8月号
神戸のカクシボタン 第八回
写真/文 岡 力
「くび地蔵にくびったけ」
朝、目が覚めると首の調子が悪い。「寝違え」と呼ばれる症状でここ数年悩まされている。
自分にあった枕を購入しツタンカーメンのように寝相も意識しているがいっこうに治らず病院で診断を受ける。その際、医師から「首の骨が損傷している」と告げられる。おそらく学生時代に励んだ柔道が原因だ。治療法を聞くと「特にありません。年齢を重ねると必ず後遺症も出ます!!」と救いようのないお言葉を頂く。こうなると神頼み。御利益がある寺院仏閣を検索していると「くび地蔵」なるスポットを発見する。早速、向かった先は、神戸市東灘区。JR住吉駅を下車し近くを流れる川を渡ると左手にかの有名な高級マンションがそびえ立つ。「こんな高感度な場所にいてはるんかいな?」と半信半疑で小道をウロウロしていると曲がり角から突如、化粧をした大きな首だけの地蔵が姿を現した。お地蔵さんと言えば「ほっこり」や「にっこり」といった表情がお決まりだがおもいっきり真顔である。備え付けの看板に目を通す。昔、大名行列や旅人が西国街道を往来していたころ首から上の病気に霊験あらたかだった花松地蔵が当地にあった。そのゆかりで大正6年、地域の人々により建立され「花松くび地蔵」と名付けられたそうな…。
細かい話だが看板には、「くび地蔵」と大きく書かれてあるが説明を見る限り「花松くび地蔵」が正解ではないのか? そんな事はさておき目の前に現れた異質な様に高揚しカメラのシャッターをひたすら切る。そして一目散に自宅へと戻り写真の整理をする。ふと、お参りするのを忘れていた事に気付く。翌日、デジャブともいえる光景を辿り再び地蔵のもとへ。手を合わし賽銭を入れお詫び。「連日の訪問、失礼しました…」
■くび地蔵
神戸市東灘区田中町5丁目4
■岡力(おか りき)コラムニスト
ふるさとが神戸市垂水区。著書「アホと呼ばれた’80S」「噂の内股シェフ」「関西トラウマ図鑑」連載「大阪ロマン紀行」(大阪日日新聞)「ハコの十八番」(Whole Earth Magazine Fm Cocolo)
出演「おちゃのこSaiSai」(J:COMチャンネル)