9月号
神戸市医師会公開講座 くらしと健康 50
5人に1人が患う女性の更年期障害
医師と相談し計画的な治療で症状改善を
林 省治 先生
神戸市医師会理事
はやし女性クリニック院長
─女性の更年期障害の原因は何ですか。
林 一般的に閉経の前後、40代後半から60歳くらいにかけて、卵巣から女性ホルモンが急激に分泌されなくなることが原因です。卵巣が働かなくなり女性ホルモンが低下してくるのですが、それを体が懸命に働かせようとして、脳下垂体から卵巣を刺激するホルモンが分泌されます。しかし、卵巣はそれに反応しないことから異状をきたし、さまざまな症状が出てくるのです。
もちろん、女性ホルモンの低下による症状もあります。月経は段階的になくなっていきますので、それにともなって徐徐に症状が出てくる方が多いようです。5人に1人くらいの方が更年期症候群と診断されています。
─具体的にどのような症状がありますか。
林 自律神経失調症によるのぼせ、発汗といった「ホットフラッシュ」を急に感じることがあります。ほかにもめまい、一時的な血圧の上昇、頭痛、腰痛、疲れやだるさ、冷や汗、イライラや不眠など、さまざまな症状があります。また、女性ホルモンは筋肉と関係しているので、筋肉痛などもおきやすくなります。
女性ホルモンが低下すると、髪が抜ける、肌が衰えるなどの症状もみられます。このようないろいろなことがいっぺんに来ますので、どこか体がおかしいのではないかと思うことが多いようです。一方で同年代の女性に多い甲状腺機能低下症(橋本病)の症状にも似ていますので、以上のような症状がある場合は医師の診察を受けてください。
─治療はどのようにおこないますか。
林 女性ホルモンの中でもエストロゲン(卵胞ホルモン)の低下によるものなのですが、月経があった頃よりもかなり少ない量を補うことで症状を改善させます。ホルモンは投薬で補いますが、飲み薬だけでなく、塗り薬や貼り薬もあります。皮膚からホルモンを吸収させた方が肝臓の負担が少なく、個人差はありますが少量でも効果があります。エストロゲンを内服するとわずかに乳がんができやすくなるという説や関係がないという説もありますが、いずれにしても定期的な乳がん検診を受けることが大切です。
一方で、エストロゲンだけを長期間投与し続けていると、高い確率ではありませんが子宮の奥の方にがんができやすくなるといわれていますので、バランスをみながら黄体ホルモンを時々投与すると安全です。
─予防は可能ですか。
林 原因となる閉経は年齢に基づき必ずやって来ますので、ある意味予防は難しいでしょう。ただし、症状が強くなるかどうかはほかの要因と関係しています。症状を抑えるためにもストレスや疲れには注意した方が良いでしょう。生活を工夫すれば必ずしもホルモン剤を使用しなければいけないということではありません。
また、ある年齢になれば自然に治ります。先が見えているので、患者さんの希望を聞きながら計画的に治療できる病気でもあります。
─疑いがあるときはどの診療科に行けばよいでしょうか。
林 治療は基本的に婦人科ですが、症状を感じた場合はまず内科などかかりつけ医にご相談ください。年齢や状態などを診てもらえば更年期障害かどうかすぐにわかりますので、かかりつけ医から婦人科へ紹介してもらえると思います。
林 省治 先生
神戸市医師会理事
はやし女性クリニック院長