2021年
3月号
3月号
神戸のカクシボタン 第八十七回 独自の視点で斬り込む! 日本妖怪研究所・亀井澄夫さん
写真/文 岡 力
「子供の頃、垂水にあった駸々堂という書店でゲゲゲの鬼太郎を買ってもらいました。親がこんな物でもいつかは役立つ気がすると言ってねえ…」。びっしり詰まった本棚を前にそう笑うのは関西を拠点に活動する日本妖怪研究所・所長の亀井澄夫さんだ。
神戸市垂水区塩屋町出身。高校卒業後、コトブキの工場で夜な夜なシュークリームを製造しながら人生を模索。学生時代に始めた音楽活動に没頭し海員会館で「満月コンサート」と称したリサイタルを開催した。並行して独学で編集を学び19歳の時に地元情報を掲載した「塩屋マガジン」、そして後にシリーズ化する「妖怪新聞」を創刊した。自身で神戸、大阪の書店へ直談判しながら書籍を販売。活動が実を結び憧れ続けた水木しげる氏も媒体へ寄稿した。「水木先生と初めてお会いしたのは調布駅前にあった喫茶店。お店へ入ると既に奥の椅子であぐらをかいていました。目をキラキラ輝かせながら話す姿がとても印象的でした」と振り返る。その後、唯一無二の書籍を手掛ける出版社「レベル」を創業。六甲の会館でスタートした「妖怪講座」は話題となり多くのメディアで紹介された。40歳を機に会社の一角で始めた同研究所には日本全国の自治体から相談が寄せられている。現在、地域に潜む妖怪を介して様々な観光事業の掘り起こしに貢献している。「兵庫にも面白い妖怪や伝記が残っています。ここ最近は疫病と妖怪をテーマに研究をしています。是非、動画チャンネルをご覧ください」と抱負を語る。機会があれば妖怪を求めて旅に出かけたい。
■岡力(おか りき)コラムニスト・放送作家
ふるさとが神戸市垂水区。関西の大衆文化をテーマとした執筆・テレビ、ラジオ番組を企画。連載「合間日和」(神戸市消防局監修・雪)「のぞき見雑記帳」(大阪日日新聞)「あての履歴書」(大阪スポーツ)