回目・2回目に接種したワクチンの種類にかかわらず、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンを使用します。つまりメッセンジャーRNAワクチンであれば異なるワクチンでも可ということになります。年明けには大規模接種会場でも行われる予定です。コロナ禍の終息はまだ見えず、これからもさらなるパンデミックの波が襲ってくるかもしれません。変異株が新たに出現するかもしれません。それでも科学研究や治験の成果とともに新しいより有効な治療薬、予防薬、ワクチンが次々にでき、人々の安全・安心が確保されこの未曾有の災害が終結することを願うばかりです。
- 【特集】2022年 新型コロナウイルスをどう考えるか ~神戸大学医学部附属病院の取り組み~
- ● 眞庭 謙昌(病院長)
- ● 溝渕 知司(副病院長)
- ● 黒田 良祐(副病院長)
- ● 宮良 高維(感染制御部長)
- ● 大路 剛(感染症内科 准教授)
- ● 森 康子(臨床ウイルス学分野 教授)
- (順不同・敬称略)