3月号
縁の下の力持ち 第9回 神戸大学医学部附属病院 リハビリテーション部
神戸大学医学部附属病院 リハビリテーション部 部長
酒井 良忠さん
急性期治療を後ろで支え、患者さんの社会復帰を目指す
患者さんと日々、身近に接し社会復帰を後押しするリハビリテーション部。
次のステップへと送り出す時、「ありがとう」の言葉を直接聞ける〝縁の下の力持ち〟です。
―酒井先生はリハビリテーションがご専門なのですか。
酒井 整形外科専門医としてリハビリが重要と感じ、リハビリテーション医学を専門に研究しました。神戸大学では講座名をリハビリテーション機能回復学としています。
―脳梗塞や手術、けがの後のリハビリが主ですか。
酒井 大学病院では特にがん患者さんに対するリハビリが非常に大事といわれています。がんになっても入院治療だけでなく外来で抗がん剤治療などを受けますから、ちゃんと動けなくてはいけません。がんを一種の慢性疾患として治療しながら生活するというケースも増え、それぞれ普通に日常生活を送ってもらわなくてはいけません。急性期の治療が終わった患者さんを回復期のリハビリ病院へと引き継ぎ、最終的には仕事や日常生活に戻り社会復帰してもらうために支援や介護が必要なのかなどを理学療法士と情報交換しながら、判断して指示も必要です。また、身体機能を上げておくと抗がん剤や手術の合併症が減ることも実証され、がん治療前のリハビリも一般的になってきました。
―がん患者さんには特別なリハビリをするのですか。
酒井 特別ではなく筋トレや有酸素運動が中心ですが、がんによるリスクがいろいろありますから管理は必要です。医師が指示を出し、現場で実際にリハビリをしているのは療法士さんたちです。
―現場におられるのが丸山先生をはじめ療法士の先生方なのですね。
丸山 リハビリテーション部では理学療法士、作業療法士、言語聴覚療法士がそれぞれの療法室で仕事をしています。言語聴覚のリハビリは療法室が主ですが、理学作業療法のリハビリは病室でも可能です。入院病棟から出られない患者さんならこちらから出向きます。ハイリスクな患者さんも多く、例えば心疾患の患者さんは無理できませんから循環器内科病棟で心電図を見ながら、心臓専門の先生方とも相談しながら進めます。ICUへもリハビリ専門の医師が毎日回診して、入室から48時間以内にリハビリ計画を立て、早期回復のために集中治療の先生、看護師、リハビリスタッフなどが連携して開始します。
―ICUにいる時からリハビリが始まるのですか?!
酒井 重症の患者さんにも日常生活に戻ってもらうことを前提に治療していますから、頑張ってもらいますよ(笑)。場合によっては人工呼吸器が付いている段階から身体を起こしたり、ベッドから車いすに移動しリハビリを始めます。もちろんリスクを伴いますから診療科、集中治療の先生方と連携しながらです。
―日頃心掛けておられること、やりがいを感じるときは。
丸山 患者さんと毎日30分から1時間ぐらいお会いするのでたくさんお話しをして信頼関係を築き、なおかつ距離が近いですから清潔感は必要だと思っています。リハビリはまず患者さん自身のやる気が大切。改善したところがあればお伝えし、褒めるよう心掛けています。退院されるとき、次のステップへと送り出すとき、患者さんから直接聞く、「ありがとう」の言葉が一番のやりがいです。
―新しいリハビリも研究されているのですか。
酒井 ロボットリハビリやバーチャルでゲームのように楽しいリハビリなど研究されています。大学病院は急性期ですから取り入れるのは難しいですが、県立リハビリテーション中央病院と協力して研究のお手伝いをしています。
―先生方の気分転換法は。
丸山 スキーやダイビング…いろいろ趣味はありましたが、翌日の仕事のことを考えてしまうので、できなくなりました。
酒井 そうですね。今は、患者さんにいかに社会復帰してもらうかで頭がいっぱい(笑)。ですから私たちを信じてリハビリを頑張ってほしいと思いますね。
―心強いです。今後ともよろしくお願いします。